唾液接触を手がかりに親密な関係を早期に理解する幼児

 幼児の親密な関係の理解に関する研究(Thomas et al., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。幼い子供は大人に頼って生きていますが、特定の子供に対して全ての大人が同等に世話に当たるわけではありません。したがって、子供にとってはかなり幼い時期に、どの関係が他とは違って近しい、つまり親密なものかを特定できることが重要になってきます。一部の研究者は、幼い子供や赤ちゃんは特徴的な行動の相互作用を通して関係性が伝わる仕組みに対して敏感に違いない、と主張しています。たとえば、故意に合意の上で唾液に触れる(キスをする、食べ物を分け合う、よだれを拭う、など)といった行動で、これは親密な関係下での行動であることが多い、と指摘されています。

 この研究はそうした仮説を検証すべく、童話のような漫画と人形と対話する人を使って一連の実験を行ない、子供は唾液が触れ合う関係の方が他の関係より近しいと予期している、と明らかにしました。幼い子供(5~7歳)は唾液の接触が核家族内で起きることを、また、赤ちゃんと幼児は唾液が触れ合う者同士が困っている時に助け合うことを予期します。経済的・地理的・「人種」的に多様なより多くの幼児を対象とした実験でも、唾液への接触が関係の親密さを示す手がかりだと判明し、それは、親密な関係にある者同士の唾液接触が文化的に広がっていることを示しています。


参考文献:
Thomas AJ. et al.(2022): Early concepts of intimacy: Young humans use saliva sharing to infer close relationships. Science, 375, 6578, 311–315.
https://doi.org/10.1126/science.abh1054

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