学習が進化に与える影響
学習が進化に与える影響に関する研究(Nakashima, and Kobayashi., 2022)が公表されました。日本語の解説記事もあります。自然選択による進化により、多様な形質を持つ生物の集団は環境に適応していきます。従来の進化学では、集団内の形質の多様性は無作為な突然変異で生じ、親世代の経験は反映されない、と考えられてきました。しかし、エピジェネティクス研究の発展などにより、親世代の経験に依存した突然変異が起きる可能性も近年示唆され始めました。つまり、先祖の経験を各個体が学習し、多様性に偏りをもたらす可能性です。しかし、これにより進化がどれだけ加速し得るのかなどを扱う、体系的な理論は存在していません。
この研究は、理論進化学の数理手法を基盤に、学習と進化の関係を考察する数理的な枠組みを構築しました。まず、先祖の形質をまねる先祖学習が、適応度の勾配、つまりどういう方向に形質を変化させると適応度が大きく上昇するかを経験から推定することと等価で、その結果として進化が加速される、と明らかになりました。またこの研究は、フィッシャーの自然選択の基本定理として知られる進化速度測定の定理を拡張し、学習が進化をどの程度加速するのか、定量的に予言する関係式も与えました。これらは、親子で相関を示す実験データの解釈や、先祖学習を検証する新たな実験系の設計に加えて、遺伝的アルゴリズムや機械学習などへの応用など、理学・工学の双方での応用が期待できる数理的基礎になる、と期待されます。
参考文献:
Nakashima S, and Kobayashi TJ.(2022): Acceleration of evolutionary processes by learning and extended Fisher's fundamental theorem. Physical Review Research, 4, 1, 013069.
https://doi.org/10.1103/PhysRevResearch.4.013069
この研究は、理論進化学の数理手法を基盤に、学習と進化の関係を考察する数理的な枠組みを構築しました。まず、先祖の形質をまねる先祖学習が、適応度の勾配、つまりどういう方向に形質を変化させると適応度が大きく上昇するかを経験から推定することと等価で、その結果として進化が加速される、と明らかになりました。またこの研究は、フィッシャーの自然選択の基本定理として知られる進化速度測定の定理を拡張し、学習が進化をどの程度加速するのか、定量的に予言する関係式も与えました。これらは、親子で相関を示す実験データの解釈や、先祖学習を検証する新たな実験系の設計に加えて、遺伝的アルゴリズムや機械学習などへの応用など、理学・工学の双方での応用が期待できる数理的基礎になる、と期待されます。
参考文献:
Nakashima S, and Kobayashi TJ.(2022): Acceleration of evolutionary processes by learning and extended Fisher's fundamental theorem. Physical Review Research, 4, 1, 013069.
https://doi.org/10.1103/PhysRevResearch.4.013069
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