ヨーロッパの葡萄酒用ブドウの起源
ヨーロッパの葡萄酒用ブドウの起源に関する研究(Magris et al., 2021)が公表されました。ブドウの栽培は、地中海東部で4000年近く、ヨーロッパ西部で2000年近く行なわれてきました。しかし、メルロやシャルドネやソーヴィニヨン・ブランやピノ・ノワールなどの品種を含むヨーロッパの葡萄酒用ブドウの起源については論争があります。ヨーロッパの葡萄酒用ブドウは、アジア南西部での栽培化とは無関係に、ヨーロッパ独自の野生ブドウ種の栽培化から始まった、と以前の研究では示唆されています。
この研究は、ヨーロッパ産の葡萄酒用ブドウの起源を調べるため、ヴィニフェラ種ブドウ(Vitis vinifera)のゲノム(204点)を解析しました。その結果、このブドウがアジア南西部(コーカサス南部である可能性が最も高そうです)での1回の栽培化に由来し、その後、ヨーロッパの野生ブドウ集団との複数回の交配を経た、と示されました。また、この研究は、現代の葡萄酒造りに使われるブドウを決めた栽培化と育種選択を示す遺伝的特徴を特定し、野生ブドウ種と現代のワイン造りに使用されている品種には同程度の遺伝的多様性が見られる、と明らかにしました。
さらに、この研究で対象とされた試料に含まれていたヨーロッパ諸国の栽培ブドウ種の中で、遺伝的多様性が最も高いものはイタリアとフランスのブドウ種である、と示唆されました。ヨーロッパのブタに関しては、近東起源の家畜とヨーロッパのイノシシとの交雑により形成された、と指摘されており(関連記事)、植物の栽培化も動物の家畜化も、起源地からの単純な拡散ではなく、拡散先の在来野生種との複雑な混合により形成された、と改めて示されました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
遺伝学:ヨーロッパのワイン用ブドウの起源
ヨーロッパ産のワイン用ブドウは、アジア西部で栽培化された生食用ブドウと地元の野生ブドウの交配に由来する可能性を示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、ヨーロッパのワイン用ブドウの歴史と遺伝的祖先を解明する上での手掛かりになる。
ブドウの栽培は、地中海東部で約4000年近く行われ、西ヨーロッパで2000年近く行われてきた。しかし、メルロ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールなどの品種を含むヨーロッパのワイン用ブドウの起源には論争がある。ヨーロッパのワイン用ブドウは、西アジアでの栽培化とは無関係に、ヨーロッパ独自の野生ブドウ種の栽培化から始まったことが以前の研究によって示唆されている。
今回、Michele Morgante、Gabriele Di Gasperoたちの研究チームは、ヨーロッパ産のワイン用ブドウの起源を調べるため、Vitis vinifera(ヴィニフェラ種ブドウ)のゲノム(204点)の解析を行った。Morganteたちは、このブドウが西アジア(南コーカサスである可能性が最も高い)での1回の栽培化に由来し、その後、ヨーロッパの野生ブドウ集団との複数回の交配を経たという見解を示している。また、Morganteたちは、現代のワイン造りに使われるブドウを決めた栽培化と育種選択を示す遺伝的特徴を特定し、野生ブドウ種と現代のワイン造りに使用されている品種には同程度の遺伝的多様性が見られることを明らかにした。さらに、今回の知見は、研究対象となった試料に含まれていたヨーロッパ諸国の栽培ブドウ種の中で遺伝的多様性が最も高いものがイタリアとフランスのブドウ種であることを示唆している。
参考文献:
Magris G. et al.(2021): The genomes of 204 Vitis vinifera accessions reveal the origin of European wine grapes. Nature Communications, 12, 7240.
https://doi.org/10.1038/s41467-021-27487-y
この研究は、ヨーロッパ産の葡萄酒用ブドウの起源を調べるため、ヴィニフェラ種ブドウ(Vitis vinifera)のゲノム(204点)を解析しました。その結果、このブドウがアジア南西部(コーカサス南部である可能性が最も高そうです)での1回の栽培化に由来し、その後、ヨーロッパの野生ブドウ集団との複数回の交配を経た、と示されました。また、この研究は、現代の葡萄酒造りに使われるブドウを決めた栽培化と育種選択を示す遺伝的特徴を特定し、野生ブドウ種と現代のワイン造りに使用されている品種には同程度の遺伝的多様性が見られる、と明らかにしました。
さらに、この研究で対象とされた試料に含まれていたヨーロッパ諸国の栽培ブドウ種の中で、遺伝的多様性が最も高いものはイタリアとフランスのブドウ種である、と示唆されました。ヨーロッパのブタに関しては、近東起源の家畜とヨーロッパのイノシシとの交雑により形成された、と指摘されており(関連記事)、植物の栽培化も動物の家畜化も、起源地からの単純な拡散ではなく、拡散先の在来野生種との複雑な混合により形成された、と改めて示されました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
遺伝学:ヨーロッパのワイン用ブドウの起源
ヨーロッパ産のワイン用ブドウは、アジア西部で栽培化された生食用ブドウと地元の野生ブドウの交配に由来する可能性を示唆する論文が、Nature Communications に掲載される。今回の知見は、ヨーロッパのワイン用ブドウの歴史と遺伝的祖先を解明する上での手掛かりになる。
ブドウの栽培は、地中海東部で約4000年近く行われ、西ヨーロッパで2000年近く行われてきた。しかし、メルロ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワールなどの品種を含むヨーロッパのワイン用ブドウの起源には論争がある。ヨーロッパのワイン用ブドウは、西アジアでの栽培化とは無関係に、ヨーロッパ独自の野生ブドウ種の栽培化から始まったことが以前の研究によって示唆されている。
今回、Michele Morgante、Gabriele Di Gasperoたちの研究チームは、ヨーロッパ産のワイン用ブドウの起源を調べるため、Vitis vinifera(ヴィニフェラ種ブドウ)のゲノム(204点)の解析を行った。Morganteたちは、このブドウが西アジア(南コーカサスである可能性が最も高い)での1回の栽培化に由来し、その後、ヨーロッパの野生ブドウ集団との複数回の交配を経たという見解を示している。また、Morganteたちは、現代のワイン造りに使われるブドウを決めた栽培化と育種選択を示す遺伝的特徴を特定し、野生ブドウ種と現代のワイン造りに使用されている品種には同程度の遺伝的多様性が見られることを明らかにした。さらに、今回の知見は、研究対象となった試料に含まれていたヨーロッパ諸国の栽培ブドウ種の中で遺伝的多様性が最も高いものがイタリアとフランスのブドウ種であることを示唆している。
参考文献:
Magris G. et al.(2021): The genomes of 204 Vitis vinifera accessions reveal the origin of European wine grapes. Nature Communications, 12, 7240.
https://doi.org/10.1038/s41467-021-27487-y
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