中生代の巨大魚竜

 中生代の巨大魚竜に関する研究(Sander et al., 2021)が公表されました。日本語の解説記事もあります。現在、クジラは地球最大の生物ですが、5500万年というその進化史の約90%の期間をかけて、現在のような巨大海洋生物へと進化しました。最初に海を泳いだ巨大海洋生物はクジラではありませんでした。この研究は、アメリカ合衆国ネバダ州北西部の乾燥した山地で発見された保存状態良好な、約2億4400万年前となる魚竜の化石を報告しています。魚竜は中生代(約2億5000万~6600万年前)の大半に存在し、ペルム紀大絶滅後も海で繁栄した最初の脊椎動物の1種です。

 この魚竜化石は新種(Cymbospondylus youngorum)と分類されました。その頭がい骨は長さ約2メートルで、生存時の推定体長は18メートルを超え、これは一部の最大級の現代のクジラ匹敵する大きさです。この化石の年代は約2億4400万年前で、体長が1メートルにも満たない最古の魚竜種の近縁種とされている種の出現からたった250万年後、多く見積もっても800万年後には進化したことになります。これにより、中生代の海で極端な巨大化という進化が初期に急速に起きた、と示されました。これは、約2億5200万年前のペルム紀大絶滅で多数の一次生産者が絶滅したにも関わらず、三畳紀の海洋食物網はそういった巨大生物を支えられた、と示唆しています。


参考文献:
Sander PM. et al.(2021): Early giant reveals faster evolution of large body size in ichthyosaurs than in cetaceans. Science, 374, 6575, eabf5787.
https://doi.org/10.1126/science.abf5787

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