『卑弥呼』第76話「真の王」
『ビッグコミックオリジナル』2021年12月20日号掲載分の感想です。前回は、暈(クマ)の国の5人のタケル王が、田油津日女(タブラツヒメ)を新たな日見子(ヒミコ)として擁立しよう、と画策しているところで終了しました。今回は、山社(ヤマト)国の千穂(現在の高千穂でしょうか)の産処(ウミドコロ)にて、ヌカデが産婆に学んでいる場面から始まります。産処は出産のための場で、男子禁制です。山社の国の高官が出産の手伝いをすることに、産婆は恐縮します。自分も小屋の中に入りたい、と言うヌカデに産婆は難色を示しますが、自分は民を救うのが使命の祈祷女(イノリメ)なので、産婆の術も心得ておきたい、と説明します。いよいよ女性の出産が近づき、ヌカデは強引に小屋の中に入ります。ヤノハが出産するさいに役立てよう、とヌカデは考えているのでしょう。
暈(クマ)の国の鞠智(ククチ)の里(現在の熊本県菊池市でしょうか)では、鞠智彦(ククチヒコ)が、要請に応じて10日間も里の民の前で舞った田油津日女(タブラツヒメ)を労っていました。田油津日女は配下の男性に、人と人の交わりを避ければ、1年で厲鬼(レイキ)、つまり疫病は消えるだろうと言って、暇乞いをします。鞠智の里を去る田油津日女の一行を、鞠智彦の配下の志能備(シノビ)が監視していました。鞠智彦は志能備の長を呼び、手分けして5人のタケル王に文を届けるよう、命じます。その文には、厲鬼を封じ込める術が書かれていました。すると志能備の長は、姶羅(アイラ、現在の鹿児島県姶良市でしょうか)と囎唹(ソオ、現在の鹿児島県曽於市でしょうか)と串岐(クシギ、現在の鹿児島県いちき串木野市でしょうか)と出水(イズミ、現在の鹿児島県出水市でしょうか)と浮土(ウド、現在の熊本県宇土市でしょうか)の5人のタケル王全員が姿を消したので、謀叛の兆しではないか、と鞠智彦に進言します。すると鞠智彦は、5人のタケル王にはそもそも謀叛の手立てがないから案ずるな、と楽観的な表情で言います。
千穂では、天照大神が籠った窟(イワヤ)で祈るヤノハを、チカラオ(ナツハ)が警護していました。ヤノハはモモソから、妊娠中の子に殺される運命だ、と告げられたことを回想していました。ヤノハは悟りきったように、自分はモモソを含めて鬼畜のように人を殺したので、自分が誰かに殺されることなど覚悟の上だから、子を産んだらチカラオとともに山社から消える、とモモソに告げます。天照大神が籠った窟で祈るヤノハは、もはや日見子(ヒミコ)を続けるのは限界で、自分の子に殺されるとは自分らしい、と自嘲します。
鞠智の里を去った田油津日女の一行は、予定通り玉杵名邑(タマキナノムラ、現在の熊本県玉名市でしょうか)に赴き、民の前で厲鬼退散のために舞います。田油津日女は配下の男性に、人が多すぎるので距離を空け、相互に近づかず、この舞いを最後に人と人の交流を避けて1年間外出しないよう、民に命じます。いずれこの地のタケル王より田油津日女と同じ触れが回るだろうが、全員それに従うように、と言う男性に、自分たちは田油津日女様のお言葉にのみ従う、と民は口々に言い、田油津日女こそ真の王だと崇めます。すると田油津日女の配下の男性は、今度の厲鬼は言の葉から感染するので声を出さないよう、民に命じます。玉杵名邑を去った田油津日女の一行は、暈の国から山社へと向かいます。そこへ5人のタケル王が現れ、田油津日女と面会したい、と申し出ます。籠から出てきた田油津日女に、5人のタケル王が暈の国の日見子になるよう、要請するところで今回は終了です。
今回もヤノハの出番は少なく、田油津日女をめぐる動向が中心に描かれました。しかし、ヤノハの出番は少なかったものの、モモソから妊娠中の子に殺される運命だと聞かされたヤノハの反応が描かれ、ヤノハの思惑を推測する重要な手がかりになっていると思います。ヤノハから暈を除く筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)諸国へと送られた書簡を入手したことからも、田油津日女がヤノハの意向で動いていることは確実だと思います。その思惑については前回いくつか推測しましたが、今回のヤノハの発言からは、田油津日女を日見子とする意向のように思えます。ただそうならば、ヤノハは妊娠中であることを田油津日女には伝えていないでしょうから、天照大神の神意だと言って、田油津日女に日見子となるよう、命じたのでしょうか。ヤノハは本作の主人公ですから、ヤノハが今後も日見子(卑弥呼)であり続けると考えられ、どのように話が展開するのか、予想しにくいところがあり、楽しみです。また、田油津日女の正体はまだ明かされておらず、この点も気になります。田油津日女はヤノハに信頼されているようですから、すでに登場している人物ならばある程度は限定されますが、その中に日見子になることを了承しそうな者はいないようにも思います。ヤノハの真意も含めて、今後の展開が注目されます。暈では、5人のタケル王が田油津日女に日見子となるよう要請し、鞠智彦の配下の志能備はこうした事態を警戒していましたが、鞠智彦は楽観的です。これは、鞠智彦が配下にも容易に真意を明かさないからとも、疫病で暈が苦境にあるとはいえ、それまで順調に暈の権力を掌握してきたので油断している、とも考えられます。鞠智彦の動向も気になるところですが、その他には、トメ将軍とミマアキの帰還も描かれるでしょうし、今後の展開もひじょうに楽しみです。
暈(クマ)の国の鞠智(ククチ)の里(現在の熊本県菊池市でしょうか)では、鞠智彦(ククチヒコ)が、要請に応じて10日間も里の民の前で舞った田油津日女(タブラツヒメ)を労っていました。田油津日女は配下の男性に、人と人の交わりを避ければ、1年で厲鬼(レイキ)、つまり疫病は消えるだろうと言って、暇乞いをします。鞠智の里を去る田油津日女の一行を、鞠智彦の配下の志能備(シノビ)が監視していました。鞠智彦は志能備の長を呼び、手分けして5人のタケル王に文を届けるよう、命じます。その文には、厲鬼を封じ込める術が書かれていました。すると志能備の長は、姶羅(アイラ、現在の鹿児島県姶良市でしょうか)と囎唹(ソオ、現在の鹿児島県曽於市でしょうか)と串岐(クシギ、現在の鹿児島県いちき串木野市でしょうか)と出水(イズミ、現在の鹿児島県出水市でしょうか)と浮土(ウド、現在の熊本県宇土市でしょうか)の5人のタケル王全員が姿を消したので、謀叛の兆しではないか、と鞠智彦に進言します。すると鞠智彦は、5人のタケル王にはそもそも謀叛の手立てがないから案ずるな、と楽観的な表情で言います。
千穂では、天照大神が籠った窟(イワヤ)で祈るヤノハを、チカラオ(ナツハ)が警護していました。ヤノハはモモソから、妊娠中の子に殺される運命だ、と告げられたことを回想していました。ヤノハは悟りきったように、自分はモモソを含めて鬼畜のように人を殺したので、自分が誰かに殺されることなど覚悟の上だから、子を産んだらチカラオとともに山社から消える、とモモソに告げます。天照大神が籠った窟で祈るヤノハは、もはや日見子(ヒミコ)を続けるのは限界で、自分の子に殺されるとは自分らしい、と自嘲します。
鞠智の里を去った田油津日女の一行は、予定通り玉杵名邑(タマキナノムラ、現在の熊本県玉名市でしょうか)に赴き、民の前で厲鬼退散のために舞います。田油津日女は配下の男性に、人が多すぎるので距離を空け、相互に近づかず、この舞いを最後に人と人の交流を避けて1年間外出しないよう、民に命じます。いずれこの地のタケル王より田油津日女と同じ触れが回るだろうが、全員それに従うように、と言う男性に、自分たちは田油津日女様のお言葉にのみ従う、と民は口々に言い、田油津日女こそ真の王だと崇めます。すると田油津日女の配下の男性は、今度の厲鬼は言の葉から感染するので声を出さないよう、民に命じます。玉杵名邑を去った田油津日女の一行は、暈の国から山社へと向かいます。そこへ5人のタケル王が現れ、田油津日女と面会したい、と申し出ます。籠から出てきた田油津日女に、5人のタケル王が暈の国の日見子になるよう、要請するところで今回は終了です。
今回もヤノハの出番は少なく、田油津日女をめぐる動向が中心に描かれました。しかし、ヤノハの出番は少なかったものの、モモソから妊娠中の子に殺される運命だと聞かされたヤノハの反応が描かれ、ヤノハの思惑を推測する重要な手がかりになっていると思います。ヤノハから暈を除く筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)諸国へと送られた書簡を入手したことからも、田油津日女がヤノハの意向で動いていることは確実だと思います。その思惑については前回いくつか推測しましたが、今回のヤノハの発言からは、田油津日女を日見子とする意向のように思えます。ただそうならば、ヤノハは妊娠中であることを田油津日女には伝えていないでしょうから、天照大神の神意だと言って、田油津日女に日見子となるよう、命じたのでしょうか。ヤノハは本作の主人公ですから、ヤノハが今後も日見子(卑弥呼)であり続けると考えられ、どのように話が展開するのか、予想しにくいところがあり、楽しみです。また、田油津日女の正体はまだ明かされておらず、この点も気になります。田油津日女はヤノハに信頼されているようですから、すでに登場している人物ならばある程度は限定されますが、その中に日見子になることを了承しそうな者はいないようにも思います。ヤノハの真意も含めて、今後の展開が注目されます。暈では、5人のタケル王が田油津日女に日見子となるよう要請し、鞠智彦の配下の志能備はこうした事態を警戒していましたが、鞠智彦は楽観的です。これは、鞠智彦が配下にも容易に真意を明かさないからとも、疫病で暈が苦境にあるとはいえ、それまで順調に暈の権力を掌握してきたので油断している、とも考えられます。鞠智彦の動向も気になるところですが、その他には、トメ将軍とミマアキの帰還も描かれるでしょうし、今後の展開もひじょうに楽しみです。
この記事へのコメント
久しぶりにアカメが登場しましたね。
しかし、次回の指令は。。。
あの志能備のお頭と遭遇するのは必至。
木管にアカメの安全を保証してほしいといったヤノハからのお願いがないと厳しいかと。
2021/08/21 23:36
8月の時点ではどのような方法で木管を渡すのか見当もつきませんでしたが、木管を託されたのはアカメで木管を届けたのは田油津日女。
志能備の皆さんは当然、田油津日女の正体は分かっていると思いますが、そうなると鞠智彦も知っているかと。現実主義者っぽい鞠智彦なら木管の入手方法や真偽を徹底的に調べさせると思います(→他国の謀略の可能性も疑う)。
しかしながら、とっとと「山社」へ向かいたい田油津日女はまさかの五王の登場で困惑!?
お頭たちが上手く逃してくれる(五王は捕縛)ことを希望します。
『日本書紀』によると、神功皇后が筑紫の山門県の土蜘蛛である田油津媛を殺し、その兄の夏羽は逃亡したとあるので、ヤノハとチカラオの実妹がいて田油津日女とも考えられますが、それはさすがに唐突にすぎるので、アカメが田油津日女なのかな、とも考えているものの、どうもよくわかりません。
今後の展開が楽しみですね?