『カムカムエヴリバディ』安子編からるい編へ
放送開始前から本作の脚本への個人的期待値が高く、安子編の主演にも期待していましたが、主演に関しては期待値以上で、たいへん満足しています。話の方もここまでは楽しめてきましたが、放送開始前から本作最大の山場になりそうだと思っていた、安子編から「るい」編への移行がどう描かれるのか、たいへん気になっていました。放送開始前から、安子が娘の「るい」を日本に残してアメリカ合衆国へと行き、「るい」が母親とカムカム英語を恨むようになる、と明かされていたので、ここをどう描くかで本作の評価が大きく左右されるのではないか、と懸念しつつも楽しみにしていました。この経緯があまりにも突飛だったりご都合主義的だったりすると、本作の評価は大きく下がることになります。まだ1/3が終わったにすぎないので、最終的な評価はできないとしても、安子編の最後が詰め込み気味だったことは否定できないと思います。本来は半年放送予定だったのに、おそらくは短縮になるでしょうから、ある程度は仕方ないのでしょうが、それにしても安子編の最後は情報過多だったかな、とは思います。
安子と「るい」だけではなく、その周辺の人々の思惑と行動と偶然が安子と「るい」の別れにつながったわけですが、「るい」の心理については、納得しやすい構成になっていたのではないか、と思います。雪衣から、自分が母にとって重荷になっており、雉真家に返す、つまり捨てられたかのように言われ、それでも自分の世話をしてくれる母が好きではあるものの、おはぎを一緒に売ることはできないと言われたばかりか、和菓子屋「たちばな」を叔父の算太と再興したら一緒には暮らせないとまで言われて、「るい」には母への不信感が蓄積されていたのでしょう。そこへ、母が「たちばな」に関する要件で算太のいる大阪に行くと言っておきながら、入学式当日にも戻らず、ロバートと会っており求愛されていたわけですから、母が嘘をついていたと誤解したでしょうし、自動車が迫ってきたことでかつて母のせいで額に大きな傷を負ったことも思い出し、一気に母を拒絶する心理状態に陥ったのには納得できます。母が大阪に行くと言ったときに、「るい」が不安げに母に尋ねていたことも、「るい」の母への不信感が示されていたように思います。難点を言えば、小学校に入学する直前の子供が岡山から大阪まで列車に乗って母を探しに行くことですが、まあ、不可能とまでは言えないように思います。それにしても、“I hate mushroom”が“I hate you”の伏線だったのには驚きました。ここで、「るい」は‘hate’という英単語をすでに知っている、とさりげなく示されたわけです。
安子の選択には、納得できない視聴者が多いかもしれません。確かに娘からともに学んできた英語で“I hate you”と言われたのは半端な衝撃ではないでしょうが、それであれほど大切にしていた娘を諦めるのか、との疑問は当然あると思います。ただ、娘を連れて雉真家から逃げて大阪で暮らしたものの、生活は楽ではなく、ついには娘に大きな傷の残る怪我を負わせてしまって雉真家に戻り、娘の額の傷を目立たないよう治療するには雉真家の財力でなければ無理だ、という状況に追い込まれており、勇との結婚を断って雉真家にもいられなくなった上に、その娘から(安子は気づいていませんが)誤解されて“I hate you”と言われて拒絶され、兄の算太にも裏切られたわけですから、もう頼れるのはロバートしかいない、とまで思い詰めても仕方ないかな、とは思います。安子が勇からの求婚を断ったのは、まだ自覚していなかったもののすでにロバートに惹かれていたことともに、妊娠中に勇に無防備に腹を触らせていたように、勇は安子にとって頼りにはなるものの、稔とは違って性愛の対象には全くならなかったからでもあるのでしょう。千吉が「るい」に執着したことで安子を追い込んだ感もありますが、この時点では勇には子供がおらず、孫は「るい」だけですから、仕方のないこところでしょうか。勇にすでに息子がいれば、千吉も安子が「るい」とともに雉真家から出ることを許し、治療費も出して、安子と「るい」が別れることもなかったかもしれません。まだ先は長いので、安子と「るい」との関係がこのままで終わるとは思えず、安子とロバートとの間の息子が語りで、どこかで安子の真意を「るい」に語るのかもしれません。
その安子を追い詰めた一人である兄の算太の行動には、不可解なところがあります。算太はお調子者のろくでなしで、これまで家族に頼りっぱなしでしたが、戦争経験と、祖父母と両親が出征中に全員亡くなったことで精神的に打撃を受け、雪衣にも勝手に想いを寄せてすでに家族扱いしていたのに、雪衣が勇と関係を持ったことで、家族に裏切られたように思いこんで衝撃を受け、失踪したのかな、と当初は考えました。しかし、雪衣が妊娠しているとすると、作中の時間経過は不明ですが、勇との間の子ではさすがに悪阻は早すぎるように思うので、算太が先に雪衣と関係を持っていたのかな、とも思います。そう考えると、算太が雪衣に求婚したのは、当初お調子者の算太の勝手な思い込みだと考えていましたが、算太にとっては無謀な選択というわけではなかったのでしょう。雪衣と関係を持って求婚したのに、その雪衣が勇になびいたとなると、算太が自暴自棄になって失踪したのも納得しやすくなります。
安子と「るい」だけではなく、その周辺の人々の思惑と行動と偶然が安子と「るい」の別れにつながったわけですが、「るい」の心理については、納得しやすい構成になっていたのではないか、と思います。雪衣から、自分が母にとって重荷になっており、雉真家に返す、つまり捨てられたかのように言われ、それでも自分の世話をしてくれる母が好きではあるものの、おはぎを一緒に売ることはできないと言われたばかりか、和菓子屋「たちばな」を叔父の算太と再興したら一緒には暮らせないとまで言われて、「るい」には母への不信感が蓄積されていたのでしょう。そこへ、母が「たちばな」に関する要件で算太のいる大阪に行くと言っておきながら、入学式当日にも戻らず、ロバートと会っており求愛されていたわけですから、母が嘘をついていたと誤解したでしょうし、自動車が迫ってきたことでかつて母のせいで額に大きな傷を負ったことも思い出し、一気に母を拒絶する心理状態に陥ったのには納得できます。母が大阪に行くと言ったときに、「るい」が不安げに母に尋ねていたことも、「るい」の母への不信感が示されていたように思います。難点を言えば、小学校に入学する直前の子供が岡山から大阪まで列車に乗って母を探しに行くことですが、まあ、不可能とまでは言えないように思います。それにしても、“I hate mushroom”が“I hate you”の伏線だったのには驚きました。ここで、「るい」は‘hate’という英単語をすでに知っている、とさりげなく示されたわけです。
安子の選択には、納得できない視聴者が多いかもしれません。確かに娘からともに学んできた英語で“I hate you”と言われたのは半端な衝撃ではないでしょうが、それであれほど大切にしていた娘を諦めるのか、との疑問は当然あると思います。ただ、娘を連れて雉真家から逃げて大阪で暮らしたものの、生活は楽ではなく、ついには娘に大きな傷の残る怪我を負わせてしまって雉真家に戻り、娘の額の傷を目立たないよう治療するには雉真家の財力でなければ無理だ、という状況に追い込まれており、勇との結婚を断って雉真家にもいられなくなった上に、その娘から(安子は気づいていませんが)誤解されて“I hate you”と言われて拒絶され、兄の算太にも裏切られたわけですから、もう頼れるのはロバートしかいない、とまで思い詰めても仕方ないかな、とは思います。安子が勇からの求婚を断ったのは、まだ自覚していなかったもののすでにロバートに惹かれていたことともに、妊娠中に勇に無防備に腹を触らせていたように、勇は安子にとって頼りにはなるものの、稔とは違って性愛の対象には全くならなかったからでもあるのでしょう。千吉が「るい」に執着したことで安子を追い込んだ感もありますが、この時点では勇には子供がおらず、孫は「るい」だけですから、仕方のないこところでしょうか。勇にすでに息子がいれば、千吉も安子が「るい」とともに雉真家から出ることを許し、治療費も出して、安子と「るい」が別れることもなかったかもしれません。まだ先は長いので、安子と「るい」との関係がこのままで終わるとは思えず、安子とロバートとの間の息子が語りで、どこかで安子の真意を「るい」に語るのかもしれません。
その安子を追い詰めた一人である兄の算太の行動には、不可解なところがあります。算太はお調子者のろくでなしで、これまで家族に頼りっぱなしでしたが、戦争経験と、祖父母と両親が出征中に全員亡くなったことで精神的に打撃を受け、雪衣にも勝手に想いを寄せてすでに家族扱いしていたのに、雪衣が勇と関係を持ったことで、家族に裏切られたように思いこんで衝撃を受け、失踪したのかな、と当初は考えました。しかし、雪衣が妊娠しているとすると、作中の時間経過は不明ですが、勇との間の子ではさすがに悪阻は早すぎるように思うので、算太が先に雪衣と関係を持っていたのかな、とも思います。そう考えると、算太が雪衣に求婚したのは、当初お調子者の算太の勝手な思い込みだと考えていましたが、算太にとっては無謀な選択というわけではなかったのでしょう。雪衣と関係を持って求婚したのに、その雪衣が勇になびいたとなると、算太が自暴自棄になって失踪したのも納得しやすくなります。
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