ヘモグロビンの進化

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、ヘモグロビンの進化に関する研究(Song et al., 2020)が報道されました。赤血球は哺乳類に特有ではありません。この色は、脊椎動物だけではなく環形動物(最も有名なメンバーがミミズであるワームファミリー)、軟体動物(とくに池のスネイル)、甲殻類(ミジンコ)の循環系にも見られる、酸素の輸送に特化した複雑なタンパク質であるヘモグロビンに由来します。ヘモグロビンがこのような多様な種に出現するためには、進化の過程で何度か「発明」されたに違いない、と考えられていました。しかし、この研究では、「独立して」生まれたと考えられているこれらのヘモグロビンはすべて、実際には単一の祖先遺伝子に由来する、と示されました。

 この研究は、赤い血を持つ小さな海洋ワーム(Platynereis dumerilii)を調べました。この海洋ワームは、その遺伝的特性がほとんどの動物の海洋の祖先であるUrbilateria(左右相称動物の最終共通祖先)に近いため、ゆっくりと進化した動物とみなされています。これらのワームについて赤血球を持つ他の種と比較することが、ヘモグロビンの起源を遡ることに役立ちました。この研究は、ヘモグロビンが属する幅広いファミリー(酸素や一酸化窒素などのガスを「貯蔵」する、ほとんど全ての生物に存在するタンパク質であるグロビン)に焦点を当てました。

 しかし、ほとんどのグロビンは、ヘモグロビンのように血液中を循環しないため、通常は細胞内で作用します。この研究は、赤血球を持つすべての種において、「サイトグロビン」と呼ばれるグロビンを作るのは同じ遺伝子であり、独立して進化してヘモグロビンをコードする遺伝子になった、と示しています。この新しい循環分子は、祖先での酸素輸送をより効率的にし、より大きく、より活発にしました。この研究は今後の目標として、規模を変え、左右相称動物の血管系のさまざまな特殊な細胞が、いつどのように出現したのか、調べることを挙げています。


参考文献:
Song S. et al.(2020): Globins in the marine annelid Platynereis dumerilii shed new light on hemoglobin evolution in bilaterian. BMC Ecology and Evolution, 20, 165.
https://doi.org/10.1186/s12862-020-01714-4

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