カンブリア紀前期に出現した苔虫動物(追記有)
カンブリア紀前期における苔虫動物の出現を報告する研究(Zhang et al., 2021)が公表されました。外肛動物としても知られる苔虫動物は、水生で大部分が固着性の濾過摂食する触手冠動物で、モジュール式の群体(クローン)が有機質または石灰質の外骨格を構築します。苔虫動物は海藻に似た(起立性の)群体あるいは被覆性の群体を形成し、見過ごされることが多いものの、現在も広く一般的に存在しています。
苔虫動物のひじょうに多様な6つの主要な目が前期オルドビス紀の岩石に存在することは、触手冠動物の中で最も大きく最も多様なこの門の起源がカンブリア紀にあることを強く示唆しています。しかし、カンブリア紀にはほぼ全ての主要な動物群が出現していたものの、その唯一の注目すべき例外が苔虫動物門と考えられてきました。苔虫動物カンブリア紀の苔虫動物として説得力のある化石は欠如しており、この分類群の真の起源およびその最初期の種の形質の組み合わせの解明が妨げられてきました。
この研究は、オーストラリアと中国南部で出土した、カンブリア紀前期の、起立性で二層性の二次的にリン酸塩化したミリメートルサイズの化石種(Protomelission gatehousei)が、ステム群苔虫動物の候補であることを示します。この化石に見られる、単一形の個虫カプセル、モジュール式の構造、有機質の組成、単純な線形の出芽成長形状は、有機質の裸喉綱(裸口綱)と生体鉱物化した狭喉綱(狭口綱)の特徴的な形質の混合となっており、系統発生解析ではこの化石種がステム群苔虫動物と特定されました。
これにより、苔虫動物門の起源はカンブリア紀ステージ3の他の全ての有骨格動物門と同時期となり、その最初の出現時期は約3500万年さかのぼることになりました。この結果はまた、この化石記録と、苔虫動物門がカンブリア紀前期に出現し、続くオルドビス紀に炭酸塩骨格を獲得して放散したとする、分子時計による推定結果と整合的です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
進化学:苔虫動物門がカンブリア紀前期に出現したことを示す化石証拠
進化学:転がる苔虫は化石を生ぜず?
カンブリア紀には、ほぼ全ての主要な動物群が出現していた。その唯一の注目すべき例外は、苔虫動物門である。この微小な生き物は海藻に似た(起立性の)群体あるいは被覆性の群体を形成し、見過ごされることが多いものの、現在も広く一般的に存在している。しかし、その化石記録は前期オルドビス紀以降でしか見つかっていない。苔虫動物門がこの年代すでに現代の分類群に割り当て可能な形で存在したことは、その歴史がカンブリア紀まで大きくさかのぼることを示唆しているが、これまでにカンブリア紀の苔虫動物とされた化石はいずれも激しい異論があった。今回Z Zhangたちは、新たに発見された、カンブリア紀前期の生物の非常に優れた化石標本(一部はすでに類縁関係不明の群体生物として記載されている)を調べ、この生物が原始的な苔虫動物であることを明らかにしている。
参考文献:
Zhang Z. et al.(2021): Fossil evidence unveils an early Cambrian origin for Bryozoa. Nature, 599, 7884, 251–255.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-04033-w
追記(2023年3月17日)
この研究を否定する研究が報告されたので、当ブログで取り上げました(関連記事)。
苔虫動物のひじょうに多様な6つの主要な目が前期オルドビス紀の岩石に存在することは、触手冠動物の中で最も大きく最も多様なこの門の起源がカンブリア紀にあることを強く示唆しています。しかし、カンブリア紀にはほぼ全ての主要な動物群が出現していたものの、その唯一の注目すべき例外が苔虫動物門と考えられてきました。苔虫動物カンブリア紀の苔虫動物として説得力のある化石は欠如しており、この分類群の真の起源およびその最初期の種の形質の組み合わせの解明が妨げられてきました。
この研究は、オーストラリアと中国南部で出土した、カンブリア紀前期の、起立性で二層性の二次的にリン酸塩化したミリメートルサイズの化石種(Protomelission gatehousei)が、ステム群苔虫動物の候補であることを示します。この化石に見られる、単一形の個虫カプセル、モジュール式の構造、有機質の組成、単純な線形の出芽成長形状は、有機質の裸喉綱(裸口綱)と生体鉱物化した狭喉綱(狭口綱)の特徴的な形質の混合となっており、系統発生解析ではこの化石種がステム群苔虫動物と特定されました。
これにより、苔虫動物門の起源はカンブリア紀ステージ3の他の全ての有骨格動物門と同時期となり、その最初の出現時期は約3500万年さかのぼることになりました。この結果はまた、この化石記録と、苔虫動物門がカンブリア紀前期に出現し、続くオルドビス紀に炭酸塩骨格を獲得して放散したとする、分子時計による推定結果と整合的です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
進化学:苔虫動物門がカンブリア紀前期に出現したことを示す化石証拠
進化学:転がる苔虫は化石を生ぜず?
カンブリア紀には、ほぼ全ての主要な動物群が出現していた。その唯一の注目すべき例外は、苔虫動物門である。この微小な生き物は海藻に似た(起立性の)群体あるいは被覆性の群体を形成し、見過ごされることが多いものの、現在も広く一般的に存在している。しかし、その化石記録は前期オルドビス紀以降でしか見つかっていない。苔虫動物門がこの年代すでに現代の分類群に割り当て可能な形で存在したことは、その歴史がカンブリア紀まで大きくさかのぼることを示唆しているが、これまでにカンブリア紀の苔虫動物とされた化石はいずれも激しい異論があった。今回Z Zhangたちは、新たに発見された、カンブリア紀前期の生物の非常に優れた化石標本(一部はすでに類縁関係不明の群体生物として記載されている)を調べ、この生物が原始的な苔虫動物であることを明らかにしている。
参考文献:
Zhang Z. et al.(2021): Fossil evidence unveils an early Cambrian origin for Bryozoa. Nature, 599, 7884, 251–255.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-04033-w
追記(2023年3月17日)
この研究を否定する研究が報告されたので、当ブログで取り上げました(関連記事)。
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