更新世アフリカの乾燥化要因

 更新世アフリカの乾燥化要因に関する研究(van der Lubbe et al., 2021)が公表されました。現在のアフリカ東部の水文気候は、帯状の大気循環であるウォーカー循環の変動と密接に関連しています。この循環は、220万~200万年前頃に太平洋のウォーカー循環が発達した後、はるかに長い氷期–間氷期の時間規模でもインド洋領域の水文気候条件を形成した、と示す証拠が増えています。しかし、更新世を通して海洋循環の多くの要素が変化したことは知られているものの、太平洋の影響を受けたインド洋の気候遷移の時期と機構を決定するための長期にわたる連続した記録は、これまで得られていませんでした。

 この研究は、アフリカ南東部とマダガスカルの間に位置する海洋コアから得られたモザンビーク海峡通過流(MCT)の流速変動に記録された、約700万年にわたる熱帯インド洋の風成循環の記録を提示します。この研究は、MCTの流速が210万±10万年前までは比較的弱く安定していたものの、この時期に太平洋ウォーカー循環が強まったのと時を同じくして増大し始めた、と示します。氷期における強い増大は、中期更新世気候変換期(90万~64万年前頃)に極大に達し、間氷期の弱い流速によってたびたび中断されていました。

 この研究が提示するのは、MCTの流速の増大が、アフリカの乾燥化を促進したインド太平洋ウォーカーセルの、同時期の発達の反映を説明する機構です。この結果は、210万年前頃以降、乾燥化の増大が著しく湿潤な間氷期によりたびたび中断されたことを示唆しています。この記録は、人類の進化と分散を駆動した、気候–環境要因についての仮説の検証に役立つと期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


古海洋学:更新世のアフリカの乾燥化を駆動したインド太平洋ウォーカー循環

古海洋学:210万年前に強化されたインド洋循環

 更新世を通して海洋循環の多くの要素が変化したことは知られているが、大西洋と比べるとインド洋では長期の連続的記録が少ない。今回J van der Lubbeたちは、アフリカ南東部とマダガスカルの間に位置する海洋コアから得られた700万年間の流速変動の記録を提示している。この地点では、インド洋循環全体の重要な構成要素であるモザンビーク海峡通過流(MCT)の変動が記録されていた。著者たちは、MCTは約210万年前まではおおむね弱く安定していたが、その後、流れが急速に速くなってその状態が約100万年前の中期更新世気候変換期まで続き、その際は氷期–間氷期サイクルの強まりと同時に振幅が増大したことを見いだしている。



参考文献:
van der Lubbe HJL. et al.(2021): Indo-Pacific Walker circulation drove Pleistocene African aridification. Nature, 598, 7882, 618–623.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03896-3

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