ヤンガードライアスを同期させるラーハ湖の噴火の正確な年代

 ヤンガードライアスを同期させるドイツのラーハ湖噴火(LSE)の正確な年代に関する研究(Reinig et al., 2021)が公表されました。LSEは、後期更新世におけるヨーロッパ最大級の火山事象の一つと位置づけられています。LSEのテフラ堆積物は、後期氷期から前期完新世への移行期における代理指標アーカイブを同期させるための重要な等時性を示していますが、噴火の年代については不確かさが残っています。

 この研究は、火砕堆積物に埋もれた半化石樹木の年輪年代測定と放射性炭素測定を行ない、LSEの年代を13006±9年前(1950年を基点とする較正年代)と確定しました。これは、じゅうらい認められていた年代より1世紀以上古くなります。LSEの年代が修正されたことで、ヨーロッパの氷縞粘土湖の年代は、グリーンランドの氷床コア記録に対して必然的にシフトし、これによりヤンガードライアスの開始時期は12807±12年前(較正年代)となりました。

 これは、じゅうらいの推定年代より約130年古くなります。この結果は、ヤンガードライアスの開始時期を北大西洋とヨーロッパで同期させるもので、LSEとグリーンランド 亜氷期1の寒冷化の直接的関連性を排除し、温暖化条件下での大西洋の南北方向の鉛直循環の弱化という大規模な共通機構を示唆しています。ヤンガードライアスは、大型動物の絶滅や農耕への移行とも関連している可能性があり、人類史の観点からひじょうに注目される事象だけに、今後の研究の進展が期待されます。


参考文献:
Reinig F. et al.(2021): Precise date for the Laacher See eruption synchronizes the Younger Dryas. Nature, 595, 7865, 66–69.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03608-x

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