北極マンモスの生涯にわたる移動
北極マンモスの生涯にわたる移動に関する研究(Wooller et al., 2021)が報道されました。日本語の解説記事もあります。マンモスは最も広く研究されている氷河期を象徴する動物の1種であるにも関わらず、化石からだけだと、マンモスの生活における静的で特異的でありがちなことしか推測できないため、自然界でのその生活史についてはほぼ分かっていません。しがたって、マンモスの行動圏や移動範囲、つまり生涯を通してどこをどう移動していたのか、という点については概ね解明されていません。
しかし、日常的な壮大な距離の移動は親戚である現存するゾウやその他の北極圏の動物の移動パターンの特徴なので、マンモスもそれらと似た行動を取っていた、と考えられます。太古に絶滅したマンモスの移動パターンを潜在的に再構築する一つの方法として、生存中に歯と牙に取り込まれた酸素およびストロンチウム(Sr)の同位体分析を行なうという手段があります。土と植物の中のストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)はその下の基盤地質を反映し、それは地勢にわたって異なります。動物がこれらの植物を食べると、その地域の87Sr/86Srパターンが細胞内に取り込まれます。したがって、マンモスの牙などの生涯を通して伸び続ける組織の中の87Sr/86Sr比は、動物の長期にわたる移動の追跡に使える記録です。
この研究は、現在のアラスカ本土に17100年以上前に生息していた雄のマンモスの長さ1.7メートルの牙を使用して、高時間分解能同位体記録をまとめ、そのマンモスの28年という生涯の移動の詳細を明らかにしました。この記録により、広大な地理的行動圏内を繰り返し移動した経路が示されたとともに、そのマンモスが28年間でアラスカをあまねく移動し、それはほぼ地球2周に相当することも明らかになりました。またこの結果から、そのマンモスが、群れとともに移動した幼い時期や若い時期、より広い範囲を移動した動き盛りの成体期、最期の数年など、様々なライフステージにしばしば訪れた地域も明らかになりました。このマンモスはアラスカ北部の狭い地域で餓死した、と推測されます。
参考文献:
Wooller MJ. et al.(2021): Lifetime mobility of an Arctic woolly mammoth. Science, 373, 6556, 806–808.
https://doi.org/10.1126/science.abg1134
しかし、日常的な壮大な距離の移動は親戚である現存するゾウやその他の北極圏の動物の移動パターンの特徴なので、マンモスもそれらと似た行動を取っていた、と考えられます。太古に絶滅したマンモスの移動パターンを潜在的に再構築する一つの方法として、生存中に歯と牙に取り込まれた酸素およびストロンチウム(Sr)の同位体分析を行なうという手段があります。土と植物の中のストロンチウム同位体比(87Sr/86Sr)はその下の基盤地質を反映し、それは地勢にわたって異なります。動物がこれらの植物を食べると、その地域の87Sr/86Srパターンが細胞内に取り込まれます。したがって、マンモスの牙などの生涯を通して伸び続ける組織の中の87Sr/86Sr比は、動物の長期にわたる移動の追跡に使える記録です。
この研究は、現在のアラスカ本土に17100年以上前に生息していた雄のマンモスの長さ1.7メートルの牙を使用して、高時間分解能同位体記録をまとめ、そのマンモスの28年という生涯の移動の詳細を明らかにしました。この記録により、広大な地理的行動圏内を繰り返し移動した経路が示されたとともに、そのマンモスが28年間でアラスカをあまねく移動し、それはほぼ地球2周に相当することも明らかになりました。またこの結果から、そのマンモスが、群れとともに移動した幼い時期や若い時期、より広い範囲を移動した動き盛りの成体期、最期の数年など、様々なライフステージにしばしば訪れた地域も明らかになりました。このマンモスはアラスカ北部の狭い地域で餓死した、と推測されます。
参考文献:
Wooller MJ. et al.(2021): Lifetime mobility of an Arctic woolly mammoth. Science, 373, 6556, 806–808.
https://doi.org/10.1126/science.abg1134
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