ハチの個体数減少に対する農薬の影響
ハチの個体数減少に対する農薬の影響に関する研究(Siviter et al., 2021)が公表されました。広範に報告されている花粉媒介者の減少は、世界的に懸念されています。それは、世界の食料安全保障と野生生態系にとっての脅威だからです。ハナバチの個体群に対しそれぞれが単独で有害となる人為的ストレッサー(農薬や寄生虫や栄養的ストレス要因など)がいくつか明らかになっており、たとえば殺虫剤がミツバチやマルハナバチに対して高い毒性を示すことはすでに広く知られています(関連記事)。
これらのストレッサー間の相乗的な相互作用は、そうしたストレッサーによる環境的影響を大きく増幅させる可能性があるため、花粉媒介者の健康の改善を目指す政策決定に重要な意味を持つと考えられますが、これまでの研究は、結果がまちまちで、決め手に欠けていました。この研究は、そうした脅威の規模を定量的に評価する目的で、農薬や栄養的ストレッサーや寄生虫のさまざまな組み合わせにハナバチを曝露させた90件の研究に由来する、356の相互作用効果量のメタ解析を行ないました。
その結果、ハナバチの死亡率に対する、複数のストレッサー間の全体的な相乗的影響が明らかになりました。ハナバチの死亡率に関するサブグループ解析から、ハナバチが野外の現実的なレベルで複数の農薬に曝露された場合に、相乗作用が見られることを示す強力な証拠が得られましたが、ハナバチが寄生虫や栄養的ストレッサーに曝露された場合は、それらの相互作用は相加的な期待値を超えるものではありませんでした。
適応度の代理指標や行動や寄生虫量や免疫応答に対する全ての相互作用的な影響は、相加的または拮抗的のいずれかであったことから、観測されたような、ハナバチの死亡率に対する相乗的相互作用を駆動していると考えられる機序は依然として不明です。農薬への曝露リスクの相加的影響を想定した環境リスク評価計画は、ハナバチの死亡率に対する人為的ストレッサーの相互作用的影響を過小評価している可能性があり、持続可能な農業を支える重要な生態系サービスを提供している花粉媒介者の保護には成功しない、と考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
生態学:ハチの個体数減少に対する農薬の影響が過小評価されている可能性がある
複数の農薬(殺虫剤、除草剤など)の相乗的相互作用は、相加的であれば、ハチの死亡率に予想以上に大きな影響を与えることをメタ分析によって明らかにした論文が、今週、Nature に掲載される。農業に関連する環境ストレス要因の相互作用による影響が過小評価されているとすれば、ハチが現行の規制制度では保護されない可能性が生じる。
ハチの個体数が減少することは、世界の食料安全保障と野生生態系にとっての脅威である。この個体数減少に対しては、数多くの要因(例えば、農薬、寄生虫、栄養的ストレス要因)が、それぞれ寄与していることが明らかになっているが、これらの要因の相互作用を調べるこれまでの研究は、結果がまちまちで、決め手に欠けていた。
今回、Harry Siviter、Emily Bailesたちは、こうした脅威の程度を定量的に評価するため、、農薬、寄生虫、栄養的ストレス要因の356種類の相互作用がハチの健康に及ぼす影響を比較した90件の研究結果をまとめて分析した。全般的に言うと、複数のストレス要因が相乗的にハチの死亡率に影響していることが明らかになり、相互作用するこれらのストレス要因の複合効果が、ストレス要因の個々の効果の合計より大きくなることが分かった。ただし、このメタ分析の結果をストレス要因の種類別に整理すると、農薬が散布された作物中の残留農薬濃度として報告されている濃度の農薬間の相乗的相互作用がハチの死亡率に影響していることを示唆する強力な証拠が得られた。他方、ハチと共進化してきたストレス要因(寄生虫感染および/または栄養不良)の場合には、その複合効果が、ストレス要因の個々の効果を合計した期待値を超えなかった。
Siviterたちは、以上の結果は、農薬のストレス要因が相加的に相互作用することを前提としていて、その結果として人為的発生源がハチの死亡率に及ぼす相乗的な相互作用の影響を過小評価しているかもしれない環境リスク評価計画における警告を浮き彫りにしている可能性があると結論付けている。Siviterたちは、もしこの問題に取り組まなければ、ハチの個体数がさらに減少するリスクが生じ、世界の食料生産にとってかけがえのない財産である花粉媒介にも連鎖反応的な影響が及ぶと述べている。
生態学:複数の農薬が相乗的に相互作用してハナバチの死亡率を上昇させる
生態学:ハナバチの死亡率に対する複数のストレッサーの相乗的影響
ハナバチ個体群の世界的な減少が食料安全保障と野生生態系を脅かしている。こうした個体群の減少は、農薬、寄生虫、栄養的ストレッサーの相互作用的影響によって促進されていると考えられているが、そうした相互作用を調べた研究ではそれぞれ異なる結果が得られている。今回H Siviterたちは、農薬、寄生虫、栄養的ストレッサーが、ハナバチの健康に及ぼす相互作用的影響のメタ解析を行った。その結果、ハナバチが野外の現実的なレベルで複数の農薬に曝露された場合に、ハナバチの死亡率に「相乗的影響(ストレッサーの組み合わせによる影響が、想定される相加的影響を大きく上回る)」が認められることが分かった。一方、ハナバチが寄生虫や栄養的ストレッサーに曝露された場合の相互作用は、相加的期待値を超えるものではなかった。農薬への曝露の相加的影響を想定した環境リスク評価計画は、ハナバチの死亡率に対する人為的ストレッサーの影響を過小評価している可能性がある。
参考文献:
Siviter H. et al.(2021): Agrochemicals interact synergistically to increase bee mortality. Nature, 596, 7872, 389–392.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03787-7
これらのストレッサー間の相乗的な相互作用は、そうしたストレッサーによる環境的影響を大きく増幅させる可能性があるため、花粉媒介者の健康の改善を目指す政策決定に重要な意味を持つと考えられますが、これまでの研究は、結果がまちまちで、決め手に欠けていました。この研究は、そうした脅威の規模を定量的に評価する目的で、農薬や栄養的ストレッサーや寄生虫のさまざまな組み合わせにハナバチを曝露させた90件の研究に由来する、356の相互作用効果量のメタ解析を行ないました。
その結果、ハナバチの死亡率に対する、複数のストレッサー間の全体的な相乗的影響が明らかになりました。ハナバチの死亡率に関するサブグループ解析から、ハナバチが野外の現実的なレベルで複数の農薬に曝露された場合に、相乗作用が見られることを示す強力な証拠が得られましたが、ハナバチが寄生虫や栄養的ストレッサーに曝露された場合は、それらの相互作用は相加的な期待値を超えるものではありませんでした。
適応度の代理指標や行動や寄生虫量や免疫応答に対する全ての相互作用的な影響は、相加的または拮抗的のいずれかであったことから、観測されたような、ハナバチの死亡率に対する相乗的相互作用を駆動していると考えられる機序は依然として不明です。農薬への曝露リスクの相加的影響を想定した環境リスク評価計画は、ハナバチの死亡率に対する人為的ストレッサーの相互作用的影響を過小評価している可能性があり、持続可能な農業を支える重要な生態系サービスを提供している花粉媒介者の保護には成功しない、と考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
生態学:ハチの個体数減少に対する農薬の影響が過小評価されている可能性がある
複数の農薬(殺虫剤、除草剤など)の相乗的相互作用は、相加的であれば、ハチの死亡率に予想以上に大きな影響を与えることをメタ分析によって明らかにした論文が、今週、Nature に掲載される。農業に関連する環境ストレス要因の相互作用による影響が過小評価されているとすれば、ハチが現行の規制制度では保護されない可能性が生じる。
ハチの個体数が減少することは、世界の食料安全保障と野生生態系にとっての脅威である。この個体数減少に対しては、数多くの要因(例えば、農薬、寄生虫、栄養的ストレス要因)が、それぞれ寄与していることが明らかになっているが、これらの要因の相互作用を調べるこれまでの研究は、結果がまちまちで、決め手に欠けていた。
今回、Harry Siviter、Emily Bailesたちは、こうした脅威の程度を定量的に評価するため、、農薬、寄生虫、栄養的ストレス要因の356種類の相互作用がハチの健康に及ぼす影響を比較した90件の研究結果をまとめて分析した。全般的に言うと、複数のストレス要因が相乗的にハチの死亡率に影響していることが明らかになり、相互作用するこれらのストレス要因の複合効果が、ストレス要因の個々の効果の合計より大きくなることが分かった。ただし、このメタ分析の結果をストレス要因の種類別に整理すると、農薬が散布された作物中の残留農薬濃度として報告されている濃度の農薬間の相乗的相互作用がハチの死亡率に影響していることを示唆する強力な証拠が得られた。他方、ハチと共進化してきたストレス要因(寄生虫感染および/または栄養不良)の場合には、その複合効果が、ストレス要因の個々の効果を合計した期待値を超えなかった。
Siviterたちは、以上の結果は、農薬のストレス要因が相加的に相互作用することを前提としていて、その結果として人為的発生源がハチの死亡率に及ぼす相乗的な相互作用の影響を過小評価しているかもしれない環境リスク評価計画における警告を浮き彫りにしている可能性があると結論付けている。Siviterたちは、もしこの問題に取り組まなければ、ハチの個体数がさらに減少するリスクが生じ、世界の食料生産にとってかけがえのない財産である花粉媒介にも連鎖反応的な影響が及ぶと述べている。
生態学:複数の農薬が相乗的に相互作用してハナバチの死亡率を上昇させる
生態学:ハナバチの死亡率に対する複数のストレッサーの相乗的影響
ハナバチ個体群の世界的な減少が食料安全保障と野生生態系を脅かしている。こうした個体群の減少は、農薬、寄生虫、栄養的ストレッサーの相互作用的影響によって促進されていると考えられているが、そうした相互作用を調べた研究ではそれぞれ異なる結果が得られている。今回H Siviterたちは、農薬、寄生虫、栄養的ストレッサーが、ハナバチの健康に及ぼす相互作用的影響のメタ解析を行った。その結果、ハナバチが野外の現実的なレベルで複数の農薬に曝露された場合に、ハナバチの死亡率に「相乗的影響(ストレッサーの組み合わせによる影響が、想定される相加的影響を大きく上回る)」が認められることが分かった。一方、ハナバチが寄生虫や栄養的ストレッサーに曝露された場合の相互作用は、相加的期待値を超えるものではなかった。農薬への曝露の相加的影響を想定した環境リスク評価計画は、ハナバチの死亡率に対する人為的ストレッサーの影響を過小評価している可能性がある。
参考文献:
Siviter H. et al.(2021): Agrochemicals interact synergistically to increase bee mortality. Nature, 596, 7872, 389–392.
https://doi.org/10.1038/s41586-021-03787-7
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