昆虫のコミュニケーションの起源
昆虫のコミュニケーションの起源に関する研究(Schubnel et al., 2021)が公表されました。多くの昆虫は、翅の形や色に加えて、翅が発する音を使って、交尾相手を引き寄せたり、捕食者から逃れたりしています。こうした行動が、いつ、どのようにして進化したのか、まだ分かっていません。それは、コミュニケーションに使われている構造と他の目的に使われている構造を、翅化石において区別するのが困難だからです。
この研究は、フランスのリエヴァン(Liévin)で昆虫の翅の化石を発見し、ティタノプテラ目の新種の翅であることを明らかにしました。ティタノプテラ目はキリギリスに似た巨大な捕食性昆虫で、翅の長さは最長のもので33cmを超えていました。この新種は「Theiatitan azari」と命名されました。テイアー(Theia)とは、ギリシア神話に登場する光の女神です。この翅は、これまで最古とされていたティタノプテラ目種の化石や翅を使って音を出していたと考えられている、「Permostridulus brongniarti」の化石よりも約5000万年古いことになります。
この研究は、一部のティタノプテラ目種(T. azariを含む)の前翅の中に、さまざまな角度や形状の複数のパネルが存在していることを見いだしました。これらのパネルは、コミュニケーションのために翅を使って光を反射させたり、音を発したりする化石昆虫や現生昆虫の持つパネルに似ています。T. azariは、翅を使って光を反射させたり、パチパチという音を発生させたりすることでコミュニケーションを行なっており、この翅の形状と構造から、それが可能だったのは、こうしたパネルのためと示唆されました。
これらの知見は、昆虫が翅を使って情報を発信することが石炭紀後期(約3億1000万年前)から始まっていた可能性を示唆するとともに、昆虫の進化史を通じて、翅が昆虫のコミュニケーションにとって重要だった、と明らかにするとともに、T. azariはコミュニケーションのために翅を使用していた最古の昆虫種だった、と示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:遠い昔の昆虫の翅が解き明かす昆虫のコミュニケーションの起源
このほど発見された昆虫の翅の化石で観察された複数の特徴が、翅を用いたコミュニケーションを示す最古の証拠になったことを報告する論文が、Communications Biology に掲載される。この知見は、昆虫が翅を使って情報を発信することが石炭紀後期(約3億1000万年前)から始まっていた可能性を示唆している。
多くの昆虫は、翅の形や色に加えて、翅が発する音を使って、交尾相手を引き寄せたり、捕食者から逃れたりしている。こうした行動が、いつ、どのようにして進化したのかは分かっていない。コミュニケーションに使われている構造と他の目的に使われている構造を、翅化石において区別するのが難しいからだ。
今回、André Nelたちの研究チームは、フランスのリエヴァンで昆虫の翅の化石を発見し、ティタノプテラ目の新種の翅であることを明らかにした。ティタノプテラ目は、キリギリスに似た巨大な捕食性昆虫で、翅の長さは最長のもので33センチメートルを超えていた。Nelたちは、この新種をTheiatitan azariと命名した。テイアー(Theia)は、ギリシャ神話に登場する光の女神だ。この翅は、これまで最古とされていたティタノプテラ目種の化石や翅を使って音を出していたと考えられているPermostridulus brongniartiの化石よりも約5000万年古い。Nelたちは、一部のティタノプテラ目種(T. azariを含む)の前翅の中に、さまざまな角度や形状の複数のパネルが存在していることを見いだした。これらのパネルは、コミュニケーションのために翅を使って光を反射させたり、音を発したりする化石昆虫や現生昆虫の持つパネルに似ている。T. azariは、翅を使って光を反射させたり、パチパチという音を発生させたりすることでコミュニケーションを行っており、この翅の形状と構造から、それが可能だったのは、こうしたパネルのためであると示唆された。
以上の知見は、昆虫の進化史を通じて、翅が昆虫のコミュニケーションにとって重要だったことを明確に示しており、T. azariがコミュニケーションのために翅を使用していた最古の昆虫種であることを示している。
参考文献:
Schubnel T. et al.(2020): Sound vs. light: wing-based communication in Carboniferous insects. Communications Biology, 4, 794.
https://doi.org/10.1038/s42003-021-02281-0
この研究は、フランスのリエヴァン(Liévin)で昆虫の翅の化石を発見し、ティタノプテラ目の新種の翅であることを明らかにしました。ティタノプテラ目はキリギリスに似た巨大な捕食性昆虫で、翅の長さは最長のもので33cmを超えていました。この新種は「Theiatitan azari」と命名されました。テイアー(Theia)とは、ギリシア神話に登場する光の女神です。この翅は、これまで最古とされていたティタノプテラ目種の化石や翅を使って音を出していたと考えられている、「Permostridulus brongniarti」の化石よりも約5000万年古いことになります。
この研究は、一部のティタノプテラ目種(T. azariを含む)の前翅の中に、さまざまな角度や形状の複数のパネルが存在していることを見いだしました。これらのパネルは、コミュニケーションのために翅を使って光を反射させたり、音を発したりする化石昆虫や現生昆虫の持つパネルに似ています。T. azariは、翅を使って光を反射させたり、パチパチという音を発生させたりすることでコミュニケーションを行なっており、この翅の形状と構造から、それが可能だったのは、こうしたパネルのためと示唆されました。
これらの知見は、昆虫が翅を使って情報を発信することが石炭紀後期(約3億1000万年前)から始まっていた可能性を示唆するとともに、昆虫の進化史を通じて、翅が昆虫のコミュニケーションにとって重要だった、と明らかにするとともに、T. azariはコミュニケーションのために翅を使用していた最古の昆虫種だった、と示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
古生物学:遠い昔の昆虫の翅が解き明かす昆虫のコミュニケーションの起源
このほど発見された昆虫の翅の化石で観察された複数の特徴が、翅を用いたコミュニケーションを示す最古の証拠になったことを報告する論文が、Communications Biology に掲載される。この知見は、昆虫が翅を使って情報を発信することが石炭紀後期(約3億1000万年前)から始まっていた可能性を示唆している。
多くの昆虫は、翅の形や色に加えて、翅が発する音を使って、交尾相手を引き寄せたり、捕食者から逃れたりしている。こうした行動が、いつ、どのようにして進化したのかは分かっていない。コミュニケーションに使われている構造と他の目的に使われている構造を、翅化石において区別するのが難しいからだ。
今回、André Nelたちの研究チームは、フランスのリエヴァンで昆虫の翅の化石を発見し、ティタノプテラ目の新種の翅であることを明らかにした。ティタノプテラ目は、キリギリスに似た巨大な捕食性昆虫で、翅の長さは最長のもので33センチメートルを超えていた。Nelたちは、この新種をTheiatitan azariと命名した。テイアー(Theia)は、ギリシャ神話に登場する光の女神だ。この翅は、これまで最古とされていたティタノプテラ目種の化石や翅を使って音を出していたと考えられているPermostridulus brongniartiの化石よりも約5000万年古い。Nelたちは、一部のティタノプテラ目種(T. azariを含む)の前翅の中に、さまざまな角度や形状の複数のパネルが存在していることを見いだした。これらのパネルは、コミュニケーションのために翅を使って光を反射させたり、音を発したりする化石昆虫や現生昆虫の持つパネルに似ている。T. azariは、翅を使って光を反射させたり、パチパチという音を発生させたりすることでコミュニケーションを行っており、この翅の形状と構造から、それが可能だったのは、こうしたパネルのためであると示唆された。
以上の知見は、昆虫の進化史を通じて、翅が昆虫のコミュニケーションにとって重要だったことを明確に示しており、T. azariがコミュニケーションのために翅を使用していた最古の昆虫種であることを示している。
参考文献:
Schubnel T. et al.(2020): Sound vs. light: wing-based communication in Carboniferous insects. Communications Biology, 4, 794.
https://doi.org/10.1038/s42003-021-02281-0
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