ブチハイエナの社会構造

 ブチハイエナの社会構造に関する研究(Ilany et al., 2021)が公表されました。日本語の解説記事もあります。動物の社会的ネットワークの構造はあらゆる社会過程、および健康状態と生存と繁殖成功に重要な役割を果たしているにも関わらず、野生において社会構造を決める一般的な仕組みは依然として解明されていません。社会的相続と呼ばれる提案されたモデルで、子の社会的親和は親、とくに母親の社会的親和と似る傾向にある、と示唆されています。これまでの研究では、多数の種において、こうした社会的ネットワークの相続が世代を超えて社会的構造に影響を及ぼしている可能性も示されてきた。

 この研究は、高度に構造化された雌優位のブチハイエナ社会における社会的相続の役割について評価しました。この研究は、社会的ネットワークの分析と27年間にわたって収集したハイエナ野生群の73767点の社会的相互作用の観察結果から成る複数の世代間にわたるデータセットを併用し、幼いハイエナの社会的関係は母親の社会的関係に類似していること、また、その類似の水準は母親の社会的地位に応じて上がることを発見しました。

 その研究結果ではさらに、母子関係の強さは社会的相続に影響を及ぼすとともに、母子両者の長寿との間に正の相関関係が認められることも示されました。この研究はこうした結果から、社会的相続淘汰はハイエナの社会的行動と個々のハイエナの適応度の形成に重要な役割を果たしていると考えられる、と指摘しています。また、さらに研究を進めて、さまざまな個体群構造において特定の社会的関係がどの程度広く相続されているか、それが社会的ネットワークの構造に依存する多くの社会過程の進化速度に対してどんな意味を持つのか、調べる必要がある、とも指摘されています。


参考文献:
Ilany A, Holekamp KE, and Akçay E.(2021): Rank-dependent social inheritance determines social network structure in spotted hyenas. Science, 373, 6552, 348–352.
https://doi.org/10.1126/science.abc1966

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