ハチを殺虫剤から守れるかもしれない微小粒子
ハチを殺虫剤から守れるかもしれない微小粒子に関する研究(Chen et al., 2021)が公表されました。花粉媒介生物は、世界の食料生産のために生態系機能を維持する上で不可欠です。しかし、殺虫剤への曝露は、全世界で花粉媒介生物が減少する主要な原因の一つになっています。有機リン化合物は殺虫剤として広く使用されており、ミツバチやマルハナバチに対して高い毒性を示します(関連記事)。これまでの研究では、酵素の一種であるホスホトリエステラーゼ(OPT)が有機リン系殺虫剤への曝露に対する治療法になり得る、と示唆されています。しかし、ハチにOPTを投与する現行の方法は有効性が低い、と示されています。
この研究は、花粉から着想した使い捨て型の均一な微小粒子(PIM)を開発しました。PIMは炭酸カルシウムで構成される微小粒子で、この内部にOPTが封入され、OPTが消化の過程で分解されないようになっています。この研究は、マルハナバチの微小コロニーに、マラチオン(有機リン系殺虫剤)で汚染された花粉パティを投与しました。OPTが封入されたPIMを与えられたハチは、マラチオンに曝露された後でも、観察期間中(10日間)の生存率は100%でした。これに対して、OPTのみ、またはショ糖のみを与えられたハチは、マラチオン曝露の5日後と4日後の生存率がそれぞれ0%でした。
この研究は、こうした低コストでスケーラブルな生体材料を用いる方法は、今後、コロニー規模の検証が必要ではあるものの、有機リン系殺虫剤が使用されている地域では、飼育下の花粉媒介生物のための予防措置または治療手段として利用できる可能性がある、と指摘しています。このハチの解毒戦略は、飼育下のハチ個体群が有機リン殺虫剤に曝露されるリスクを低減する上で重要な意味を持つと考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
生物工学:花粉から着想した微小粒子でハチを殺虫剤から守れるかもしれない
有機リン系殺虫剤に曝露されたハチの解毒に使える可能性のある、花粉から着想を得た微小粒子について報告する論文が、Nature Food に掲載される。このハチの解毒戦略は、飼育下のハチ個体群が有機リン殺虫剤に曝露されるリスクを低減する上で重要な意味を持つと考えられる。
花粉媒介生物は、世界の食料生産のために生態系機能を維持する上で不可欠である。しかし、殺虫剤への曝露は、全世界で花粉媒介生物が減少する主要な原因の1つになっている。有機リン化合物は殺虫剤として広く使用されており、ミツバチやマルハナバチに対して高い毒性を示す。これまでの研究では、酵素の一種であるホスホトリエステラーゼ(OPT)が有機リン系殺虫剤への曝露に対する治療法になり得ることが示唆されている。しかし、ハチにOPTを投与する現行の方法は有効性が低い。
今回、Minglin Maたちの研究チームは、花粉から着想した使い捨て型の均一な微小粒子(PIM)を開発した。PIMは、炭酸カルシウムでできた微小粒子で、この内部にOPTが封入され、OPTが消化の過程で分解されないようになっている。Maたちは、マルハナバチの微小コロニーにマラチオン(有機リン系殺虫剤)で汚染された花粉パティを投与する実験を行った。OPTが封入されたPIMを与えられたハチは、マラチオンに曝露された後でも、観察期間中(10日間)の生存率は100%であった。これに対して、OPTのみ、またはショ糖のみを与えられたハチは、マラチオン曝露の5日後と4日後の生存率がそれぞれ0%だった。
Maたちは、このような低コストでスケーラブルな生体材料を用いる方法は、今後、コロニー規模の検証が必要だが、有機リン系殺虫剤が使用されている地域では、飼育下の花粉媒介生物のための予防措置または治療手段として利用できる可能性があるという考えを示している。
参考文献:
Chen J. et al.(2021): Pollen-inspired enzymatic microparticles to reduce organophosphate toxicity in managed pollinators. Nature Food, 2, 5, 339–347.
https://doi.org/10.1038/s43016-021-00282-0
この研究は、花粉から着想した使い捨て型の均一な微小粒子(PIM)を開発しました。PIMは炭酸カルシウムで構成される微小粒子で、この内部にOPTが封入され、OPTが消化の過程で分解されないようになっています。この研究は、マルハナバチの微小コロニーに、マラチオン(有機リン系殺虫剤)で汚染された花粉パティを投与しました。OPTが封入されたPIMを与えられたハチは、マラチオンに曝露された後でも、観察期間中(10日間)の生存率は100%でした。これに対して、OPTのみ、またはショ糖のみを与えられたハチは、マラチオン曝露の5日後と4日後の生存率がそれぞれ0%でした。
この研究は、こうした低コストでスケーラブルな生体材料を用いる方法は、今後、コロニー規模の検証が必要ではあるものの、有機リン系殺虫剤が使用されている地域では、飼育下の花粉媒介生物のための予防措置または治療手段として利用できる可能性がある、と指摘しています。このハチの解毒戦略は、飼育下のハチ個体群が有機リン殺虫剤に曝露されるリスクを低減する上で重要な意味を持つと考えられます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
生物工学:花粉から着想した微小粒子でハチを殺虫剤から守れるかもしれない
有機リン系殺虫剤に曝露されたハチの解毒に使える可能性のある、花粉から着想を得た微小粒子について報告する論文が、Nature Food に掲載される。このハチの解毒戦略は、飼育下のハチ個体群が有機リン殺虫剤に曝露されるリスクを低減する上で重要な意味を持つと考えられる。
花粉媒介生物は、世界の食料生産のために生態系機能を維持する上で不可欠である。しかし、殺虫剤への曝露は、全世界で花粉媒介生物が減少する主要な原因の1つになっている。有機リン化合物は殺虫剤として広く使用されており、ミツバチやマルハナバチに対して高い毒性を示す。これまでの研究では、酵素の一種であるホスホトリエステラーゼ(OPT)が有機リン系殺虫剤への曝露に対する治療法になり得ることが示唆されている。しかし、ハチにOPTを投与する現行の方法は有効性が低い。
今回、Minglin Maたちの研究チームは、花粉から着想した使い捨て型の均一な微小粒子(PIM)を開発した。PIMは、炭酸カルシウムでできた微小粒子で、この内部にOPTが封入され、OPTが消化の過程で分解されないようになっている。Maたちは、マルハナバチの微小コロニーにマラチオン(有機リン系殺虫剤)で汚染された花粉パティを投与する実験を行った。OPTが封入されたPIMを与えられたハチは、マラチオンに曝露された後でも、観察期間中(10日間)の生存率は100%であった。これに対して、OPTのみ、またはショ糖のみを与えられたハチは、マラチオン曝露の5日後と4日後の生存率がそれぞれ0%だった。
Maたちは、このような低コストでスケーラブルな生体材料を用いる方法は、今後、コロニー規模の検証が必要だが、有機リン系殺虫剤が使用されている地域では、飼育下の花粉媒介生物のための予防措置または治療手段として利用できる可能性があるという考えを示している。
参考文献:
Chen J. et al.(2021): Pollen-inspired enzymatic microparticles to reduce organophosphate toxicity in managed pollinators. Nature Food, 2, 5, 339–347.
https://doi.org/10.1038/s43016-021-00282-0
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