大相撲夏場所千秋楽

 もうすっかり慣れてしまいましたが、今場所も横綱不在となりました。相撲協会も少なからぬ報道関係者も一般の愛好者も、横綱不在に不満を抱き、相撲人気の低下を不安に思っているかもしれませんが、私は横綱不在になれたこともあり、横綱不在に関して不満はほとんどありません。今場所大関に復帰した照ノ富士関が横綱に昇進できず引退するか、大関から再度陥落するようだと、明確に横綱制度が確立してからは前例のない、長期の横綱不在時代が到来するかもしれませんが、それでも相撲を楽しめるかな、と考えています。

 優勝争いは、ずっと照ノ富士関が先頭を走り、11日目に相撲内容では完全に勝っていたのに反則で負けても動揺することなく12日目と13日目も勝ったので、14日目に優勝を決めるのかと思ったら、優勝争いに残っていた遠藤関に際どい相撲で負けてしまいました。取り直しにすべき一番だったように思いますが、照ノ富士関にすると、膝の状態から考えて取り直しよりも負けた方がよかったかもしれません。それでも、千秋楽を迎えて照ノ富士関が2敗で3敗が貴景勝関と遠藤関と、照ノ富士関が優位な状況には変わりありませんでした。

 千秋楽は、まず遠藤関が正代関と対戦し、正代関が押し出しで勝ち、遠藤関は11勝4敗となって優勝争いから脱落しました。照ノ富士関と貴景勝関は結びの一番で対戦し、貴景勝関が立ち合いで強く当たった直後に引き落として勝ち、ともに12勝3敗で優勝決定戦となりました。優勝決定戦では、照ノ富士関が激しい突き合いからはたき込んで勝ち、4回目の優勝を果たしました。照ノ富士関は本割の内容がよくなかっただけに、膝の状態がかなり悪いのではないか、と心配しましたが、落ち着いていたと思います。

 来場所、照ノ富士関は横綱昇進に挑むことになります。照ノ富士関は最初に大関に昇進した頃と比較すると、心と技は間違いなく上でしょうが、やはり膝の状態は以前と比較すると悪いようなので、体の面ではかなり不安が残り、白鵬関の復活が難しそうな現時点では文句なしに現役最強とはいえ、来場所後の横綱昇進は楽観視できないように思います。また、照ノ富士関は横綱に昇進できたとしても、膝の状態が悪く、半年後には30歳になるだけに、長く務めるのは難しそうです。

 不甲斐ないと言われ続けてきた照ノ富士関を除く3大関では、貴景勝関は優勝決定戦にまで持ち込みました。しかし、押し相撲で不安定なところがあり、横綱昇進はかなり難しそうです。ただ、若手が伸び悩んでいるので、貴景勝関が大関の地位を長く維持できる可能性はあると思います。角番の正代関は相撲内容が全体的によくなかったものの、何とか勝ち越して9勝6敗としました。まあ、照ノ富士関や朝乃山関との対戦がなかったことなど、恵まれた感もありましたが。

 その朝乃山関は、7勝4敗となったところで12日目から休場となりました。相撲協会の指針に反して外出していたとのことで、同様の問題を起こした阿炎関が3場所の出場停止処分でしたから、大関の朝乃山関は一度疑惑を否定していたことからも、それ以上の処分となることは確実でしょう。そうなると、朝乃山関は大関から陥落となります。朝乃山関は正統派の四つ相撲を取ることから、相撲協会でも報道関係者でも一般の愛好者でも、横綱候補として期待していた人は少なくなかったでしょうから、その意味でも衝撃は大きかったと思います。ただ、拳銃密輸と比較すると糾弾するほどの問題かな、とも思いますが。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック