新たな手法により推測される人類史における遺伝的混合

 新たな手法により人類史における遺伝的混合を推測した研究が、2021年度アメリカ自然人類学会総会(関連記事)で報告されました(Huerta-Sanchez et al., 2021)。この報告の要約はPDFファイルで読めます(P90)。Legofitは、人口集団で共有さそれる派生的アレル(対立遺伝子)で観察される頻度と、人口史の特定のモデルで予測される頻度との間の違いを最小化することにより、パラメータを推定します。これを改良したLegofit2は、より高速で正確なアルゴリズムを用いて、これらの予測される頻度を計算します。

 予備的な分析結果は、以前に報告されたパプアニューギニアの5言語族の70個体のゲノムに基づいています。これらの結果は、現生人類(Homo sapiens)との分岐後の、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)と種区分未定のホモ属であるデニソワ人(Denisovan)の共通祖先である「ネアンデルソヴァン(neandersovan)」と超古代型人類系統(ネアンデルタール人とデニソワ人と現生人類の共通祖先と分岐した人類系統)との混合と、現代パプア人の祖先とデニソワ人との混合を確認します。また、現生人類とネアンデルタール人との2回の混合も示され、それは、ヨーロッパ人とパプア人の共通祖先(つまり、非アフリカ系現代人の共通祖先)との早期の混合と、パプア人系統がヨーロッパ人系統と分岐した後の、パプア人祖先とネアンデルタール人との混合です。

 ネアンデルソヴァンと超古代型人類系統との混合の可能性は、すでに以前の研究で示されており(関連記事)、ネアンデルソヴァンからネアンデルタール人系統とデニソワ人系統に分岐した後に、ネアンデルタール人系統とデニソワ人系統がそれぞれ超古代型人類系統と混合した可能性も指摘されています(関連記事)。後期ホモ属で複雑な混合が起きていた可能性は高そうで、今後の研究の進展により、じっさいの混合史に少しずつ近づいていくのではないか、と期待されます。そのためには、この研究のように新たな手法の開発とともに、より多くの新たな古代DNAデータが必要となります。


参考文献:
Rogers AR, Sudoyo H, and Cox M.(2021): The population history of Indonesia and Melanesia as inferred by Legofit2. The 90th Annual Meeting of the AAPA.

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