『卑弥呼』第58話「埃国」
『ビッグコミックオリジナル』2021年3月20日号掲載分の感想です。前回は、出雲の神和(カンナギ)にして金砂(カナスナ)国の支配者である事代主(コトシロヌシ)からの、筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)との和議締結のために対決したい、との申し出を受けたヤノハが、万が一、自分が敗れても、倭を平らかにする大仕事は事代主に任せられる、と言ったところで終了しました。今回は、豊秋津島(トヨアキツシマ、本州を指すと思われます)の日下(ヒノモト)の国を目指すトメ将軍とミマアキが、埃国(エノクニ)に到着した場面から始まります。一行は埃国の中心地である阿岐(アキ)に近づきますが(現在の広島県でしょうか)、広大な干潟に守られているとはいえ、門番がいないことをトメ将軍は不審に思います。阿岐は、サヌ王(記紀の神武天皇と思われます)が7年間滞在した場所とされています。篝の跡に気づいた一行が近づくと、多数の焼死体が確認できました。トメ将軍は、吉備(キビ)の北の鬼国(キノクニ)は残虐な戦を好むという噂に言及します。ミマアキは2人の兵士とともに阿岐に入りますが、人の気配が全くありません。そこへ建物からツノヲと名乗る老人の男性が現れ、埃国を訪れた旅人のもてなしを王から命じられている、とミマアキたちに説明します。
ツノヲはその建物でトメ将軍とミマアキを歓待します。ツノヲは、埃国の王や民が鬼に襲われ、阿岐から避難した、と説明します。鬼とは鉄を狙う鬼国の戦人でしょうか、と問われたツノヲは、自分たちに製鉄技術がないのをいいことに襲撃してくる、戦人以上に恐ろしい鬼だ、と答えます。自分たちも筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)で鬼退治をしたことがあるが、所詮は人ではないか、とミマアキに問われたツノヲは、人なら見えるが鬼は見えず、干潟の多数の焼死体も鬼の仕業だ、と答えます。今晩はこの建物で休んでいただきたい、翌朝見送りに来る、と言ってツノヲは立ち去ります。しかし、トメ将軍とミマアキはツノヲの話が変だと考えて、寝所を変えようと考えます。夜のうちに出立しますか、と配下に問われたトメ将軍は、何も起きないかもしれないが、ツノヲの魂胆を見届けるために留まる、と答えます。その夜、烏の仮面を着けた者たちが集まり、トメ将軍一行がいるはずの建物を包囲し、呪文を唱えながら放火します。その指揮者がツノヲであることを離れた場所から確認したトメ将軍一行は、舟で立ち去ります。舟上であの呪文が何だったのか、ミマアキに問われたトメ将軍は、おそらく百鬼退散の呪文で、我々は鬼と思われたのだろう、と答えます。トメ将軍は、干潟の多数の焼死体に、刀や矢や槍の傷がなかったことを指摘します。鬼たちに呪い殺されたのか、とミマアキは推測し、トメ将軍は、あるいは埃国の王が民を焼けと命じたかもしれない、と推測します。
山社(ヤマト)では、ヤノハがイクメに、出雲のことを尋ねていました。天照大御神と、出雲が信仰する大穴牟遅(オオアナムヂ)という神とはどう違うのか、とヤノハに問われたイクメは、天照大御神は天と地の神、大穴牟遅は空と大地の神と答えます。出雲の社(後の出雲大社でしょうか)には大空の雲を表している大きな注連縄があり、天照大御神は伊弉諾(イザナギ)と伊弉弥(イザナミ)の子で、お二柱は最初に淤能碁志摩(オノロゴシマ)を産み、それが倭国になったが、出雲は少し特別な存在で、伊弉弥が身罷った黄泉の国のある場所と言われている、とイクメはヤノハに説明します。黄泉の国とは、天照大御神の弟である須佐之男(スサノオ)が治める根の国の入口だな、と言うヤノハに対してイクメは、出雲の言い伝えでは、八束水臣津野命(ヤツカミオミツヌノミコト)という神が四方から大地を引き出雲が生まれ、その神の志を継いだのが大穴牟遅神だ、と説明します。出雲の神をどう思うのか、ヤノハに問われたイクメは、大穴牟遅神とは、後に出雲の民に侵攻された新たな神ではないか、と答えます。しかしヤノハは、天照大御神の方が古いからといって、本物とは言い張れないだろう、と言います。出雲を都とする国を金砂(カナスナ)と呼ぶ理由をヤノハに問われたイクメは、広大な砂浜のある場所で、その砂には多量の鉄(カネ)が含まれているからだ、と答えます。川上にある金砂の山々には鉄の原石が眠っているのか、とヤノハに問われたイクメは、その鉄を狙って金砂侵略を繰り返しているのが吉備の北にある鬼国で、温羅(ウラ)と名乗る王がおり、韓(カラ、朝鮮半島)からきた戦人集団だ、と説明します。するとヤノハは、出雲はこれ以上、戦線を広げるつもりはないな、と推測します。山社の楼観では、ヤノハが弟のチカラオ(ナツハ)に、出雲の事代主に会うつもりだ、と決意を打ち明けます。心配そうなチカラオに対して、倭の泰平を事代主に託し、自分たちは姿を消す、とヤノハが言うところで今回は終了です。
今回は、本州でもおもに中国の情勢が描かれました。本州では出雲に続いて埃国が描かれましたが、干潟の多数の焼死体や鬼国の正体など謎が残り、それは今後明かされていくのではないか、と楽しみです。トメ将軍一行が日下に到達する話はもう少し先で描かれそうですが、鬼国と埃国や金砂国との争いに日下国がどう関わっているのか、サヌ王の子孫が治めているとされる日下国は現在どのような状況なのか、今後の展開と大きく関わってきそうなので、注目されます。ヤノハは事代主と会うと決めましたが、イクメから金砂国をめぐる情勢を聞き、事代主の意図をかなりの度推把握できたようです。それを踏まえたうえで、なおもヤノハは弟のチカラオとともに山社から逃亡しようと考えていますが、ヤノハが『三国志』の卑弥呼でしょうから、このまま山社に留まる可能性が高そうです(一時的に山社から去って復帰するかもしれませんが)。今後の山場はまずヤノハと事代主との面会(対決?)となりそうで、そこでヤノハの決意が変わるのか、注目されます。
ツノヲはその建物でトメ将軍とミマアキを歓待します。ツノヲは、埃国の王や民が鬼に襲われ、阿岐から避難した、と説明します。鬼とは鉄を狙う鬼国の戦人でしょうか、と問われたツノヲは、自分たちに製鉄技術がないのをいいことに襲撃してくる、戦人以上に恐ろしい鬼だ、と答えます。自分たちも筑紫島(ツクシノシマ、九州を指すと思われます)で鬼退治をしたことがあるが、所詮は人ではないか、とミマアキに問われたツノヲは、人なら見えるが鬼は見えず、干潟の多数の焼死体も鬼の仕業だ、と答えます。今晩はこの建物で休んでいただきたい、翌朝見送りに来る、と言ってツノヲは立ち去ります。しかし、トメ将軍とミマアキはツノヲの話が変だと考えて、寝所を変えようと考えます。夜のうちに出立しますか、と配下に問われたトメ将軍は、何も起きないかもしれないが、ツノヲの魂胆を見届けるために留まる、と答えます。その夜、烏の仮面を着けた者たちが集まり、トメ将軍一行がいるはずの建物を包囲し、呪文を唱えながら放火します。その指揮者がツノヲであることを離れた場所から確認したトメ将軍一行は、舟で立ち去ります。舟上であの呪文が何だったのか、ミマアキに問われたトメ将軍は、おそらく百鬼退散の呪文で、我々は鬼と思われたのだろう、と答えます。トメ将軍は、干潟の多数の焼死体に、刀や矢や槍の傷がなかったことを指摘します。鬼たちに呪い殺されたのか、とミマアキは推測し、トメ将軍は、あるいは埃国の王が民を焼けと命じたかもしれない、と推測します。
山社(ヤマト)では、ヤノハがイクメに、出雲のことを尋ねていました。天照大御神と、出雲が信仰する大穴牟遅(オオアナムヂ)という神とはどう違うのか、とヤノハに問われたイクメは、天照大御神は天と地の神、大穴牟遅は空と大地の神と答えます。出雲の社(後の出雲大社でしょうか)には大空の雲を表している大きな注連縄があり、天照大御神は伊弉諾(イザナギ)と伊弉弥(イザナミ)の子で、お二柱は最初に淤能碁志摩(オノロゴシマ)を産み、それが倭国になったが、出雲は少し特別な存在で、伊弉弥が身罷った黄泉の国のある場所と言われている、とイクメはヤノハに説明します。黄泉の国とは、天照大御神の弟である須佐之男(スサノオ)が治める根の国の入口だな、と言うヤノハに対してイクメは、出雲の言い伝えでは、八束水臣津野命(ヤツカミオミツヌノミコト)という神が四方から大地を引き出雲が生まれ、その神の志を継いだのが大穴牟遅神だ、と説明します。出雲の神をどう思うのか、ヤノハに問われたイクメは、大穴牟遅神とは、後に出雲の民に侵攻された新たな神ではないか、と答えます。しかしヤノハは、天照大御神の方が古いからといって、本物とは言い張れないだろう、と言います。出雲を都とする国を金砂(カナスナ)と呼ぶ理由をヤノハに問われたイクメは、広大な砂浜のある場所で、その砂には多量の鉄(カネ)が含まれているからだ、と答えます。川上にある金砂の山々には鉄の原石が眠っているのか、とヤノハに問われたイクメは、その鉄を狙って金砂侵略を繰り返しているのが吉備の北にある鬼国で、温羅(ウラ)と名乗る王がおり、韓(カラ、朝鮮半島)からきた戦人集団だ、と説明します。するとヤノハは、出雲はこれ以上、戦線を広げるつもりはないな、と推測します。山社の楼観では、ヤノハが弟のチカラオ(ナツハ)に、出雲の事代主に会うつもりだ、と決意を打ち明けます。心配そうなチカラオに対して、倭の泰平を事代主に託し、自分たちは姿を消す、とヤノハが言うところで今回は終了です。
今回は、本州でもおもに中国の情勢が描かれました。本州では出雲に続いて埃国が描かれましたが、干潟の多数の焼死体や鬼国の正体など謎が残り、それは今後明かされていくのではないか、と楽しみです。トメ将軍一行が日下に到達する話はもう少し先で描かれそうですが、鬼国と埃国や金砂国との争いに日下国がどう関わっているのか、サヌ王の子孫が治めているとされる日下国は現在どのような状況なのか、今後の展開と大きく関わってきそうなので、注目されます。ヤノハは事代主と会うと決めましたが、イクメから金砂国をめぐる情勢を聞き、事代主の意図をかなりの度推把握できたようです。それを踏まえたうえで、なおもヤノハは弟のチカラオとともに山社から逃亡しようと考えていますが、ヤノハが『三国志』の卑弥呼でしょうから、このまま山社に留まる可能性が高そうです(一時的に山社から去って復帰するかもしれませんが)。今後の山場はまずヤノハと事代主との面会(対決?)となりそうで、そこでヤノハの決意が変わるのか、注目されます。
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