『卑弥呼』第53話「呪われた夜 其壱」
『ビッグコミックオリジナル』2021年1月5日号掲載分の感想です。今回から、「天智と天武~新説・日本書紀~」というテーマではなく、新たに設定した「卑弥呼」というテーマに分類します。過去の本作関連の記事も「卑弥呼」に分類し直しました。前回は、ナツハがヤノハの前でヒルメからの策を思い出し、不敵な笑みを浮かべるところで終了しました。今回は、雷が鳴り響く夜に、山社(ヤマト)の楼観で日見子(ヒミコ)たるヤノハがテヅチ将軍とミマト将軍に指示を出している場面から始まります。テヅチ将軍は、邑々を巡り、広く兵を募って訓練するよう、指示されました。今は農閑期なので大勢の志願者が集まるだろうし、我が国の士気は高い、とテヅチ将軍は言います。ヤノハはテヅチ将軍に、おそらくは後の伊予と思われる五百木(イオキ)からの海賊対策として、訓練した兵をおもに海岸線に配備するよう、指示します。ミマト将軍は山社の山林の警固を任されます。その時、近くで落雷があったようです。この冬は建御雷神(タケミカヅチノカミ)の機嫌がいので、落雷による山火事が心配だ、というわけです。雷が鳴り響くなか、楼観の下でナツハはその様子を見ていました。
その頃、荒爪山(アラツメヤマ)の夜萬加(ヤマカ)にいるヒルメを、ウズメが訪ねていました。ヒルメはウズメに、犬を遣わして木簡を届けました。暈(クマ)の国にある「日の巫女」集団の学舎である種智院(シュチイン)に届く文の検閲は、ウズメの役割でした。ウズメはヒルメに謝罪します。ウズメがヤノハは本物の日見子と伝えただけで、ヒルメは手足を砕かれて追放されました。ヒルメは、ウズメの責任ではないと言い、自分が生きていると知りウズメが駆けつけてくれたことに感謝します。種智院は変わって戒律が緩くなった、とウズメから聞いたヒルメは、ヤノハという偽日見子のせいだ、と憤ります。しかし、ウズメはヤノハを真の日見子と信じており、まだヤノハを信じているのか、とヒルメはウズメを問い詰め、もう一度ヤノハが真の日見子なのか試してみないか、と提案します。ヒルメの提案を受け入れたウズメは、鳥子(トリコ)付近で枯草に火をつけます。
テヅチ将軍とミマト将軍に指示を与えた翌日、ヤノハはヌカデを楼観に呼び、暈を抜けて多禰(タネ、種子島でしょうか)に渡るよう、命じます。閼宗(アソ)で自分たちを襲撃したのは五百木と多禰の足軽で、五百木への対策はテヅチ将軍に任せたものの、多禰の真意が分からないので、多禰の王に会って自分に従うよう伝えてほしい、というわけです。海岸守備のためテヅチ将軍に半分の兵を預けたことに、山社の警備が手薄になる、とイクメは懸念を示します。しかしヤノハは、ナツハがいるので問題ない、と答えます。その時、ヤノハとイクメは山火事に気づき、ミマト将軍が兵を率いて火元に向かいます。荒爪山では、夕餉を運んできた民に、ヒルメが風向きを尋ねます。北から南への強風が吹いている、と民が返答すると、今宵こそヤノハにとって呪われた夜だ、とヒルメは喜びます。
山社の楼観では、火の手が山社に向かっていることをヤノハとイクメが懸念していました。ヤノハはイクメに、自分はこれから天の神と語らうので休むよう、命じます。なおも案じるイクメに、ミマト将軍なら必ず火を消し止める、とヤノハは言います。何かあれば起こすので、むしろ自分が眠っている間の指揮を頼みたい、とヤノハはイクメに伝えます。イクメが退出すると、犬や狼が吠え始めます。犬や狼を柵の近くに集めるな、とナツハに命じていたヤノハは苛立ちます。ナツハに楼観に上がってくるようヤノハは命じますが、返答はありません。ヤノハがナツハを探そうと楼観から下を見ていると、ナツハが背後からヤノハに襲いかかり、ヤノハを押し倒す、というところで今回は終了です。
今回は、ヒルメの策略によりヤノハが危機に陥るところまで描かれました。ヒルメの策略はまだ完全には明らかになっていませんが、山火事が山社を襲い、日見子たるヤノハの権威が失墜することを狙っているように思います。また、ナツハがヤノハを押し倒したのは、ヤノハを強姦することが目的と考えられます。祈祷女(イノリメ)は男との性交が堅く禁じられており、日見子もそうでしょうから、強姦にせよ男との交わりによりヤノハを日見子の地位から失脚させ、日見子の権威を失墜させたヤノハに民衆が激怒し、ヤノハを殺すよう画策しているのではないか、と思います。ヤノハはナツハを信用しており、その油断から危機に追い込まれたように見えますが、用心深いヤノハのことですから、何らかの対策があり、この危地を脱するのかもしれません。あるいは、また真の日見子だったモモソの霊(もしくはヤノハが想像するモモソ)が現れ、モモソの助言によりヤノハがこの危機的状況を切り抜けるのでしょうか。
ナツハはヤノハの弟のチカラオと思われますが、ナツハはそのことに気づいている様子をまったく見せないのに対して、ヤノハは気づいているようにも見えます。これが、自分を強姦しようとしているナツハに対するヤノハの切り札になるのかもしれません。あるいは、ヤノハはこの切り抜けるものの、外傷など何らかの大打撃を受け、そのため『三国志』に見えるように、ほとんど人と会わなくなったのかもしれません。今回は、ヤノハの危機的状況が描かれ、かなり盛り上がってきたように思うので、この危機的状況をヤノハがどう切り抜けるのか、次回が楽しみです。
その頃、荒爪山(アラツメヤマ)の夜萬加(ヤマカ)にいるヒルメを、ウズメが訪ねていました。ヒルメはウズメに、犬を遣わして木簡を届けました。暈(クマ)の国にある「日の巫女」集団の学舎である種智院(シュチイン)に届く文の検閲は、ウズメの役割でした。ウズメはヒルメに謝罪します。ウズメがヤノハは本物の日見子と伝えただけで、ヒルメは手足を砕かれて追放されました。ヒルメは、ウズメの責任ではないと言い、自分が生きていると知りウズメが駆けつけてくれたことに感謝します。種智院は変わって戒律が緩くなった、とウズメから聞いたヒルメは、ヤノハという偽日見子のせいだ、と憤ります。しかし、ウズメはヤノハを真の日見子と信じており、まだヤノハを信じているのか、とヒルメはウズメを問い詰め、もう一度ヤノハが真の日見子なのか試してみないか、と提案します。ヒルメの提案を受け入れたウズメは、鳥子(トリコ)付近で枯草に火をつけます。
テヅチ将軍とミマト将軍に指示を与えた翌日、ヤノハはヌカデを楼観に呼び、暈を抜けて多禰(タネ、種子島でしょうか)に渡るよう、命じます。閼宗(アソ)で自分たちを襲撃したのは五百木と多禰の足軽で、五百木への対策はテヅチ将軍に任せたものの、多禰の真意が分からないので、多禰の王に会って自分に従うよう伝えてほしい、というわけです。海岸守備のためテヅチ将軍に半分の兵を預けたことに、山社の警備が手薄になる、とイクメは懸念を示します。しかしヤノハは、ナツハがいるので問題ない、と答えます。その時、ヤノハとイクメは山火事に気づき、ミマト将軍が兵を率いて火元に向かいます。荒爪山では、夕餉を運んできた民に、ヒルメが風向きを尋ねます。北から南への強風が吹いている、と民が返答すると、今宵こそヤノハにとって呪われた夜だ、とヒルメは喜びます。
山社の楼観では、火の手が山社に向かっていることをヤノハとイクメが懸念していました。ヤノハはイクメに、自分はこれから天の神と語らうので休むよう、命じます。なおも案じるイクメに、ミマト将軍なら必ず火を消し止める、とヤノハは言います。何かあれば起こすので、むしろ自分が眠っている間の指揮を頼みたい、とヤノハはイクメに伝えます。イクメが退出すると、犬や狼が吠え始めます。犬や狼を柵の近くに集めるな、とナツハに命じていたヤノハは苛立ちます。ナツハに楼観に上がってくるようヤノハは命じますが、返答はありません。ヤノハがナツハを探そうと楼観から下を見ていると、ナツハが背後からヤノハに襲いかかり、ヤノハを押し倒す、というところで今回は終了です。
今回は、ヒルメの策略によりヤノハが危機に陥るところまで描かれました。ヒルメの策略はまだ完全には明らかになっていませんが、山火事が山社を襲い、日見子たるヤノハの権威が失墜することを狙っているように思います。また、ナツハがヤノハを押し倒したのは、ヤノハを強姦することが目的と考えられます。祈祷女(イノリメ)は男との性交が堅く禁じられており、日見子もそうでしょうから、強姦にせよ男との交わりによりヤノハを日見子の地位から失脚させ、日見子の権威を失墜させたヤノハに民衆が激怒し、ヤノハを殺すよう画策しているのではないか、と思います。ヤノハはナツハを信用しており、その油断から危機に追い込まれたように見えますが、用心深いヤノハのことですから、何らかの対策があり、この危地を脱するのかもしれません。あるいは、また真の日見子だったモモソの霊(もしくはヤノハが想像するモモソ)が現れ、モモソの助言によりヤノハがこの危機的状況を切り抜けるのでしょうか。
ナツハはヤノハの弟のチカラオと思われますが、ナツハはそのことに気づいている様子をまったく見せないのに対して、ヤノハは気づいているようにも見えます。これが、自分を強姦しようとしているナツハに対するヤノハの切り札になるのかもしれません。あるいは、ヤノハはこの切り抜けるものの、外傷など何らかの大打撃を受け、そのため『三国志』に見えるように、ほとんど人と会わなくなったのかもしれません。今回は、ヤノハの危機的状況が描かれ、かなり盛り上がってきたように思うので、この危機的状況をヤノハがどう切り抜けるのか、次回が楽しみです。
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