翼竜類の起源につながる恐竜祖先群
翼竜類の起源につながる恐竜祖先群についての研究(Ezcurra et al., 2020)が公表されました。翼竜類は動力飛行(羽ばたき飛行)を進化させた最初の脊椎動物で、中生代(約2億5200万~6600万年前)の陸上生態系における主要な進化的放散の一つを構成していましたが、その起源は19世紀以来、古生物学上の未解決の謎であり続けています。これらの飛行性爬虫類は、類縁の恐竜類を含む多種多様な爬虫類クレード(単系統群)に近縁と仮定されてきましたが、そうしたクレードと後期三畳紀の最古の明らかな翼竜類の間には、今なお大きな形態的相違が存在します。
この研究は、最近発見された保存状態の良好な頭蓋標本、壊れやすい頭蓋の骨(顎・頭蓋頂部・脳函)のマイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)スキャン、確実に関連づけられた頭部より後方の要素を用いて、走行性で非飛行性の恐竜祖先の一群であるラゲルペトン類(lagerpetid)が翼竜類の姉妹群であり、両者には骨格全体にわたって無数の共有派生形質が認められる、と明らかにしています。この知見は、最古の翼竜類とそれらに最も近縁な分類群との間の時間的空白および形態的相違を大幅に縮小すると同時に、翼竜類が主竜類の鳥類系統に属するという証拠を補強しています。
翼竜類の高度な感覚能力に関連する神経解剖学的特徴は、ラゲルペトン類ですでに存在しており、これは、そうした特徴が飛行より前に進化していたことを示しています。陸生の脊椎動物と飛行性の脊椎動物の間の正確な遷移はまだ明らかになっていませんが、これらの証拠は、空を征服し脊椎動物の進化において驚くべき形態機能的新機軸をもたらした翼竜類における、ボディープランの組み立ての最初の段階を示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:翼竜の起源をたどる
動力飛行を行った最初の脊椎動物である翼竜類に最も近い進化的近縁種は、ラゲルペトンという小型の恐竜に似た動物の分類群である可能性を明らかにした論文が、Nature に掲載される。この知見は、翼竜類の起源、特殊化したボディープランと飛行能力を研究するための新たな枠組みをもたらす。
翼竜類の起源をたどることは難しく、古生物学の未解決問題となっている。翼竜類は、恐竜を含むさまざまな爬虫類の近縁種だとする仮説が提起されているが、翼竜類以外の分類群と翼竜類を排他的に結び付ける納得のいく証拠は得られていない。今回の研究で、Martín Ezcurraたちの研究チームは、恐竜の前駆動物である2本足の爬虫類分類群であるラゲルペトンが翼竜類の姉妹分類群かもしれないと示唆している。
Ezcurraたちは、翼竜類とラゲルペトンの遺骨のマイクロCTスキャンと3D再構成を行って、解剖学的構造の類似点を明らかにした。ラゲルペトンは飛行できなかったが、その独自の特徴の一部(内耳の形状など)が翼竜類と同じであり、これが両者の関係に説得力を持たせている。また、ラゲルペトンには、翼竜類の高度な感覚能力に関連する脳の特徴が見られ、これらの特徴は飛行を行う以前に進化したことを示している。
この証拠は、脊椎動物の進化の中で最も驚くべき新機軸の1つである「空の征服」を実現した翼竜類の独自のボディープランの組み立ての初期段階を明らかにしたものである。陸上脊椎動物が飛行脊椎動物に変化した正確な過程はまだ分かっていないが、今回得られた知見は、最古の翼竜類とそれに最も近い近縁種との間に存在する時間的空白と解剖学的空白を小さくする。
古生物学:翼竜類の起源につながる空白を埋める謎めいた恐竜祖先群
Cover Story:飛行への道:初期の飛行性脊椎動物に最も近縁な動物
翼竜類は動力飛行(羽ばたき飛行)を進化させた最初の脊椎動物だが、その正確な進化的起源をたどるのはこれまで困難だった。今回M Ezcurraたちは、表紙の想像図で描かれているlxalerpeton polesinensisなどの、ラゲルペトン類(lagerpetid)と呼ばれる肢の長い華奢な体の動物の一群が翼竜類の姉妹群である可能性が非常に高いことを示して、この空白を埋めるのを助けている。著者たちは、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)と骨格の化石の3D再構築を用いることで、内耳の形をはじめ、ラゲルペトン類と翼竜類に共通する数々の特異な特徴を特定した。陸生の脊椎動物と飛行性の脊椎動物の間の正確な遷移はまだ分かっていないが、今回著者たちが集めた証拠は、翼竜類の解剖学的特徴の進化における最初の段階を明らかにしている。
参考文献:
Ezcurra MD. et al.(2020): Enigmatic dinosaur precursors bridge the gap to the origin of Pterosauria. Nature, 588, 7838, 445–449.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-3011-4
この研究は、最近発見された保存状態の良好な頭蓋標本、壊れやすい頭蓋の骨(顎・頭蓋頂部・脳函)のマイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)スキャン、確実に関連づけられた頭部より後方の要素を用いて、走行性で非飛行性の恐竜祖先の一群であるラゲルペトン類(lagerpetid)が翼竜類の姉妹群であり、両者には骨格全体にわたって無数の共有派生形質が認められる、と明らかにしています。この知見は、最古の翼竜類とそれらに最も近縁な分類群との間の時間的空白および形態的相違を大幅に縮小すると同時に、翼竜類が主竜類の鳥類系統に属するという証拠を補強しています。
翼竜類の高度な感覚能力に関連する神経解剖学的特徴は、ラゲルペトン類ですでに存在しており、これは、そうした特徴が飛行より前に進化していたことを示しています。陸生の脊椎動物と飛行性の脊椎動物の間の正確な遷移はまだ明らかになっていませんが、これらの証拠は、空を征服し脊椎動物の進化において驚くべき形態機能的新機軸をもたらした翼竜類における、ボディープランの組み立ての最初の段階を示しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
古生物学:翼竜の起源をたどる
動力飛行を行った最初の脊椎動物である翼竜類に最も近い進化的近縁種は、ラゲルペトンという小型の恐竜に似た動物の分類群である可能性を明らかにした論文が、Nature に掲載される。この知見は、翼竜類の起源、特殊化したボディープランと飛行能力を研究するための新たな枠組みをもたらす。
翼竜類の起源をたどることは難しく、古生物学の未解決問題となっている。翼竜類は、恐竜を含むさまざまな爬虫類の近縁種だとする仮説が提起されているが、翼竜類以外の分類群と翼竜類を排他的に結び付ける納得のいく証拠は得られていない。今回の研究で、Martín Ezcurraたちの研究チームは、恐竜の前駆動物である2本足の爬虫類分類群であるラゲルペトンが翼竜類の姉妹分類群かもしれないと示唆している。
Ezcurraたちは、翼竜類とラゲルペトンの遺骨のマイクロCTスキャンと3D再構成を行って、解剖学的構造の類似点を明らかにした。ラゲルペトンは飛行できなかったが、その独自の特徴の一部(内耳の形状など)が翼竜類と同じであり、これが両者の関係に説得力を持たせている。また、ラゲルペトンには、翼竜類の高度な感覚能力に関連する脳の特徴が見られ、これらの特徴は飛行を行う以前に進化したことを示している。
この証拠は、脊椎動物の進化の中で最も驚くべき新機軸の1つである「空の征服」を実現した翼竜類の独自のボディープランの組み立ての初期段階を明らかにしたものである。陸上脊椎動物が飛行脊椎動物に変化した正確な過程はまだ分かっていないが、今回得られた知見は、最古の翼竜類とそれに最も近い近縁種との間に存在する時間的空白と解剖学的空白を小さくする。
古生物学:翼竜類の起源につながる空白を埋める謎めいた恐竜祖先群
Cover Story:飛行への道:初期の飛行性脊椎動物に最も近縁な動物
翼竜類は動力飛行(羽ばたき飛行)を進化させた最初の脊椎動物だが、その正確な進化的起源をたどるのはこれまで困難だった。今回M Ezcurraたちは、表紙の想像図で描かれているlxalerpeton polesinensisなどの、ラゲルペトン類(lagerpetid)と呼ばれる肢の長い華奢な体の動物の一群が翼竜類の姉妹群である可能性が非常に高いことを示して、この空白を埋めるのを助けている。著者たちは、マイクロコンピューター断層撮影(マイクロCT)と骨格の化石の3D再構築を用いることで、内耳の形をはじめ、ラゲルペトン類と翼竜類に共通する数々の特異な特徴を特定した。陸生の脊椎動物と飛行性の脊椎動物の間の正確な遷移はまだ分かっていないが、今回著者たちが集めた証拠は、翼竜類の解剖学的特徴の進化における最初の段階を明らかにしている。
参考文献:
Ezcurra MD. et al.(2020): Enigmatic dinosaur precursors bridge the gap to the origin of Pterosauria. Nature, 588, 7838, 445–449.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-3011-4
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