ワタリガラスの認知パフォーマンス
ワタリガラスの認知パフォーマンスに関する研究(Pika et al., 2020)が公表されました。この研究は、人工飼育したワタリガラス(計8羽)を対象として、生後4・8・12・16ヶ月に一連の試験を実施し、認知技能を検証しました。認知技能の検査項目は、空間記憶、対象物の永続性(対象物が見えなくなっても存在し続けていると理解していること)、相対数の理解と足し算、実験実施者とのコミュニケーション能力と実験実施者から学習する能力などです。
この試験で、ワタリガラスの認知パフォーマンスは、生後4ヶ月から16ヶ月までほぼ同じ水準で推移しました。この結果は、ワタリガラスの認知技能が比較的急速に発達し、生後4ヶ月までにほぼ完成することを示唆しています。生後4ヶ月のワタリガラスは、親からの独立を強め、独自の生態学的環境と社会環境を発見し始めます。実験課題のパフォーマンスには個体差がありましたが、一般的に、ワタリガラスは足し算と相対数の理解に関する試験の成績が最もよく、空間記憶を調べる課題の成績が最も悪い、と明らかになりました。チンパンジー(106頭)とオランウータン(32頭)に同じ課題を行なわせた以前の研究で判明した、チンパンジーとオランウータンの認知遂行をワタリガラスと比較したところ、ワタリガラスの認知遂行行動は、空間記憶以外の項目で、オランウータンやチンパンジーにひじょうに近い、と明らかになりました。
これらの知見は、ワタリガラスが大型類人猿と同じように一般的な認知技能と高度な認知技能を発達させた、と推測できる証拠になっています。この研究は、ワタリガラスがこうした技能を発達させたのは、常に変化する環境での生活に対応するためだった、という仮説を提起しています。そうした環境では、ワタリガラスの生存と繁殖は、ワタリガラス間の協力と提携に依存しています。ただ、この研究は、対象のワタリガラスのパフォーマンスがワタリガラス全体の代表例であるとは限らない、と注意を喚起しています。ワタリガラスと大型類人猿の認知パフォーマンス発達パターンの違いは、両者の生活史の違いを反映した進化の所産でしょうが、ヒトでも同様のことが当てはまると思われます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
動物行動学:生後4か月のカラスの認知パフォーマンスは成体の大型類人猿に匹敵するかもしれない
ワタリガラスが現実世界をどれだけ理解しているのか、そして、他のワタリガラスとどのように交流するのかという点を検証するための実験課題によって、ワタリガラスの認知パフォーマンスが生後4か月までに成体の大型類人猿に近づくことが明らかになったと報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Simone Pikaたちの研究チームは、人工飼育したワタリガラス(計8羽)を対象として生後4か月、8か月、12か月、16か月に一連の試験を実施して、認知技能を検証した。認知技能の検査項目は、空間記憶、対象物の永続性(対象物が見えなくなっても存在し続けていると理解していること)、相対数の理解と足し算、実験実施者とのコミュニケーション能力と実験実施者から学習する能力などだった。
この試験で、ワタリガラスの認知パフォーマンスは、生後4か月から16か月までほぼ同じレベルで推移した。この結果は、ワタリガラスの認知技能が比較的急速に発達し、生後4か月までにほぼ完成することを示唆している。生後4か月のワタリガラスは、親からの独立を強め、独自の生態学的環境と社会環境を発見し始める。実験課題のパフォーマンスには個体差があったが、一般的に言って、ワタリガラスは、足し算と相対数の理解に関する試験の成績が最もよく、空間記憶を調べる課題の成績が最も悪かった。
チンパンジー(106頭)、オランウータン(32頭)に同じ課題を行わせた以前の研究で判明した、チンパンジーとオランウータンの認知遂行をワタリガラスと比較したところ、ワタリガラスの認知遂行行動は、空間記憶以外の項目で、オランウータンやチンパンジーに非常に近かった。
今回の研究によって得られた知見は、ワタリガラスが、大型類人猿と同じように、一般的な認知技能と高度な認知技能を発達させたと考えられることの証拠になっている。Pikaたちは、ワタリガラスがこうした技能を発達させたのは、常に変化する環境での生活に対応するためだったという仮説を提起している。そうした環境では、ワタリガラスの生存と繁殖は、ワタリガラス間の協力と提携に依存している。ただし、Pikaたちは、研究対象のワタリガラスのパフォーマンスがワタリガラス全体の代表例であるとは限らない点に注意を促している。
参考文献:
Pika S. et al.(2020): Ravens parallel great apes in physical and social cognitive skills. Scientific Reports, 10, 20617.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-77060-8
この試験で、ワタリガラスの認知パフォーマンスは、生後4ヶ月から16ヶ月までほぼ同じ水準で推移しました。この結果は、ワタリガラスの認知技能が比較的急速に発達し、生後4ヶ月までにほぼ完成することを示唆しています。生後4ヶ月のワタリガラスは、親からの独立を強め、独自の生態学的環境と社会環境を発見し始めます。実験課題のパフォーマンスには個体差がありましたが、一般的に、ワタリガラスは足し算と相対数の理解に関する試験の成績が最もよく、空間記憶を調べる課題の成績が最も悪い、と明らかになりました。チンパンジー(106頭)とオランウータン(32頭)に同じ課題を行なわせた以前の研究で判明した、チンパンジーとオランウータンの認知遂行をワタリガラスと比較したところ、ワタリガラスの認知遂行行動は、空間記憶以外の項目で、オランウータンやチンパンジーにひじょうに近い、と明らかになりました。
これらの知見は、ワタリガラスが大型類人猿と同じように一般的な認知技能と高度な認知技能を発達させた、と推測できる証拠になっています。この研究は、ワタリガラスがこうした技能を発達させたのは、常に変化する環境での生活に対応するためだった、という仮説を提起しています。そうした環境では、ワタリガラスの生存と繁殖は、ワタリガラス間の協力と提携に依存しています。ただ、この研究は、対象のワタリガラスのパフォーマンスがワタリガラス全体の代表例であるとは限らない、と注意を喚起しています。ワタリガラスと大型類人猿の認知パフォーマンス発達パターンの違いは、両者の生活史の違いを反映した進化の所産でしょうが、ヒトでも同様のことが当てはまると思われます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
動物行動学:生後4か月のカラスの認知パフォーマンスは成体の大型類人猿に匹敵するかもしれない
ワタリガラスが現実世界をどれだけ理解しているのか、そして、他のワタリガラスとどのように交流するのかという点を検証するための実験課題によって、ワタリガラスの認知パフォーマンスが生後4か月までに成体の大型類人猿に近づくことが明らかになったと報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。
今回、Simone Pikaたちの研究チームは、人工飼育したワタリガラス(計8羽)を対象として生後4か月、8か月、12か月、16か月に一連の試験を実施して、認知技能を検証した。認知技能の検査項目は、空間記憶、対象物の永続性(対象物が見えなくなっても存在し続けていると理解していること)、相対数の理解と足し算、実験実施者とのコミュニケーション能力と実験実施者から学習する能力などだった。
この試験で、ワタリガラスの認知パフォーマンスは、生後4か月から16か月までほぼ同じレベルで推移した。この結果は、ワタリガラスの認知技能が比較的急速に発達し、生後4か月までにほぼ完成することを示唆している。生後4か月のワタリガラスは、親からの独立を強め、独自の生態学的環境と社会環境を発見し始める。実験課題のパフォーマンスには個体差があったが、一般的に言って、ワタリガラスは、足し算と相対数の理解に関する試験の成績が最もよく、空間記憶を調べる課題の成績が最も悪かった。
チンパンジー(106頭)、オランウータン(32頭)に同じ課題を行わせた以前の研究で判明した、チンパンジーとオランウータンの認知遂行をワタリガラスと比較したところ、ワタリガラスの認知遂行行動は、空間記憶以外の項目で、オランウータンやチンパンジーに非常に近かった。
今回の研究によって得られた知見は、ワタリガラスが、大型類人猿と同じように、一般的な認知技能と高度な認知技能を発達させたと考えられることの証拠になっている。Pikaたちは、ワタリガラスがこうした技能を発達させたのは、常に変化する環境での生活に対応するためだったという仮説を提起している。そうした環境では、ワタリガラスの生存と繁殖は、ワタリガラス間の協力と提携に依存している。ただし、Pikaたちは、研究対象のワタリガラスのパフォーマンスがワタリガラス全体の代表例であるとは限らない点に注意を促している。
参考文献:
Pika S. et al.(2020): Ravens parallel great apes in physical and social cognitive skills. Scientific Reports, 10, 20617.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-77060-8
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