避難させたカメの生存可能性と関連するゲノム多様性
避難させたカメの生存可能性とゲノム多様性に関する研究(Scott et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。ヒトの活動や気候変動のために、記録的に多くの生物種が絶滅の危機にさらされており、第六の大量絶滅が進行中とも言われる現在、世界的な課題として多数の保護の取り組みが行なわれています。絶滅に瀕している生物種を保護するための一つの方法として、絶滅に瀕している植物や動物の個体を、局地的に絶滅してしまったか、あるいは減少しつつある地域から、増加を促進するような新たな地域へと移殖する、というものがあります。この方法はますます一般的になりつつありますが、長期にわたり成功することが極めて少ないため、多くの場合は最終手段として取っておかれています。
この分野で現在進行中の議論は、このような取り組みが、環境が類似した地域にいる個体を選ぶ場合、遺伝的に近い対象個体群から選ぶ場合、あるいは全体的な遺伝的多様性に焦点を当てて選ぶ場合の、いずれが最も成功するのか、というものです。これらの選択のための仮説を検証するため、この研究は、アメリカ合衆国ネバダ州にあるサバクガメ保護センターの移殖場所に移された、カリフォルニア州のモハーヴェ砂漠に生息し、多くはこれまでにペットとして捕獲された、サバクゴファーガメ(Gopherus agassizii)の長期データセットを利用しました。
この研究は、避難させられて20年間に生存したか死亡した166匹のサバクゴファーガメのゲノムデータを分析し、地理的距離や遺伝的類似性はいずれも移殖後の生存に影響しない、と見いだしました。その代わり、生存成功の最も強い予測因子はヘテロ接合性であり、ゲノム多様性の最も高い個体が、そうでない個体よりもはるかに生存率が高い、と明らかになりました。こうした結果に見られた生存率上昇の背景にある理由を理解するためには、さらなる研究が必要と指摘されていますが、この新たな知見は、現在行なわれている移殖の取り組みの改善方法を示唆するものです。
参考文献:
Scott PA. et al.(2020): Individual heterozygosity predicts translocation success in threatened desert tortoises. Science, 370, 6520, 1086–1089.
https://doi.org/10.1126/science.abb0421
この分野で現在進行中の議論は、このような取り組みが、環境が類似した地域にいる個体を選ぶ場合、遺伝的に近い対象個体群から選ぶ場合、あるいは全体的な遺伝的多様性に焦点を当てて選ぶ場合の、いずれが最も成功するのか、というものです。これらの選択のための仮説を検証するため、この研究は、アメリカ合衆国ネバダ州にあるサバクガメ保護センターの移殖場所に移された、カリフォルニア州のモハーヴェ砂漠に生息し、多くはこれまでにペットとして捕獲された、サバクゴファーガメ(Gopherus agassizii)の長期データセットを利用しました。
この研究は、避難させられて20年間に生存したか死亡した166匹のサバクゴファーガメのゲノムデータを分析し、地理的距離や遺伝的類似性はいずれも移殖後の生存に影響しない、と見いだしました。その代わり、生存成功の最も強い予測因子はヘテロ接合性であり、ゲノム多様性の最も高い個体が、そうでない個体よりもはるかに生存率が高い、と明らかになりました。こうした結果に見られた生存率上昇の背景にある理由を理解するためには、さらなる研究が必要と指摘されていますが、この新たな知見は、現在行なわれている移殖の取り組みの改善方法を示唆するものです。
参考文献:
Scott PA. et al.(2020): Individual heterozygosity predicts translocation success in threatened desert tortoises. Science, 370, 6520, 1086–1089.
https://doi.org/10.1126/science.abb0421
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