14世紀のポーランドにおける人為的な地域生態系の変化
14世紀のポーランドにおける人為的な地域生態系の変化に関する研究(Lamentowicz et al., 2020)が公表されました。この研究は、ポーランド西部のワグフ(Łagów)村近くの自然保護区であるポースキワグ(Pawski Ług)で、異なる泥炭層に含まれる植物と花粉の組成の違いを分析しました。ワグフ村は13世紀初頭に開拓され、1350年に聖ヨハネ騎士団が入植しました。この研究は、さまざまな泥炭層の組成を分析することにより、それぞれの層が形成された時に存在した条件を推測しました。より古い時代の深い層からブナの木やシデの木やスイレンが見つかったので、聖ヨハネ騎士団が入植する前のポースキワグは、原生林に囲まれた湿地だったと結論づけられました。また、泥炭には少量の木炭が含まれていたため、当時この地域に居住していたスラブ系の部族が定期的に原生林の小規模な野焼きをしていた、と示唆されました。
聖ヨハネ騎士団の下で、大部分の土地は農業労働者に与えられ、農業が行なわれていました。こうした分析から、この時代の泥炭において、穀物の含有量が増加するにつれてシデの含有量が減少した、と明らかになりました。これは、森林を破壊する活動が、湿地の周囲での耕作地や牧草地の確立につながったことを示しています。この研究は、森林破壊がポースキワグの地下水位に影響を与えた可能性を指摘します。また、ヨーロッパアカマツが増えたことは、この樹木種の再定着を示しています。その結果として、土壌の酸性化が進み、ミズゴケが生育するようになり、生息地の酸性化と泥炭の形成が促進されました。これらの知見は、部族社会から封建社会へ移行したワグフの経済的変容が、地域生態系に直接的かつ著しい影響を与えたことを示している、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
考古学:14世紀の部族社会から封建社会への移行に伴う生活の変化が地域生態系に及ぼした影響
14世紀のポーランドのワグフで起こった部族社会から封建社会への移行は、地域の生態系に著しい影響を与えたことを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。この知見は、過去に人間社会と経済に生じた変化がどのように地域環境を変えたのかを実証している。
今回、Mariusz Lamentowiczたちの研究チームは、ポーランド西部のワグフ村近くの自然保護区であるPawski Ługで、異なる泥炭層に含まれる植物と花粉の組成の違いを分析した。ワグフは13世紀初頭に開拓され、紀元1350年に聖ヨハネ騎士団が入植した。
Lamentowiczたちは、さまざまな泥炭層の組成を分析することによって、それぞれの層が形成された時に存在した条件に関する結論を導き出すことができた。Lamentowiczたちは、より古い時代の深い層からブナの木、シデの木、スイレンが見つかったことを踏まえて、ヨハネ騎士団が入植する前のPawski Ługは、原生林に囲まれた湿地だったと結論付けた。また、泥炭には少量の木炭が含まれていたため、当時この地域に居住していたスラブ系の部族が定期的に原生林の小規模な野焼きをしていたことが示唆された。
聖ヨハネ騎士団の下で、大部分の土地は農業労働者に与えられ、農業が行われていた。今回の分析から、この時代の泥炭において、穀物の含有量が増加するにつれてシデの含有量が減少したことが明らかになった。これは、森林を破壊する活動が、湿地の周囲での耕作地や牧草地の確立につながったことを示している。Lamentowiczたちは、森林破壊がPawski Ługの地下水位に影響を与えた可能性があるとする見解を示している。また、ヨーロッパアカマツが増えたことは、この樹木種の再定着を示している。その結果として、土壌の酸性化が進み、ミズゴケが生育するようになり、生息地の酸性化と泥炭の形成が促進された。
以上の知見は、部族社会から封建社会へ移行したワグフの経済的変容が地域生態系に直接的かつ著しい影響を与えたことを示している。
参考文献:
Lamentowicz M. et al.(2020): How Joannites’ economy eradicated primeval forest and created anthroecosystems in medieval Central Europe. Scientific Reports, 10, 18775.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-75692-4
聖ヨハネ騎士団の下で、大部分の土地は農業労働者に与えられ、農業が行なわれていました。こうした分析から、この時代の泥炭において、穀物の含有量が増加するにつれてシデの含有量が減少した、と明らかになりました。これは、森林を破壊する活動が、湿地の周囲での耕作地や牧草地の確立につながったことを示しています。この研究は、森林破壊がポースキワグの地下水位に影響を与えた可能性を指摘します。また、ヨーロッパアカマツが増えたことは、この樹木種の再定着を示しています。その結果として、土壌の酸性化が進み、ミズゴケが生育するようになり、生息地の酸性化と泥炭の形成が促進されました。これらの知見は、部族社会から封建社会へ移行したワグフの経済的変容が、地域生態系に直接的かつ著しい影響を与えたことを示している、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
考古学:14世紀の部族社会から封建社会への移行に伴う生活の変化が地域生態系に及ぼした影響
14世紀のポーランドのワグフで起こった部族社会から封建社会への移行は、地域の生態系に著しい影響を与えたことを明らかにした論文が、Scientific Reports に掲載される。この知見は、過去に人間社会と経済に生じた変化がどのように地域環境を変えたのかを実証している。
今回、Mariusz Lamentowiczたちの研究チームは、ポーランド西部のワグフ村近くの自然保護区であるPawski Ługで、異なる泥炭層に含まれる植物と花粉の組成の違いを分析した。ワグフは13世紀初頭に開拓され、紀元1350年に聖ヨハネ騎士団が入植した。
Lamentowiczたちは、さまざまな泥炭層の組成を分析することによって、それぞれの層が形成された時に存在した条件に関する結論を導き出すことができた。Lamentowiczたちは、より古い時代の深い層からブナの木、シデの木、スイレンが見つかったことを踏まえて、ヨハネ騎士団が入植する前のPawski Ługは、原生林に囲まれた湿地だったと結論付けた。また、泥炭には少量の木炭が含まれていたため、当時この地域に居住していたスラブ系の部族が定期的に原生林の小規模な野焼きをしていたことが示唆された。
聖ヨハネ騎士団の下で、大部分の土地は農業労働者に与えられ、農業が行われていた。今回の分析から、この時代の泥炭において、穀物の含有量が増加するにつれてシデの含有量が減少したことが明らかになった。これは、森林を破壊する活動が、湿地の周囲での耕作地や牧草地の確立につながったことを示している。Lamentowiczたちは、森林破壊がPawski Ługの地下水位に影響を与えた可能性があるとする見解を示している。また、ヨーロッパアカマツが増えたことは、この樹木種の再定着を示している。その結果として、土壌の酸性化が進み、ミズゴケが生育するようになり、生息地の酸性化と泥炭の形成が促進された。
以上の知見は、部族社会から封建社会へ移行したワグフの経済的変容が地域生態系に直接的かつ著しい影響を与えたことを示している。
参考文献:
Lamentowicz M. et al.(2020): How Joannites’ economy eradicated primeval forest and created anthroecosystems in medieval Central Europe. Scientific Reports, 10, 18775.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-75692-4
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