デマを流すのは低コストで否定するのは高コスト

 デマを流すのは低コストである一方、デマを否定するのは高コストである、という非対称性は人間社会の嫌な真理です。もちろん、知識・情報が足りず、情報判断力が低いため、真実と確信して結果的にデマを流す人もいるでしょうが、常習犯のように次から次へとデマを流す人の中には、デマと知っているか、真偽や根拠が曖昧だと理解していながら、騙せる奴(いわゆる情弱)だけ騙せればよいとか、検証しようとする人間を疲弊させてやりたいとばかりに、この非対称性を利用している輩もいるのではないか、と考えたくなります。もちろん、デマを流す人間の意図というか内面を断定することはきわめて困難ですが。

 私がずっとアメリカ合衆国のトランプ大統領(関連記事)をまったく支持しなかったのは、その古い日本観に対する警戒もありますが、騙せる奴だけ騙せればよい、と考えているとしか思えないような発言が絶えないことも大きく、デマを流すのは低コストである一方、デマを否定するのは高コストである、という非対称性をトランプ大統領は悪用しまくった、と認識しています。過去に、この非対称性を利用して次から次へと真偽や根拠が曖昧な話やデマを流す輩と対応した経験から、私はこうした輩を心底嫌っています。

 私がやり取りする話題は人類進化史関連が多く、最近はあまり意欲が湧かないのでやり取りは少なくなっていますが、以前のやり取りで、現代人のミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプログループ(mtHg)では、アフリカ集団よりもアジア南東部集団の方がずっと多様だ、と言い張っていた輩がいました(関連記事)。その根拠は、アフリカにはほぼmtHg-Lしかいないのに、アジア南東部はもっと多様だ、というものです。じっさい、たとえば現代ミャンマー人のmtHgはA・B・C・D・F・Uなど多様です。しかし、上記の記事で述べましたが、これは字面だけを見ての誤解です。この点に関しては何度か説明しましたが、その輩はついに自分の主張を変えませんでした。どうも、本気で信じているというよりは、騙せる奴だけ騙せればよいと考えているのではないか、と私はやり取りの途中から推測するようになりましたが、もちろんその輩の真意を断定できるわけではありません。

 同じように、騙せる奴だけ騙せればよい、と考えているように思われる人物として、アイヌと「縄文人」との関係の否定に熱心な元北海道議員の小野寺まさる(秀)氏がいます(関連記事)。小野寺氏は議員時代に、「アイヌの方々は縄文人の末裔ではないということを確認したくて」北海道庁の幹部職員に北海道議会で質問していますが、幹部職員が「アイヌの人々は、縄文の人々の単純な子孫ではないとする学説が有力」と答弁したところ、「単純な子孫ではないということで、関係ないということだと思います」と述べており、これも、小野寺氏が騙せる奴だけ騙せればよい、と考えているからではないか、と私は推測しています。

 騙せる奴だけ騙せればよい、とは考えていなかったようですが、次から次へと真偽や根拠が曖昧な私見を繰り返し述べ、ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の染色体数は48本で、現代人(Homo sapiens)の染色体数が46本になったのは、ネアンデルタール人系統と分岐した後だった、と主張する輩とのやり取りもありました。これも結果的には、デマを流すのは低コストである一方、デマを否定するのは高コストである、という非対称性の事例だと思います。以前述べたように、ネアンデルタール人と現生人類の最終共通祖先の染色体数は46本だった可能性がきわめて高い、と考えるべきでしょう(関連記事)。世の中には詐欺師や扇動者としての才能に特化した人もいて、社会的に「成功」する人もいるので、常に見抜くのは困難ですが、私もできるだけ見抜けるよう、知見を高めていかねばなりません。

この記事へのコメント

チェンジ
2020年11月10日 06:02
本来なら続きで書くのが良いのですが、今回の話無視できない。今のまま終わらせるとまさにデマをまき散らしたとなるので書いて起きたと。

オアセのハプロNOじゃないです。K2A*です。同じじゃねーかってならないのが分かってない人が多いってのが、L3を見て思いました。

NOとK2Aは同じだとずっと私自身が思っていたのですが、NOってK2Aの孫系統なんですね。間に子供すらいる。

ウスチイシムも入れてオアセとウスチイシムのYハプロ東アジア人にどう見ても繋がっていませんね。

過去に西方にCやKが見つかるけど、C1A2以外すべて絶滅したという事かと。しかもC1A2後発です。

北方ルートのエピデンス発見と言うよりは、Kの誕生が東南アジアなのでは?って研究へのちょっっぴり反論になるかな?とは思います。

この大半滅びた系統の集団が基底部ユーラシア系統じゃないか?と見てる人もいます。
チェンジ
2020年11月10日 18:02
> 2015年06月24日ヨーロッパにおけるネアンデルタール人と初期現生人類との交雑(追記有)

こちらの記事についてコメントした内容と繋がっています。今回の記事を読んだ読者さんにはちんぷんかんぷんな事コメントしてしまいした。そのため分かりやすくするために追記しています。

言い訳させてもらうと、管理人さんに過去mtDNAで意見交換した人と同一人物と誤解されてないか?と思ってしまったため慌ててコメントしたためです。冷静になって考えてみると、こっちの記事にコメントするのはおかしいだろ?と思い直したため分かりにくい部分を解消するため追記しました。

本当に、焦って変な投稿して申し訳ありません。
管理人
2020年11月11日 02:57
基底部ユーラシア人については、起源地といつどのように拡散したのかなど、まだよく分かりませんが、現時点では、26000年前頃のコーカサスの個体が、基底部ユーラシア人の遺伝的影響が確認されている最古の個体のようです。
チェンジ
2020年11月11日 06:40
> 26000年前頃のコーカサスの個体

その記事見ましたよ。考古学的証拠単純には軽視してるわけじゃないのですが、基本遺伝子が先です。ただ根拠の補強としてはバリバリに重視しています。

確かオアセのものと石器体系が古いもので似ているとあったような。勘違いなら申し訳ありません。

ハプロを重視してるわけじゃないんですよ。私はハプロの問題についてかなり敏感だと思います。ミトコンドリアイブの勘違いってのも良く分かってますし。ただの母系直系が1人の女性になるってだけで、息子を通じて血を残す母も当然いるわけですから。

遺伝の多数のラインがあるものすごく狭い1本を選んでるだけなのがY染色体とmtハプロの正体だと思います。

だが、東南アジア説(mtDNAL3とは違いますからね。私もあれは強引すぎて批判的です。)の人に勇気づけられた部分があるのですが、旧石器時代の遺伝子において拡散経路をたどるって見方ならmtよりも変異が豊富なYハプロはかなり有効だと言うのを見たのがあります。私もそれは思います。

まあただ、基底部についてYハプロからとやかく言いすぎるのはまずいとは思ってはいます。管理人さんがちょっと前に書いたネアンの東西の差から思ったほど大きな影響はなかったって点であまり重要じゃないとは思ってるので。
チェンジ
2020年11月11日 07:13
あ、基底部ユーラシア人ってネアンデルタールととの混合前の分岐でしたね。

アジアとの分岐前の集団ってだけじゃないから、K2A*の集団がそれにあたるわけがないですね…。どうやって頑張っても分岐前にK2Aが生まれるのは無いですよね。

東南アジア説では、ハプロとしてはCD、FTの集団が分岐したとなっています。Dは多分ないですが、基本Cですね。当然オアセの個体は矛盾してるように見えますが、まあこれから続く東南アジア拡散の先行集団が失敗した例と適当に見ています。

まあ東南アジアFはおいておいてもK誕生説が間違いないから、分かりやすいその反例となりますね。どっちにしろ石器の共通性が勘違いだった気もします。

核DNAは基底部ユーラシアがすっきりしたら確かに有効ですね。この点は私も古すぎる核DNAつかえねーって思ってましたが、それは多分このせいですね。
チェンジ
2020年11月11日 07:16
> 東南アジアFはおいておいてもK誕生説が間違いないから

度々申し訳ありません、これも誤解受けますね。

東南アジアFはおいておいてもK誕生説が間違いないからー>東南アジア説拡大説では、FはおいておいてもK誕生説が間違いないから

こうです。前なら東南アジアK誕生が確定の事実だと勘違いされてしまいます。元記事に戻すとデマを気を付けるって大切ですね。
管理人
2020年11月11日 16:49
私は根拠として石器を提示していませんし、「遺伝的影響が確認されている」と述べているわけですが。元ネタ2年前に投稿された査読前論文で、その後定期的に確認しているものの、まだ査読誌に掲載されていないようなので、大きく修正されるかもしれない、と予想してまだ当ブログでは取り上げていません。そもそも、遺伝的な仮定的存在であるゴースト集団から実際の個体・集団への影響に関して、石器の類似性を根拠にするという発想がありませんでした。

複数の想定を提示したことに対して変化と受け止められたことや、徳島県民の遺伝的構成で私の意図とは異なる見解を決めつけられたことなどに対して、わざわざ説明したこともあり、貴殿とのやり取りは気が進みません。今後コメントは他の場所でお願いします。このコメントにも返信不要です。
チェンジ
2020年11月11日 18:07
> このコメントにも返信不要です。

こうあったのですが、「今後コメントは他の場所でお願いします。」この意味が良く分からないのでこれはまずいと思って書いています。

今後このサイトの記事にコメントするな、でしょうか?

気分を害してるというわけじゃないです。何よりこのサイトの熱心な読者なので、コメントはもっと深く管理人さんの考えを知りたいとした部分があり、そのやり取りが負担になると言うのなら禁止されてしまう事に特に不快感もありません。

ただはっきり何を言われたのか?分からないと今後またやってしまいそうなので。

> 遺伝的な仮定的存在であるゴースト集団から実際の個体・集団への影響に関して、石器の類似性を根拠にするという発想がありませんでした。

これですね、私が読んだ東南アジア拡大説の内容の勘違いだと思います。またいずれまとめて読み直したいと思ってますが、基底部ユーラシアは欧州人に影響を与えた仮定集団なので、絶滅した集団がそうであるわけがないと後で気が付きました。大した影響じゃなかったという事が分かったので、その程度なら絶滅集団もその1つじゃないか?と勘違いを重ねてしまいました。

ただし、基底部ユーラシアじゃなくて、西方の絶滅集団が使っていただろう石器が東アジアに伝播したのではないか?と言う想定は確かに、管理人さんの記事の内容を拡大解釈して想像しました。その点も唖然という事ならまあなんとも言えません…。

確認のためコメントしたのは、こりゃ確かに自分が相手でもやり取りしたくないと思ったので…。

勘違いや誤解がちょこちょこはいって、そこをさらに推測に推測を重ねて持論を語られたらそりゃたまらんとなります。今回のやり取り申し訳なさで自己嫌悪が湧いています…。
管理人
2020年11月11日 18:24
もう説明が面倒なので率直に言うと、当ブログへのコメントは控えていただきたい、ということです。

私の文章も明快とは言えないところが少なからずあるとは思いますが、たびたび私の意図と反したりずれたりするような解釈で貴殿には疑問を呈されてきた、と私は認識しています。

無料ブログでその都度対応して説明するのは割に合わないのでやりたくない、というのが本音です。
管理人
2020年11月11日 18:27
言い忘れましたが、上記の私のコメントへの返信は不要です。
チェンジ
2020年11月11日 18:35
最後のコメントになるかもしれないので、意味不明で終わってしまうので問題点をすっきりさせておきます。

オアセのものも含まれていたツリーがあったと思うのですが、パチョキロ遺跡のものとmtDNAが近縁というのは正しいと後で記事を読み直して分かりました。これを核DNAが近いと勘違いして記憶していたので、そこからつなげてしまいました。

後、オアセとパチョキロが近いのはNなので、ちょっとここも大きな勘違いしてるかもしれません。確かMもあったはずなのでかなり雑な事書いてしました。

基底部ユーラシア人が重なったのは勘違いによる全く偶然です。おそらく読み間違いだろうと思っています。

私が想定してるのはあくまで欧州の絶滅系統のコーカサスの2万年以上前の集団tの関連性です。

何かしらつながりがあるなら、核DNAと勘違いでしたが、mtDNAだけでも伝播としてはありうるとは思っています。ウスチイシムとオアセが同じハプロなのでつながりがあると見ています。

ウスチイシムとコーカサス繋がらないじゃないか?が苦しいのですけどね。
チェンジ
2020年11月11日 18:37
> 言い忘れましたが、上記の私のコメントへの返信は不要です。

了解しました。今後自粛と言う形で全コメント控えます。自分でも自己嫌悪になってるので。
チェンジ
2020年11月12日 07:27
最後と書いておいて本当に申し訳ありません。やはり基底ユーラシア人は読み間違いではありませんでした。

英語のウィキに
However, Oase shared equal alleles with Mesolithic Europeans and East Eurasians suggesting non pre LGM-European admixture in modern Europeans, part of it being from the Basal Eurasian ancestry that was carried to Europe by Anatolian farmers and Yamnaya pastoralists.

こういった文章があります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4537386/
これがもとになった論文です。

ただウスチイシムの個体には基底ユーラシア人が含まれてないのとの事なので、k2A*と言うハプロの集団が持っていたものじゃなくて、多分欧州移住のオアセ個体がどこかで混血したものだろうと推測しています。

返信は求めていません。ちょっと雑に話をしてしまったためその罪滅ぼしのような気持で書いています。決して管理人さんが間違ってるんだって意味じゃないです。まだまだ良く分からないことだらけだとしてくれると助かります。
管理人
2020年11月12日 15:36
それは、現代ヨーロッパ人は部分的に基底部ユーラシア人系統に由来し、ヨーロッパに基底部ユーラシア人系統を持ち込んだのはアナトリア半島農耕民とヤムナヤ牧畜民集団と言っているだけで、元論文も、Oase 1とヨーロッパ集団やアジア東部集団やアメリカ大陸先住民集団との遺伝的近縁性の比較において、基底部ユーラシア人系統の影響を受けていない旧石器時代と中石器時代のヨーロッパ人を用いた、と説明しているにすぎず、Oase 1が基底部ユーラシア人系統を有していると主張しているわけではありません。

貴殿とやり取りをしていると、わざわざこうした本来は不要な説明まですることになるので、貴殿とは金輪際やり取りをしたくない、というのが私の率直な気持ちです。本当に、もう二度と当ブログに現れないでください。
チェンジ
2020年12月27日 18:54
今年のうちに片づけておきたいので今度こそ最後として締めておきます。間をあけたのは反射的に書き込みしたわけじゃないと分かってもらうためで、自制心が働いたうえでの判断だと考えてください。よってずるずるまた書き込みしようって気は全くないです。安心してもらうために私もそれなりに負担になる部分がありやめておきたいと考えています。えらい高いレベルを要求されると感じていますが、それに対する否定的な気持ちは無いです。読者として管理人さんの負担になるようなことはしたくないのもあります。

さて、直前に書いたものは英文を誤訳しました。別の論文で見たら管理人さんの言う通りなので特に何も言うことはないと終わっておきました。英文ゆえにあまり英語力が高くないので誤訳した全くの勘違いです。

ただ、基底ユーラシアはどうもそうじゃないです。中東人に多く含まれる基底ユーラシアと言う仮定集団は、アフリカにいた集団じゃないのか?と言う推論があり、そこから実際のユーラシアの基底集団はウスチイシムなどに広まった絶滅系統の集団じゃないの?って問題提起で、言葉の使い方が一般的じゃないのは間違いないです。

要するに私が最初使ったのは私はこの絶滅系統がIUPを拡散させた集団だろうと見てるから、そのままその文章のまま基底ユーラシア?なんて使ってしまったわけです。ただ私はハプログループC1Aの集団の片割れであるC1A1が北方ルートでアジアに来た可能性も考えていた、そのどちらかの欧州の初期系統がIUPの担い手ではないか?と見ていて、これは要するに後のアジア集団にはほとんど遺伝的に寄与してないと見ています。

アジア人の北方ルートはあったが、遺伝的な影響は0に近いと見ています。

人によってはNO系であるためアジア人の父系の祖先じゃないのか?って見方もありますが。NO*であり、NOの下位系統なので、直接の祖先ではないです。ただNO全体の集団としてアジアに来たのじゃないか?なら私は東南アジアからNOが広がったと見てるので、インドから中東に行った集団が北方ルートに進んだと見てて、アジア人の父系NOは東南アジアから直接北上しただけじゃないか?と見ていて、ウスチイシムの系統とは何の関係もないと見ています。

将来何か分かるまでもう何もわからないと見ています。いつかのそのため、とりあえず中途半端になってしまった言及を今年のうちに締めて終わっておこうと思って書きました。
管理人
2020年12月28日 03:22
もう一度だけ言っておきます。

貴殿とは金輪際やり取りをしたくない、というのが私の率直な気持ちです。本当に、もう二度と当ブログに現れないでください。

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