イタリア北東部の後期ネアンデルタール人の歯
イタリア北東部の後期ネアンデルタール人(Homo neanderthalensis)の歯に関する研究(Romandini et al., 2020)が公表されました。現生人類(Homo sapiens)のヨーロッパへの到来、現生人類とネアンデルタール人との潜在的な相互作用、4万年前頃のネアンデルタール人の絶滅(関連記事)の根底にある生物文化的過程に関する理解は、中部旧石器時代から上部旧石器時代の移行期における人類遺骸の不均質な分布により妨げられています。
57000~29000年前頃となる海洋酸素同位体ステージ(MIS)3におけるイタリア半島の人類遺骸は、おもに45000~40000年前頃のネアンデルタール人と現生人類のものがわずかに発見されています。初期の人類遺骸では、イタリア北部のフマネ洞窟(Grotta di Fumane)のA11層とA9層(47600年以上前)ではネアンデルタール人の歯が、リパロタグリエント(Riparo Tagliente)では、36層で年代不明のネアンデルタール人の歯が見つかっています。より新しい人類遺骸では、カヴァッロ洞窟(Grotta del Cavallo)において、ネアンデルタール人の上顎第一乳臼歯(45000年前頃)、ウルツィアン層の2個の現生人類の乳歯の小臼歯(関連記事)が発見されています。リパロボンブリーニ(Riparo Bombrini)岩陰遺跡とフマネ洞窟では、41000~40000年前頃となるプロトオーリナシアン(Proto-Aurignacian)と関連する現生人類の乳歯が発見されています(関連記事)。フマネ洞窟A3層では、文化的関連と形態的分類の不明な大臼歯が発見されています。
イタリアの人類遺骸に関する最近の再評価では、ウルツィアンと関連する現生人類は、ヨーロッパ南部に遅くとも45000年前頃には存在した、と示唆されています。しかし、レヴァントのエミリアン(Levantine Emirian)との類似性を示す、ヨーロッパ中央部のボフニチアン(Bohunician)インダストリー遺跡で得られた光刺激ルミネッセンス法(OSL)による年代(48200±1900年前)や、ブルガリアのバチョキロ洞窟(Bacho Kiro Cave)の初期上部旧石器(Initial Upper Paleolithic、以下IUP)インダストリーの放射性炭素年代(47000~43000年前頃)から(関連記事)、現生人類がもっと早期にヨーロッパに到来した可能性も指摘されています。現在利用可能なデータに基づくと、50000~46000年前頃は、在来のネアンデルタール人と侵入してくる現生人類との間の生物文化的相互作用を解明するためには、たいへん重要な期間かもしれません。
イタリア北東部のヴィチェンツァ(Vicenza)のリパロブロイオン(Riparo Broion)遺跡は、中部旧石器時代から上部旧石器時代への移行が明確に記録されている重要な遺跡です。現生人類がこの地域に到来した可能性のある層のすぐ下に位置するムステリアン(Mousterian)層では、後期ネアンデルタール人の生存戦略と物質文化に関する詳細な証拠が得られます。カヴァッロ洞窟やフマネ洞窟と同様に、リパロブロイオンは、中部旧石器時代後期遺物と関連する人類遺骸が得られるウルツィアン層を含む完全な層序を有している点で、イタリアでは数少ない遺跡です。
本論文では、2018年にリパロブロイオン遺跡の後期ムステリアンの11層で発見された人類の脱落乳歯犬歯(リパロブロイオン1)の分類が決定されます。分類学的同定は、形態、エナメル質の厚さの2Dおよび3D分析、ミトコンドリアDNA(mtDNA)分析に基づきます。また分析のために、人類の上顎乳犬歯の包括的な参照標本が生成されました。さらに、50000~46000年前頃の重要な期間とリパロブロイオン1(RB1)との関連性を確認するため、放射性炭素年代測定法が適用され、リパロブロイオン遺跡のムステリアン層やウルツィアン層の年代と比較されました。比較対象となった標本は、ネアンデルタール人12個体分と上部旧石器時代および中石器時代の現生人類91個体と、まだ公表されていないネアンデルタール人5個体、早期現生人類2個体、上部旧石器時代現生人類2個体です。
リパロブロイオン遺跡では考古学的に11の層序ユニットが確認されています。ユニット1は1aから1gまでの7層に区分されており、1a~1b層が前期続グラヴェティアン(Early Epigravettian)、1e・1f・1g層がウルツィアンです。ムステリアンはユニット4・7・9・11で確認されています。ユニット2・3では人為的痕跡の証拠がありません。リパロブロイオン遺跡のウルツィアンは、イタリア北部における上部旧石器時代早期文化の存在を確証した、と指摘されています。2018年に、リパロブロイオン遺跡11層上部で人類の歯が発見されました。
この11層は、MIS3となるグリーンランド亜間氷期(Greenland Interstadial)14~12(54200~43300年前頃)に形成されました。この頃は、地中海東部およびヨーロッパ中央部の洞窟二次生成物動態記録では、湿潤で穏やかな環境とされています。長いグリーンランド亜間氷期(GI)14~12は、約1500年続いたハインリッヒイベント(HE)5を含むGI13により一時的に中断します。この変化は地中海地域に深刻な乾燥化をもたらしましたが、イタリア北東部では一般的に、花粉データから地中海地域の遺跡よりも高い森林被覆率が示されます。アルプス山脈の影響により、このアルプス南東部は比較的湿度が高かったようで、それは小型哺乳類の痕跡に示されます。55000~45000年前頃には、ヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris-mugo)が優勢なトウヒや寒冷地広葉樹との混合針葉樹林の拡大(平均37%、最大で70%)が見られます。落葉性コナラ属など温帯林分類群は4%ほど見られ、シナノキ属は4万年前頃まで存続しました。この期間には、草本植物の花粉などから、開けた環境も特定されており、おそらくHEにおいて大きな植生変化を伴い、グリーンランド亜氷期(GS)に拡大しました。
長期的にデータから示唆されるのは、寒冷混合森林相の優勢で、おそらくは亜寒帯もしくは亜寒帯と広温帯と温帯の樹木分類群の混合から構成されます。そうした生物叢からは、冬が適度に寒く(最も寒い月の平均気温が-2~-15℃)、温帯の夏の緑樹に充分な積算成長度日(1200以上)があり、亜寒帯常緑針葉樹に充分な降水量がある、と予測されます。これと関連して、リパロブロイオン遺跡ユニット11で発見された動物考古学的データの予備分析では、ヘラジカ(Alces alces)やアカシカ(Cervus elaphus)やノロジカ(Capreolus capreolus)やギガンテウスオオツノジカ(Megaloceros giganteus)や野生イノシシ(Sus scrofa)やオーロックス(Bos primigenius)やステップバイソン(Bison priscus)とともに、数頭のヤギとウマ、魚類や淡水二枚貝のわずかな遺骸と関連する豊富なヨーロッパビーバー(Castor fiber)など、広範な種の存在が確認されています。これらの動物遺骸群からは、開地から密集して閉鎖的な森林におよぶ環境の存在が支持されます。これには、移行的で不連続なアルプス草原もしくは炭酸塩岩の先駆性植物が伴い、弱い水路や湿潤草地や浅い湖のある湿潤な湿地環境の存在により完結します。
RB1は、EDJ(象牙質とエナメル質の接合部)など形態ではネアンデルタール人に分類されます。mtDNA分析では、RB1は既知のネアンデルタール人の変異内に収まり、最も類似しているのは、ベルギーのスピ(Spy)およびゴイエット(Goyet)遺跡で発見されたネアンデルタール人で、その年代は43000~38000年前頃です。RB1とこれらベルギーのネアンデルタール人とは、mtDNAでは47000年前頃(最高事後密度間隔で51000~43000年前)に分岐した、と推測されます。mtDNAでは、RB1の年代は39000年前頃です(最高事後密度間隔で46000~30000年前)。一方、放射性炭素年代測定法では、RB1が発見されたユニット11の下部は95%信頼区間で50000~47000年前です。以下、mtDNA系統樹を示した本論文の図7です。
ヨーロッパ東部における現生人類の存在は50000~46000年前頃までさかのぼりますが(関連記事)、ヨーロッパ南西部および地中海地域においては、RB1も含めてこの期間に見つかった人類遺骸の大半から、当時存在していた人類はおもにネアンデルタール人だった、と推測されます。ベルギーやチェコなどヨーロッパの他地域では、この期間の人類遺骸は広範な年齢の個体のものですが、イタリアの同時代の人類遺骸は乳歯のみで構成されています。このパターンは、ベリチヒルズとレッシニ山脈の岩陰遺跡群でとくに顕著です。この地域では、人類により加工された動物の骨や石器や燃焼遺骸や暖炉が高密度で、人類集団による洞窟の(季節的ではあるものの)集中的使用が指摘されます。これは、集団があらゆる年齢の個体群により構成されていた可能性を示します。リパロブロイオン遺跡11層の予備的な物質分析と動物考古学および古生態学的情報からは、ネアンデルタール人の広範な活動の証拠が得られました。たとえば、堆積物は、湿地環境・低エネルギーの水路・浅い湖により囲まれた、開けた環境から密集した寒冷混合林、移行的で不連続なアルプス草原、炭酸塩岩の先駆性植物におよぶ環境における、火の集中的使用を記録しています。
同時期のイタリア国外では、ネアンデルタール人の人類学的発見の大半は、深さが15m以上の洞窟内部か、食人かもしれない証拠か、意図的な埋葬の可能性があるか確証された、洞窟入口もしくは岩陰と関連しています。この時期には、イタリアで収集された全ての証拠を埋葬慣行と関連づけることはできませんが、続成作用と化石生成も遺跡の異なる地質構造環境に起因して関連しているかもしれない、と示唆されています。形態学的情報と形態計測分析と古代mtDNA分析は、RB1がネアンデルタール人の子供であることを示し、ヨーロッパ南部への現生人類の到来に近い時期における、イタリア北東部のネアンデルタール人の存在に関する重要性を追加します。
参考文献:
Romandini M. et al.(2020): A late Neanderthal tooth from northeastern Italy. Journal of Human Evolution, 147, 102867.
https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2020.102867
57000~29000年前頃となる海洋酸素同位体ステージ(MIS)3におけるイタリア半島の人類遺骸は、おもに45000~40000年前頃のネアンデルタール人と現生人類のものがわずかに発見されています。初期の人類遺骸では、イタリア北部のフマネ洞窟(Grotta di Fumane)のA11層とA9層(47600年以上前)ではネアンデルタール人の歯が、リパロタグリエント(Riparo Tagliente)では、36層で年代不明のネアンデルタール人の歯が見つかっています。より新しい人類遺骸では、カヴァッロ洞窟(Grotta del Cavallo)において、ネアンデルタール人の上顎第一乳臼歯(45000年前頃)、ウルツィアン層の2個の現生人類の乳歯の小臼歯(関連記事)が発見されています。リパロボンブリーニ(Riparo Bombrini)岩陰遺跡とフマネ洞窟では、41000~40000年前頃となるプロトオーリナシアン(Proto-Aurignacian)と関連する現生人類の乳歯が発見されています(関連記事)。フマネ洞窟A3層では、文化的関連と形態的分類の不明な大臼歯が発見されています。
イタリアの人類遺骸に関する最近の再評価では、ウルツィアンと関連する現生人類は、ヨーロッパ南部に遅くとも45000年前頃には存在した、と示唆されています。しかし、レヴァントのエミリアン(Levantine Emirian)との類似性を示す、ヨーロッパ中央部のボフニチアン(Bohunician)インダストリー遺跡で得られた光刺激ルミネッセンス法(OSL)による年代(48200±1900年前)や、ブルガリアのバチョキロ洞窟(Bacho Kiro Cave)の初期上部旧石器(Initial Upper Paleolithic、以下IUP)インダストリーの放射性炭素年代(47000~43000年前頃)から(関連記事)、現生人類がもっと早期にヨーロッパに到来した可能性も指摘されています。現在利用可能なデータに基づくと、50000~46000年前頃は、在来のネアンデルタール人と侵入してくる現生人類との間の生物文化的相互作用を解明するためには、たいへん重要な期間かもしれません。
イタリア北東部のヴィチェンツァ(Vicenza)のリパロブロイオン(Riparo Broion)遺跡は、中部旧石器時代から上部旧石器時代への移行が明確に記録されている重要な遺跡です。現生人類がこの地域に到来した可能性のある層のすぐ下に位置するムステリアン(Mousterian)層では、後期ネアンデルタール人の生存戦略と物質文化に関する詳細な証拠が得られます。カヴァッロ洞窟やフマネ洞窟と同様に、リパロブロイオンは、中部旧石器時代後期遺物と関連する人類遺骸が得られるウルツィアン層を含む完全な層序を有している点で、イタリアでは数少ない遺跡です。
本論文では、2018年にリパロブロイオン遺跡の後期ムステリアンの11層で発見された人類の脱落乳歯犬歯(リパロブロイオン1)の分類が決定されます。分類学的同定は、形態、エナメル質の厚さの2Dおよび3D分析、ミトコンドリアDNA(mtDNA)分析に基づきます。また分析のために、人類の上顎乳犬歯の包括的な参照標本が生成されました。さらに、50000~46000年前頃の重要な期間とリパロブロイオン1(RB1)との関連性を確認するため、放射性炭素年代測定法が適用され、リパロブロイオン遺跡のムステリアン層やウルツィアン層の年代と比較されました。比較対象となった標本は、ネアンデルタール人12個体分と上部旧石器時代および中石器時代の現生人類91個体と、まだ公表されていないネアンデルタール人5個体、早期現生人類2個体、上部旧石器時代現生人類2個体です。
リパロブロイオン遺跡では考古学的に11の層序ユニットが確認されています。ユニット1は1aから1gまでの7層に区分されており、1a~1b層が前期続グラヴェティアン(Early Epigravettian)、1e・1f・1g層がウルツィアンです。ムステリアンはユニット4・7・9・11で確認されています。ユニット2・3では人為的痕跡の証拠がありません。リパロブロイオン遺跡のウルツィアンは、イタリア北部における上部旧石器時代早期文化の存在を確証した、と指摘されています。2018年に、リパロブロイオン遺跡11層上部で人類の歯が発見されました。
この11層は、MIS3となるグリーンランド亜間氷期(Greenland Interstadial)14~12(54200~43300年前頃)に形成されました。この頃は、地中海東部およびヨーロッパ中央部の洞窟二次生成物動態記録では、湿潤で穏やかな環境とされています。長いグリーンランド亜間氷期(GI)14~12は、約1500年続いたハインリッヒイベント(HE)5を含むGI13により一時的に中断します。この変化は地中海地域に深刻な乾燥化をもたらしましたが、イタリア北東部では一般的に、花粉データから地中海地域の遺跡よりも高い森林被覆率が示されます。アルプス山脈の影響により、このアルプス南東部は比較的湿度が高かったようで、それは小型哺乳類の痕跡に示されます。55000~45000年前頃には、ヨーロッパアカマツ(Pinus sylvestris-mugo)が優勢なトウヒや寒冷地広葉樹との混合針葉樹林の拡大(平均37%、最大で70%)が見られます。落葉性コナラ属など温帯林分類群は4%ほど見られ、シナノキ属は4万年前頃まで存続しました。この期間には、草本植物の花粉などから、開けた環境も特定されており、おそらくHEにおいて大きな植生変化を伴い、グリーンランド亜氷期(GS)に拡大しました。
長期的にデータから示唆されるのは、寒冷混合森林相の優勢で、おそらくは亜寒帯もしくは亜寒帯と広温帯と温帯の樹木分類群の混合から構成されます。そうした生物叢からは、冬が適度に寒く(最も寒い月の平均気温が-2~-15℃)、温帯の夏の緑樹に充分な積算成長度日(1200以上)があり、亜寒帯常緑針葉樹に充分な降水量がある、と予測されます。これと関連して、リパロブロイオン遺跡ユニット11で発見された動物考古学的データの予備分析では、ヘラジカ(Alces alces)やアカシカ(Cervus elaphus)やノロジカ(Capreolus capreolus)やギガンテウスオオツノジカ(Megaloceros giganteus)や野生イノシシ(Sus scrofa)やオーロックス(Bos primigenius)やステップバイソン(Bison priscus)とともに、数頭のヤギとウマ、魚類や淡水二枚貝のわずかな遺骸と関連する豊富なヨーロッパビーバー(Castor fiber)など、広範な種の存在が確認されています。これらの動物遺骸群からは、開地から密集して閉鎖的な森林におよぶ環境の存在が支持されます。これには、移行的で不連続なアルプス草原もしくは炭酸塩岩の先駆性植物が伴い、弱い水路や湿潤草地や浅い湖のある湿潤な湿地環境の存在により完結します。
RB1は、EDJ(象牙質とエナメル質の接合部)など形態ではネアンデルタール人に分類されます。mtDNA分析では、RB1は既知のネアンデルタール人の変異内に収まり、最も類似しているのは、ベルギーのスピ(Spy)およびゴイエット(Goyet)遺跡で発見されたネアンデルタール人で、その年代は43000~38000年前頃です。RB1とこれらベルギーのネアンデルタール人とは、mtDNAでは47000年前頃(最高事後密度間隔で51000~43000年前)に分岐した、と推測されます。mtDNAでは、RB1の年代は39000年前頃です(最高事後密度間隔で46000~30000年前)。一方、放射性炭素年代測定法では、RB1が発見されたユニット11の下部は95%信頼区間で50000~47000年前です。以下、mtDNA系統樹を示した本論文の図7です。
ヨーロッパ東部における現生人類の存在は50000~46000年前頃までさかのぼりますが(関連記事)、ヨーロッパ南西部および地中海地域においては、RB1も含めてこの期間に見つかった人類遺骸の大半から、当時存在していた人類はおもにネアンデルタール人だった、と推測されます。ベルギーやチェコなどヨーロッパの他地域では、この期間の人類遺骸は広範な年齢の個体のものですが、イタリアの同時代の人類遺骸は乳歯のみで構成されています。このパターンは、ベリチヒルズとレッシニ山脈の岩陰遺跡群でとくに顕著です。この地域では、人類により加工された動物の骨や石器や燃焼遺骸や暖炉が高密度で、人類集団による洞窟の(季節的ではあるものの)集中的使用が指摘されます。これは、集団があらゆる年齢の個体群により構成されていた可能性を示します。リパロブロイオン遺跡11層の予備的な物質分析と動物考古学および古生態学的情報からは、ネアンデルタール人の広範な活動の証拠が得られました。たとえば、堆積物は、湿地環境・低エネルギーの水路・浅い湖により囲まれた、開けた環境から密集した寒冷混合林、移行的で不連続なアルプス草原、炭酸塩岩の先駆性植物におよぶ環境における、火の集中的使用を記録しています。
同時期のイタリア国外では、ネアンデルタール人の人類学的発見の大半は、深さが15m以上の洞窟内部か、食人かもしれない証拠か、意図的な埋葬の可能性があるか確証された、洞窟入口もしくは岩陰と関連しています。この時期には、イタリアで収集された全ての証拠を埋葬慣行と関連づけることはできませんが、続成作用と化石生成も遺跡の異なる地質構造環境に起因して関連しているかもしれない、と示唆されています。形態学的情報と形態計測分析と古代mtDNA分析は、RB1がネアンデルタール人の子供であることを示し、ヨーロッパ南部への現生人類の到来に近い時期における、イタリア北東部のネアンデルタール人の存在に関する重要性を追加します。
参考文献:
Romandini M. et al.(2020): A late Neanderthal tooth from northeastern Italy. Journal of Human Evolution, 147, 102867.
https://doi.org/10.1016/j.jhevol.2020.102867
この記事へのコメント