ヒトの空間記憶における高カロリー食品の優先
ヒトの空間記憶における高カロリー食品の優先を報告した研究(de Vries et al., 2020)が公表されました。この研究は、食品の位置記憶を測定するための実験を行ない、512人の参加者に対して、食品サンプルまたは食品の香りがする脱脂綿の入った瓶(合計8点)がそれぞれ別々に配置された部屋の中を、決められた順路に従って進むように指示しました。食品サンプルなどの置かれた場所で、参加者は、試食するか、脱脂綿のにおいを嗅いで、その食品がどれだけ好きかを評価しました。食品サンプル(食品のにおいのサンプル)には、リンゴやポテトチップやキュウリやチョコレートブラウニーなどが含まれていました。次に、参加者は部屋の見取り図を見せられ、それぞれの食品サンプル(食品のにおいのサンプル)の位置を示すように求められました。
この実験で、参加者が正しい位置を示す確率は、低カロリー食品よりも高カロリー食品の方が高く、食品サンプルを試食した参加者で1.27倍高く、食品のにおいを嗅いだ参加者で1.28倍高い、という結果が得られました。空間記憶は、食品に甘味やうま味があるかどうか、参加者がどれだけ食品が好きなのかということに影響されませんでした。全ての食品について参加者が正しい位置を示す確率は、食品サンプルを試食した場合の方が、食品のにおいを嗅いだ場合より2.43倍高い、という結果も得られました。
これらの知見は、ヒトの空間記憶が高カロリー食品の位置に偏っていることを示しています。この研究は、こうした偏りによりカロリーの高い食品を効率的に探し出すことが可能になり、食料の入手可能性の変動する環境で人類の祖先が生き延びることを助けた、という可能性を指摘しています。おそらくこうした偏りの遺伝的基盤は古く、類人猿(ヒト上科)、さらには霊長類全般にまでさかのぼる可能性も考えられ、今後の研究の進展が期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
心理学:ヒトの空間記憶では高カロリー食品が優先される
ヒトは、低カロリー食品よりも高カロリー食品の位置をより正確に想起することを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。ヒトは、空間記憶によって物体の位置関係を記憶しているが、今回の研究で得られた知見は、ヒトの進化の過程で、空間記憶において高カロリー食品の所在が優先されるようになったことを示唆している。
今回、Rachelle de Vriesらの研究チームは、食品の位置記憶を測定するための実験を行い、512人の参加者に対して、食品サンプルまたは食品の香りがする脱脂綿の入った瓶(合計8点)がそれぞれ別々に配置された部屋の中を決められた順路に従って進むように指示した。食品サンプルなどの置かれた場所で、参加者は、試食するか、脱脂綿のにおいを嗅いで、その食品がどれだけ好きかを評価した。食品サンプル(食品のにおいのサンプル)には、リンゴ、ポテトチップ、キュウリ、チョコレートブラウニーなどが含まれていた。次に、参加者は、部屋の見取り図を見せられ、それぞれの食品サンプル(食品のにおいのサンプル)の位置を示すように求められた。
この実験で、参加者が正しい位置を示す確率は、低カロリー食品よりも高カロリー食品の方が高く、食品サンプルを試食した参加者で1.27倍高く、食品のにおいを嗅いだ参加者で1.28倍高かった。空間記憶は、食品に甘味やうま味があるかどうか、参加者がどれだけ食品が好きなのかということに影響されなかった。全ての食品について参加者が正しい位置を示す確率は、食品サンプルを試食した場合の方が、食品のにおいを嗅いだ場合より2.43倍高かった。
以上の知見は、ヒトの空間記憶が高カロリー食品の位置に偏っていることを示している。de Vriesらは、この偏りは、カロリーの高い食品を効率的に探し出すことを可能にし、食料の入手可能性が変動する環境で人類の祖先が生き延びることを助けた可能性があると考えている。
参考文献:
de Vries R. et al.(2020): Human spatial memory implicitly prioritizes high-calorie foods. Scientific Reports, 10, 15174.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-72570-x
この実験で、参加者が正しい位置を示す確率は、低カロリー食品よりも高カロリー食品の方が高く、食品サンプルを試食した参加者で1.27倍高く、食品のにおいを嗅いだ参加者で1.28倍高い、という結果が得られました。空間記憶は、食品に甘味やうま味があるかどうか、参加者がどれだけ食品が好きなのかということに影響されませんでした。全ての食品について参加者が正しい位置を示す確率は、食品サンプルを試食した場合の方が、食品のにおいを嗅いだ場合より2.43倍高い、という結果も得られました。
これらの知見は、ヒトの空間記憶が高カロリー食品の位置に偏っていることを示しています。この研究は、こうした偏りによりカロリーの高い食品を効率的に探し出すことが可能になり、食料の入手可能性の変動する環境で人類の祖先が生き延びることを助けた、という可能性を指摘しています。おそらくこうした偏りの遺伝的基盤は古く、類人猿(ヒト上科)、さらには霊長類全般にまでさかのぼる可能性も考えられ、今後の研究の進展が期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
心理学:ヒトの空間記憶では高カロリー食品が優先される
ヒトは、低カロリー食品よりも高カロリー食品の位置をより正確に想起することを報告する論文が、Scientific Reports に掲載される。ヒトは、空間記憶によって物体の位置関係を記憶しているが、今回の研究で得られた知見は、ヒトの進化の過程で、空間記憶において高カロリー食品の所在が優先されるようになったことを示唆している。
今回、Rachelle de Vriesらの研究チームは、食品の位置記憶を測定するための実験を行い、512人の参加者に対して、食品サンプルまたは食品の香りがする脱脂綿の入った瓶(合計8点)がそれぞれ別々に配置された部屋の中を決められた順路に従って進むように指示した。食品サンプルなどの置かれた場所で、参加者は、試食するか、脱脂綿のにおいを嗅いで、その食品がどれだけ好きかを評価した。食品サンプル(食品のにおいのサンプル)には、リンゴ、ポテトチップ、キュウリ、チョコレートブラウニーなどが含まれていた。次に、参加者は、部屋の見取り図を見せられ、それぞれの食品サンプル(食品のにおいのサンプル)の位置を示すように求められた。
この実験で、参加者が正しい位置を示す確率は、低カロリー食品よりも高カロリー食品の方が高く、食品サンプルを試食した参加者で1.27倍高く、食品のにおいを嗅いだ参加者で1.28倍高かった。空間記憶は、食品に甘味やうま味があるかどうか、参加者がどれだけ食品が好きなのかということに影響されなかった。全ての食品について参加者が正しい位置を示す確率は、食品サンプルを試食した場合の方が、食品のにおいを嗅いだ場合より2.43倍高かった。
以上の知見は、ヒトの空間記憶が高カロリー食品の位置に偏っていることを示している。de Vriesらは、この偏りは、カロリーの高い食品を効率的に探し出すことを可能にし、食料の入手可能性が変動する環境で人類の祖先が生き延びることを助けた可能性があると考えている。
参考文献:
de Vries R. et al.(2020): Human spatial memory implicitly prioritizes high-calorie foods. Scientific Reports, 10, 15174.
https://doi.org/10.1038/s41598-020-72570-x
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