野村克也『野球は頭でするもんだ!』
朝日文庫の一冊として、朝日新聞社から1985年9月に刊行されました。本書は、同じ著者でともに朝日新聞社から刊行された、『プロ野球の男たち』(1982年)と『プロ野球・野村克也の目』(1983年)の中から、著者の考える野球とは何か、そのエッセンスを抜き出し、加筆・再構成して刊行されました。本書を古書店で購入したのは随分と前のことで、まだプロ野球への関心を失っていなかった頃に購入したと思われるので、2004年以前かもしれません。本書を購入していたことはすっかり忘れていたのですが、最近本棚を整理していて偶然見つけ、著者が今年(2020年2月11日)急逝したこともあり、読んでみました。
本書は、短い随筆の寄せ集めといった感もありますが、野球は頭を使う球技だ、という著者の野球観が貫かれており、さほど雑多な印象は受けませんでした。著者の野球への強い想いは、本書を読んで改めて確認されました。野村家が脱税で捜査された時、ある捜査官が、夫は脱税に関わっておらず、野球にしか興味がないし、野球しか分からない、といった発言をしたと報道されたように記憶していますが、おそらくそうだったのだろうな、と思います。もうプロ野球に対する関心は失ってしまいましたが、20世紀後半のプロ野球に関する記憶はまだかなり残っているので、本書を興味深く読み進められました。
本書では、さまざまな選手・指導者への評価や著者とのやり取りが取り上げられており、やや醜聞めいたところも含めて、面白くなっています。著者は南海監督時代、選手が女性問題で悩まされ、相談を受けたことがあった、と述べていますが、他人のことより自分の話を書いた方が面白いのに、とつい嫌味を言いたくもなります。またスパイ野球(盗み行為)について、本書では著者がほぼずっと被害者の立場にいたかのように描かれていますが、後の噂を考えると、ある意味で面白い記述になっています。まあ、本書刊行時点では、著者は南海の監督を解任されて一選手となって現役を数年続行して引退し、どこかの球団の監督に就任する話もまったくなかった時期だったでしょうから、スパイ野球の被害者としての自画像は、そこまで的外れではなかったのかもしれませんが。
それにしても、問い詰めたら盗み行為をしぶしぶ認めた、とまで著者に本で書かれた森昌彦(森祇晶)氏が、その後もずっと著者との親交を続けたことには、ある意味で感心します。森氏も人間性について色々と言われていますが、西武監督時代には選手たちの私的な部分には寛容だった、と以前に別の本で読んだこともあり、ひじょうに器の大きいところもあるのかもしれません。なお、著者が柴田勲氏に巨人の盗み行為について問いかけたら、ニヤッとして否定しなかったそうです。また、著者は高校野球のノック技術を高く評価しており、この点でも本当に野球好きだったことが窺えます。
本書は、短い随筆の寄せ集めといった感もありますが、野球は頭を使う球技だ、という著者の野球観が貫かれており、さほど雑多な印象は受けませんでした。著者の野球への強い想いは、本書を読んで改めて確認されました。野村家が脱税で捜査された時、ある捜査官が、夫は脱税に関わっておらず、野球にしか興味がないし、野球しか分からない、といった発言をしたと報道されたように記憶していますが、おそらくそうだったのだろうな、と思います。もうプロ野球に対する関心は失ってしまいましたが、20世紀後半のプロ野球に関する記憶はまだかなり残っているので、本書を興味深く読み進められました。
本書では、さまざまな選手・指導者への評価や著者とのやり取りが取り上げられており、やや醜聞めいたところも含めて、面白くなっています。著者は南海監督時代、選手が女性問題で悩まされ、相談を受けたことがあった、と述べていますが、他人のことより自分の話を書いた方が面白いのに、とつい嫌味を言いたくもなります。またスパイ野球(盗み行為)について、本書では著者がほぼずっと被害者の立場にいたかのように描かれていますが、後の噂を考えると、ある意味で面白い記述になっています。まあ、本書刊行時点では、著者は南海の監督を解任されて一選手となって現役を数年続行して引退し、どこかの球団の監督に就任する話もまったくなかった時期だったでしょうから、スパイ野球の被害者としての自画像は、そこまで的外れではなかったのかもしれませんが。
それにしても、問い詰めたら盗み行為をしぶしぶ認めた、とまで著者に本で書かれた森昌彦(森祇晶)氏が、その後もずっと著者との親交を続けたことには、ある意味で感心します。森氏も人間性について色々と言われていますが、西武監督時代には選手たちの私的な部分には寛容だった、と以前に別の本で読んだこともあり、ひじょうに器の大きいところもあるのかもしれません。なお、著者が柴田勲氏に巨人の盗み行為について問いかけたら、ニヤッとして否定しなかったそうです。また、著者は高校野球のノック技術を高く評価しており、この点でも本当に野球好きだったことが窺えます。
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