マヤ文化最古の儀式用建造物
マヤ文化最古の儀式用建造物に関する研究(Inomata et al., 2020)が報道されました。考古学界では従来、マヤ文化はじょじょに発展したと考えられており、土器の使用および定住生活の開始とともに、小規模村落が紀元前1000~紀元前350年頃(以下、すべて較正年代です)となる中期先古典期に出現した、と想定されてきました。しかし近年、グアテマラのセイバル(Seibal)遺跡の人工的な高台のような初期の儀式用複合施設など、初期の祭祀用建造物群が発見されたことで、このモデルに疑問が呈されています。
本論文は、これまで知られていなかったアグアダ・フェニックス(Aguada Fénix)遺跡(メキシコ合衆国タバスコ州)の、航空ライダー(LIDAR)測量および発掘調査の結果を示します。LIDARとは、レーザー光を用いたリモートセンシング法で、地表の3Dマップを作成でき、これまでにも成果が得られています(関連記事)。アグアダ・フェニックス遺跡は、南北1413 mで東西399m、高さ10~15 mの人工の基壇を有し、それを中心に9本の堤道が広がっています。放射性炭素年代のベイズ解析により、この建造物の年代は紀元前1000~紀元前800年頃と推定されました。これはマヤ地域における既知の遺跡では最古となる大公共建造物で、スペイン人侵入以前のマヤ地域の歴史全体を通して最大のものとなります。
アグアダ・フェニックス遺跡には、より古いオルメカ文化のサン・ロレンソ(San Lorenzo)遺跡の祭祀センターと類似する点もありますが、おそらくアグアダ・フェニックスの地域社会には、サン・ロレンソ社会に匹敵するほどの顕著な社会的不平等はなかった、と考えられます。アグアダ・フェニックスおよび同時代のその他の祭祀用建造物群は、マヤ文化の初期の発展における共同作業の重要性を示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
考古学:マヤ文明最古の儀式用建造物が発見される
マヤ文明によるモニュメンタル建造物(記念碑的建造物)として最大かつ最古のものが発見されたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。
マヤ文明は、先古典期中論文著者前1000~紀元前350年)に小さな村が次々と出現して以降、徐々に発展していったというモデルが考古学者によって提示されていた。しかし最近、紀元前950年頃のものとされるグアテマラ・セイバルの人工的な高台のような初期の儀式用複合施設が発見され、このモデルは再考を迫られている。
猪俣健(いのまた・たけし)たちの研究チームは、タバスコ(メキシコ)でLIDARを用いた航空探査を行い、これまで知られていなかったマヤ遺跡を発見した。LIDARとは、レーザー光を用いたリモートセンシング法で、地表の3Dマップを作成できる。アグアダ・フェニックスと命名されたこの遺跡には、南北1413メートル、東西399メートルの高台がある。この建造物は、周りよりも10~15メートル高く、9つの土手道が周辺に伸びていた。猪俣たちは、放射性炭素年代測定法を用いて、この建造物が紀元前1000~紀元前800年に建設されたと推定しており、これまでにマヤ地域で発見された最古のモニュメンタル建造物となった。
猪俣たちは、アグアダ・フェニックス遺跡がほぼ同時代のオルメック文化などの他の考古遺跡とは異なり、顕著な社会的不平等を明確に示す標識(例えば、地位の高い人物の彫像)がない点を指摘し、アグアダ・フェニックスなどの儀式用複合施設が、マヤ文明の初期の発展段階における共同作業の重要性を示唆していると結論付けている。
考古学:アグアダ・フェニックス遺跡の大公共建築とマヤ文明の起源
考古学:初期のマヤ人による大公共建造物
メソアメリカのマヤ文明は一般に、徐々に発展したと考えられてきた。しかし近年、初期の祭祀用建造物群が発見されたことで、この考え方に疑問が呈されている。今回、猪俣健(米国アリゾナ大学)たちが、航空ライダー測量で、これまで知られていなかったアグアダ・フェニックス遺跡(メキシコ・タバスコ州)において長さ1400 m、高さ10~15 mの、年代が紀元前1000~紀元前800年までさかのぼる祭祀用基壇を発見したことで、従来の考え方は完全に覆されるだろう。
参考文献:
Inomata T. et al.(2020): Monumental architecture at Aguada Fénix and the rise of Maya civilization. Nature, 582, 7813, 530–533.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2343-4
本論文は、これまで知られていなかったアグアダ・フェニックス(Aguada Fénix)遺跡(メキシコ合衆国タバスコ州)の、航空ライダー(LIDAR)測量および発掘調査の結果を示します。LIDARとは、レーザー光を用いたリモートセンシング法で、地表の3Dマップを作成でき、これまでにも成果が得られています(関連記事)。アグアダ・フェニックス遺跡は、南北1413 mで東西399m、高さ10~15 mの人工の基壇を有し、それを中心に9本の堤道が広がっています。放射性炭素年代のベイズ解析により、この建造物の年代は紀元前1000~紀元前800年頃と推定されました。これはマヤ地域における既知の遺跡では最古となる大公共建造物で、スペイン人侵入以前のマヤ地域の歴史全体を通して最大のものとなります。
アグアダ・フェニックス遺跡には、より古いオルメカ文化のサン・ロレンソ(San Lorenzo)遺跡の祭祀センターと類似する点もありますが、おそらくアグアダ・フェニックスの地域社会には、サン・ロレンソ社会に匹敵するほどの顕著な社会的不平等はなかった、と考えられます。アグアダ・フェニックスおよび同時代のその他の祭祀用建造物群は、マヤ文化の初期の発展における共同作業の重要性を示唆しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。
考古学:マヤ文明最古の儀式用建造物が発見される
マヤ文明によるモニュメンタル建造物(記念碑的建造物)として最大かつ最古のものが発見されたことを報告する論文が、今週、Nature に掲載される。
マヤ文明は、先古典期中論文著者前1000~紀元前350年)に小さな村が次々と出現して以降、徐々に発展していったというモデルが考古学者によって提示されていた。しかし最近、紀元前950年頃のものとされるグアテマラ・セイバルの人工的な高台のような初期の儀式用複合施設が発見され、このモデルは再考を迫られている。
猪俣健(いのまた・たけし)たちの研究チームは、タバスコ(メキシコ)でLIDARを用いた航空探査を行い、これまで知られていなかったマヤ遺跡を発見した。LIDARとは、レーザー光を用いたリモートセンシング法で、地表の3Dマップを作成できる。アグアダ・フェニックスと命名されたこの遺跡には、南北1413メートル、東西399メートルの高台がある。この建造物は、周りよりも10~15メートル高く、9つの土手道が周辺に伸びていた。猪俣たちは、放射性炭素年代測定法を用いて、この建造物が紀元前1000~紀元前800年に建設されたと推定しており、これまでにマヤ地域で発見された最古のモニュメンタル建造物となった。
猪俣たちは、アグアダ・フェニックス遺跡がほぼ同時代のオルメック文化などの他の考古遺跡とは異なり、顕著な社会的不平等を明確に示す標識(例えば、地位の高い人物の彫像)がない点を指摘し、アグアダ・フェニックスなどの儀式用複合施設が、マヤ文明の初期の発展段階における共同作業の重要性を示唆していると結論付けている。
考古学:アグアダ・フェニックス遺跡の大公共建築とマヤ文明の起源
考古学:初期のマヤ人による大公共建造物
メソアメリカのマヤ文明は一般に、徐々に発展したと考えられてきた。しかし近年、初期の祭祀用建造物群が発見されたことで、この考え方に疑問が呈されている。今回、猪俣健(米国アリゾナ大学)たちが、航空ライダー測量で、これまで知られていなかったアグアダ・フェニックス遺跡(メキシコ・タバスコ州)において長さ1400 m、高さ10~15 mの、年代が紀元前1000~紀元前800年までさかのぼる祭祀用基壇を発見したことで、従来の考え方は完全に覆されるだろう。
参考文献:
Inomata T. et al.(2020): Monumental architecture at Aguada Fénix and the rise of Maya civilization. Nature, 582, 7813, 530–533.
https://doi.org/10.1038/s41586-020-2343-4
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