動物を誘引する土壌細菌の匂い
動物を誘引する土壌細菌の匂いに関する研究(Becher et al., 2020)が公表されました。細菌は揮発性の化合物を多数生産し、ヒトなどの大型の生物はこれを感知します。ストレプトマイセス属(Streptomyces)の細菌は土壌中に広く存在し、雨が降った後の地面に特徴的な「土くさい」匂いの元になるゲオスミンという有機化合物を作ります。しかし、細菌がなぜゲオスミンを作るのか、理由は不明です。この研究は、野外実験と研究室での実験を組み合わせて、ストレプトマイセス属の出す匂いが土壌中に生息する動物、特に節足動物を誘引するかどうか、調べました。
その結果、ストレプトマイセス属を餌として野外に多数のワナを仕掛けたところ、トビムシ(昆虫と非常に近い関係にある、翅のない小型の節足動物)がこの細菌に引き寄せられることを明らかにしました。研究室での実験では、トビムシはゲオスミンを触角で直接感知することが観察されました。また、トビムシがこの細菌を餌にすると、細菌の芽胞がトビムシの体に付着しました。その後トビムシは、芽胞を体表につけたまま、または摂取した芽胞を糞として環境中にまき散らしました。この研究は、これらの観察結果から、こうした細菌由来の匂い物質が果たす、動物を誘引して幅広い環境中に細菌を分散させるという生態学的役割が明らかになった、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
生態学:土壌細菌が匂いを出して動物を誘引する
ある種の土壌細菌が独特な匂いを放出して動物を誘引し、それが環境中での勢力拡大に役立っていることを明らかにした論文が、Nature Microbiology に掲載される。
細菌は揮発性の化合物を多数生産し、ヒトなどの大型の生物はこれを感知する。ストレプトマイセス属Streptomycesの細菌は土壌中に広く存在し、雨が降った後の地面に特徴的な「土くさい」匂いの元になるゲオスミンという有機化合物を作る。しかし、細菌がなぜゲオスミンを作るのか、理由は不明である。
今回、Klas Flärdhたちは野外実験と研究室での実験を組み合わせて、ストレプトマイセス属の出す匂いが土壌中に生息する動物、特に節足動物を誘引するかどうかを調べた。ストレプトマイセス属を餌として野外に多数のワナを仕掛けたところ、トビムシ(翅のない小型の節足動物で、昆虫と非常に近い関係にある)がこの細菌に引き寄せられることを明らかにした。研究室での実験では、トビムシはゲオスミンを触角で直接感知することが観察された。また、トビムシがこの細菌を餌にすると、細菌の芽胞がトビムシの体に付着した。その後トビムシは、芽胞を体表につけたまま、または摂取した芽胞を糞として環境中にまき散らした。
著者たちは、これらの観察結果から、このような細菌由来の匂い物質が果たす、動物を誘引して幅広い環境中に細菌を分散させるという生態学的役割が明らかになったと述べている。
参考文献:
Becher PG. et al.(2019): Developmentally regulated volatiles geosmin and 2-methylisoborneol attract a soil arthropod to Streptomyces bacteria promoting spore dispersal. Nature Microbiology, 5, 6, 821–829.
https://doi.org/10.1038/s41564-020-0697-x
その結果、ストレプトマイセス属を餌として野外に多数のワナを仕掛けたところ、トビムシ(昆虫と非常に近い関係にある、翅のない小型の節足動物)がこの細菌に引き寄せられることを明らかにしました。研究室での実験では、トビムシはゲオスミンを触角で直接感知することが観察されました。また、トビムシがこの細菌を餌にすると、細菌の芽胞がトビムシの体に付着しました。その後トビムシは、芽胞を体表につけたまま、または摂取した芽胞を糞として環境中にまき散らしました。この研究は、これらの観察結果から、こうした細菌由来の匂い物質が果たす、動物を誘引して幅広い環境中に細菌を分散させるという生態学的役割が明らかになった、と指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
生態学:土壌細菌が匂いを出して動物を誘引する
ある種の土壌細菌が独特な匂いを放出して動物を誘引し、それが環境中での勢力拡大に役立っていることを明らかにした論文が、Nature Microbiology に掲載される。
細菌は揮発性の化合物を多数生産し、ヒトなどの大型の生物はこれを感知する。ストレプトマイセス属Streptomycesの細菌は土壌中に広く存在し、雨が降った後の地面に特徴的な「土くさい」匂いの元になるゲオスミンという有機化合物を作る。しかし、細菌がなぜゲオスミンを作るのか、理由は不明である。
今回、Klas Flärdhたちは野外実験と研究室での実験を組み合わせて、ストレプトマイセス属の出す匂いが土壌中に生息する動物、特に節足動物を誘引するかどうかを調べた。ストレプトマイセス属を餌として野外に多数のワナを仕掛けたところ、トビムシ(翅のない小型の節足動物で、昆虫と非常に近い関係にある)がこの細菌に引き寄せられることを明らかにした。研究室での実験では、トビムシはゲオスミンを触角で直接感知することが観察された。また、トビムシがこの細菌を餌にすると、細菌の芽胞がトビムシの体に付着した。その後トビムシは、芽胞を体表につけたまま、または摂取した芽胞を糞として環境中にまき散らした。
著者たちは、これらの観察結果から、このような細菌由来の匂い物質が果たす、動物を誘引して幅広い環境中に細菌を分散させるという生態学的役割が明らかになったと述べている。
参考文献:
Becher PG. et al.(2019): Developmentally regulated volatiles geosmin and 2-methylisoborneol attract a soil arthropod to Streptomyces bacteria promoting spore dispersal. Nature Microbiology, 5, 6, 821–829.
https://doi.org/10.1038/s41564-020-0697-x
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