現代文化の変化の速さ

 現代文化の変化の速さに関する研究(Lambert et al., 2020)が公表されました。20世紀には、長期に及ぶ数々の実地調査により、動物集団の生物学的進化に関する研究が進み、進化上の変化の速度が推定されました。文化については、考古学的記録を対象としたこれまでの研究から、生物進化の変化と同等に変化することが示唆されていたものの、その速さについてはよく分かっていませんでした。

 この研究は、広範な近過去の歴史記録が存在する文化的なアーティファクト(ポップミュージック・文学・科学論文・車など)の「集団」、ならびに比較対照としての動物集団(ダーウィンフィンチ・オオシモフリエダシャク・ヒトリガ・イギリスに生息するカタツムリの一種など)に注目し、進化生物学者が開発した指標を使って、両群について経時的に変化する速度の計算を試みました。

 その結果、文化的特性も生物学的形質も同等の速度で変化する、と明らかになりました。また、文化はランダムに変化することはなく、文化を安定化させる選択圧、あるいは文化を特定の方向に進化させる選択圧によって形作られることも分かりました。この知見は、人間の文化が生物体の進化より極めて速く進化する、という定説に異議を唱えるものです。近年、文化進化論(関連記事)への注目が高まっているなか、興味深い研究です。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【社会学】現代文化の変化する速さを測る

 現代の文化は緩やかに進化し、その速度は生物の進化速度と同等であることを報告する論文が掲載される。この知見は、人間の文化が生物体の進化より極めて速く進化するという定説に異議を唱えるものである。

 20世紀には、長期に及ぶ数々の実地調査によって、動物集団の生物学的進化に関する研究がなされ、進化上の変化の速度が推定された。文化については、考古学的記録を対象としたこれまでの研究から、生物進化の変化と同等に変化することが示唆されていたものの、その速さについてはよく分かっていなかった。

 今回、Armand Leroiたちは、広範な近過去の歴史記録が存在する文化的なアーティファクト(ポップミュージック、文学、科学論文、車など)の「集団」、ならびに比較対照としての動物集団(ダーウィンフィンチ、オオシモフリエダシャク、ヒトリガ、英国に生息するカタツムリの一種など)に注目した。そして進化生物学者が開発した指標を使って、両群について経時的に変化する速度の計算を試みた。その結果、文化的特性も生物学的形質も同等の速度で変化することが明らかとなった。また、文化はランダムに変化することはなく、文化を安定化させる選択圧、あるいは文化を特定の方向に進化させる選択圧によって形作られることも分かった。



参考文献:
Lambert B. et al.(2020): The pace of modern culture. Nature Human Behaviour, 4, 4, 352–360.
https://doi.org/10.1038/s41562-019-0802-4

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