最古の緑藻類

 最古の緑藻類に関する研究(Tang et al., 2020)が公表されました。光合成を行う緑色植物(緑色植物亜界)は分子時計やバイオマーカー分析により、約25億~16億年前となる古原生代から約7億2000万~6億3500万年前となるクライオジェニアン紀までの間に出現した、と推定されています。しかし、化石証拠が存在しないため、その年代を特定することは困難でした。また、緑色植物が多細胞性を発達させた時期も明らかにされていません。

 この研究は、中華人民共和国遼寧省の約10億年前となる南芬(Nanfen)累層から発見された新種の化石緑藻類(Proterocladus antiquus)を報告しています。この緑藻類新種は、年代が古いにも関わらず、多細胞性・分化して分岐した細胞・根のような構造など、現在の緑藻類と一致する複数の特徴を示しています。この研究は、植物界の分岐が化石による従来の想定よりも早かったという分子時計の推定の証明に役立つ、と結論づけ、古代海洋でのエネルギー捕捉に関する疑問の解決に役立つ可能性も指摘しています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


化石:最古の緑藻類が発見された

 約10億年前の岩石から発見されたミリメートルサイズの多細胞緑藻類の化石を記載した論文が、Nature Ecology & Evolution に掲載される。

 光合成を行う緑色植物(緑色植物亜界)は、(分子時計やバイオマーカー分析によって)古原生代(25億~16億年前)からクライオジェニアン紀(7億2000万~6億3500万年前)までの間に生じたと推定されている。しかし、化石証拠が存在しないため、その年代を特定することは困難であった。また、緑色植物が多細胞性を発達させた時期も明らかにされていない。

 Qing Tangたちは、10億年前のNanfen累層(中国遼寧省)から発見された新種の化石緑藻類を発表する。Proterocladus antiquusと命名されたその緑藻類種は、年代が古いにもかかわらず、多細胞性、分化して分岐した細胞、そして根のような構造など、現在の緑藻類と一致する複数の特徴を示している。

 研究チームはP. antiquusの発見について、植物界の分岐が化石による従来の想定よりも早かったことを支持する分子時計の推定を裏付けるのに役立つものだと結論付けている。それは、古代海洋でのエネルギー捕捉に関する疑問の解決に役立つ可能性もある。



参考文献:
Tang Q. et al.(2020): A one-billion-year-old multicellular chlorophyte. Nature Ecology & Evolution, 4, 4, 543–549.
https://doi.org/10.1038/s41559-020-1122-9

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