狩猟採集民集団における親族の少なさ
取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、狩猟採集民集団における親族の少なさに関する研究(Dyble et al., 2015)が公表されました。日本語の解説記事もあります。これまでの研究では、狩猟採集民集団内に親族が少ないことの一因として、夫婦になると家族を残して家を出るような夫婦の結びつき、つまり生涯にわたる一夫一婦の関係が注目されてきました。この研究は、狩猟採集民がこのような居住形態をとるようになった経緯をさらに深く理解するために、行動モデルを作成しました。
このモデルには2種類あり、一つは所帯をもつ場所に関して狩猟採集民の夫婦両方が同等の権限をもつモデルで、もう一つは夫婦の一方だけが権限をもつモデルです。この研究は、男女両方が生活場所について決定権をもつ場合、夫も妻もキャンプにおける自分の親族の数を最大限増やそうとして相互の親族のいるキャンプに移動するので、男性あるいは女性だけが決定権をもつ場合よりも、個々のコミュニティ内の近縁者の数はかなり少なくなることを見出しました。フィリピンの先住民族であるアイタ(Agta)とアフリカ中央部のムベンジェレ(Mbendjele)もしくはバヤカ(Bayaka)という現代狩猟採集民社会のデータは、このモデルと厳密に一致しました。
この研究は、男女平等によりキャンプ内の人々の血縁性は常に弱まるようであるものの、重要なのは、その結果として親族が1人以上住んでいるキャンプの数が増えるので、資源や戦争のような複雑な要因がなくても、集団間の協力と情報交換の道筋ができる、と指摘します。この研究は、人間社会の発展と行動進化を現在理解するうえで、重要な役割を果たすと期待されます。それは、階層的で女性が拡散するシステムから、複数拠点を有する平等主義的な社会への移行で、これは親族関係にない者の間の社会的ネットワークや文化的蓄積や協力を発展させるだろう、というわけです。
参考文献:
Dyble M. et al.(2015): Sex equality can explain the unique social structure of hunter-gatherer bands. Science, 348, 6236, 796-798.
https://doi.org/10.1126/science.aaa5139
このモデルには2種類あり、一つは所帯をもつ場所に関して狩猟採集民の夫婦両方が同等の権限をもつモデルで、もう一つは夫婦の一方だけが権限をもつモデルです。この研究は、男女両方が生活場所について決定権をもつ場合、夫も妻もキャンプにおける自分の親族の数を最大限増やそうとして相互の親族のいるキャンプに移動するので、男性あるいは女性だけが決定権をもつ場合よりも、個々のコミュニティ内の近縁者の数はかなり少なくなることを見出しました。フィリピンの先住民族であるアイタ(Agta)とアフリカ中央部のムベンジェレ(Mbendjele)もしくはバヤカ(Bayaka)という現代狩猟採集民社会のデータは、このモデルと厳密に一致しました。
この研究は、男女平等によりキャンプ内の人々の血縁性は常に弱まるようであるものの、重要なのは、その結果として親族が1人以上住んでいるキャンプの数が増えるので、資源や戦争のような複雑な要因がなくても、集団間の協力と情報交換の道筋ができる、と指摘します。この研究は、人間社会の発展と行動進化を現在理解するうえで、重要な役割を果たすと期待されます。それは、階層的で女性が拡散するシステムから、複数拠点を有する平等主義的な社会への移行で、これは親族関係にない者の間の社会的ネットワークや文化的蓄積や協力を発展させるだろう、というわけです。
参考文献:
Dyble M. et al.(2015): Sex equality can explain the unique social structure of hunter-gatherer bands. Science, 348, 6236, 796-798.
https://doi.org/10.1126/science.aaa5139
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