大河ドラマ『麒麟がくる』第10回「ひとりぼっちの若者」

 明智光秀(十兵衛)のことで悩み元気のない駒は、孤児だった自分を迎え入れてくれた旅芸人一座の座長の伊呂波太夫と再会します。伊呂波太夫の一座は各地を巡っており、尾張の織田信秀も訪ねていました。駒は伊呂波太夫から、子供の頃自分を火事から救ってくれた美濃の人物は、桔梗の紋の服を着ていた、と知らされます。ということは、明智一族で、光秀の亡父だったかもしれません。1549年(西暦は厳密な換算ではなく、1年単位での換算です)11月、三河に今川軍攻め寄せ、織田信秀の息子の信広が捕らえられます。今川は織田に、織田の人質となっている松平竹千代(徳川家康)と信広の交換を要求します。

 この人質交換で三河が今川に制圧されることを懸念した斎藤利政(道三)は、光秀に尾張に行って情報を収集するよう命じます。信長は人質交換に反対し、異母兄の信広を見殺しにすべきと信秀に進言します。信長の母の土田御前は、弟の信勝を後継者とするよう進言しますが、信秀は、秩序を乱すべきでないと退けます。帰蝶に会いに行った光秀は信長と再会します。光秀は気づかれていないと思っていたようですが、信長は覚えていました。鉄砲の生産地を当てたこともあり、光秀をやや気に入ったのか、信長は母の愛を求めて得られなかった自分の心情を打ち明けます。そこへ竹千代がやって来て、自分の父(松平広忠)を殺されたことは気にしない、と言います。

 今回は、駒の過去が明かされたこともありますが、やや明かされた信長の人物像と、信長と竹千代のやり取りが見どころでした。信長は、まだ思慮の足りないところがあるとはいえ、冷酷なところも鋭いところもあり、少年時代の信長としては人物造形に成功しているように思います。竹千代は、ひじょうに聡明で精神的に強い子供として描かれています。本作におけるこれまでの竹千代の扱いは大きいので、家康が今後重要な役割を果たすのではないか、と予感させます。信長も竹千代も怪物じみたところがあるのに対して、光秀は優秀ではあるものの、まだ底知れない怖さは見せていないように思います。これまでの作風から推測すると、未登場の羽柴秀吉(藤吉郎)も怪物的な人物のように思います。そうした怪物たちの間で光秀が翻弄され、本能寺の変が起きる、という展開なのかもしれません。ともかく、序盤からしっかり伏線が張られて、それが回収される予感がしますから、今後もたいへん楽しみです。

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