新生児の代謝に影響を与える母親の腸内微生物
母親の腸内微生物が新生児の代謝に影響を与えることを報告した研究(Kimura et al., 2020)が公表されました。日本語の解説記事もあります。バランスの取れた微生物叢は良好な健康状態と関連しており、微生物叢の異常や変化は、肥満・心疾患・糖尿病など複数の疾患および障害と関連しています。母親の微生物叢が乳児の健康に与える影響は充分立証されていますが、胎児の段階で母親の腸内微生物が子の微生物叢にどのように影響するのか、あまり明らかになっていません。
この研究は、とくに細胞および腸内微生物と器官のシグナル伝達を刺激する微生物叢由来代謝物である短鎖脂肪酸(SCFA)に重点を置き、マウスモデルでこの問題を検証しました。その結果、妊娠している母親の腸内微生物によって作られた短鎖脂肪酸が、GPR41およびGPR43(脂肪細胞上のタンパク質受容体)の細胞シグナル伝達を介して子の神経細胞・腸細胞・膵臓細胞の分化を刺激する、と明らかになりました。この発達過程は子がバランスの取れたエネルギーレベルを維持するうえで有用であり、微生物を完全に欠損した母親の子は肥満や耐糖能障害などのメタボリックシンドロームに非常にかかりやすい、と明らかになりました。
これらの知見からは、たとえば食事の変更を推奨するなど、母親の微生物叢を標的とすることで、子を将来の代謝疾患から守る予防戦略を提供できる可能性が示唆されます。またこの研究は、1つの特定のSCFA(プロピオン酸)が、子の代謝疾患発症予防において重要な役割を果たした、と明らかにしました。したがって、プロピオンの補給が、可能性のある治療経路となるかもしれませんが、妊娠中のこの方法の安全性と有効性はまだ決定されていない、とも指摘されています。
参考文献:
Kimura I. et al.(2020): Maternal gut microbiota in pregnancy influences offspring metabolic phenotype in mice. Science, 367, 6481, eaaw8429.
https://doi.org/10.1126/science.aaw8429
この研究は、とくに細胞および腸内微生物と器官のシグナル伝達を刺激する微生物叢由来代謝物である短鎖脂肪酸(SCFA)に重点を置き、マウスモデルでこの問題を検証しました。その結果、妊娠している母親の腸内微生物によって作られた短鎖脂肪酸が、GPR41およびGPR43(脂肪細胞上のタンパク質受容体)の細胞シグナル伝達を介して子の神経細胞・腸細胞・膵臓細胞の分化を刺激する、と明らかになりました。この発達過程は子がバランスの取れたエネルギーレベルを維持するうえで有用であり、微生物を完全に欠損した母親の子は肥満や耐糖能障害などのメタボリックシンドロームに非常にかかりやすい、と明らかになりました。
これらの知見からは、たとえば食事の変更を推奨するなど、母親の微生物叢を標的とすることで、子を将来の代謝疾患から守る予防戦略を提供できる可能性が示唆されます。またこの研究は、1つの特定のSCFA(プロピオン酸)が、子の代謝疾患発症予防において重要な役割を果たした、と明らかにしました。したがって、プロピオンの補給が、可能性のある治療経路となるかもしれませんが、妊娠中のこの方法の安全性と有効性はまだ決定されていない、とも指摘されています。
参考文献:
Kimura I. et al.(2020): Maternal gut microbiota in pregnancy influences offspring metabolic phenotype in mice. Science, 367, 6481, eaaw8429.
https://doi.org/10.1126/science.aaw8429
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