航空調査によるマヤ文化の見直し

 取り上げるのがたいへん遅れてしまいましたが、航空調査によるマヤ文化の見直し関する研究(Canuto et al., 2018)が公表されました。日本語の解説記事もあります。マヤ低地中央部は大部分が深い森林に覆われた地域のため新たな遺跡の発見は困難で、1集落を完全に地図化して特徴を明確にするには長い年月を必要とします。そのため、マヤ文化の都市生活様式や人口や土地利用や社会政治的複雑性についての情報は限られていました。しかし航空調査では、レーザー光線のパルスを使って土地被覆と地形の3D地図を作製する技術が用いられ、広範囲にわたる林冠の下の地面の詳しい地図が迅速に作製されるので、建造物や道路や農業の様子を景観スケールで記録できます。この研究は、マヤ低地地域についてこれまでで最大規模の航空調査の結果を発表しました。

 この研究は、グアテマラのペテン県にある隣り合わない合計2000㎢の12地域の地図を作製し、マヤ低地の様々な地域を対象に、都市から奥地までのマヤ集落の特徴を明らかにしました。この研究は、61000以上の古代建造物が確認されたことから、紀元後650~800年頃となる古典期後期のマヤ低地一帯には1100万人以上が居住していた、と推測しています。また、この地域の各地にある多数の湿地帯は大幅に農業用に変えられ、道路網は遠く離れた都市や町をつなぎ、一部の都市や町はしっかりと要塞化されていた、と明らかにしました。これは予期していなかった結果でした。ただ、こうした航空調査は従来の「現場に実際に足を運ぶ」考古学的調査方法に替わるものでなく、それだけに頼らないよう、中位が喚起されています。


参考文献:
Canuto MA. et al.(2018): Ancient lowland Maya complexity as revealed by airborne laser scanning of northern Guatemala. Science, 361, 6409, eaau0137.
https://doi.org/10.1126/science.aau0137

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