『卑弥呼』第33話「倭言葉」
『ビッグコミックオリジナル』2020年2月5日号掲載分の感想です。前回は、ミマト将軍が配下の者たちに、そなたらは家臣ではなく友だ、と言うところで終了しました。今回は、ヤノハが日向(ヒムカ)での幼少時を回想する場面から始まります。日向には内海(瀬戸内海でしょうか)や外海から多くの異人が訪れていました。肌の色の濃い男性二人に怯えるヤノハを、肌の色や顔立ちで人を判断してはいけない、と義母は諭します。男性二人の言葉も分からないと言うヤノハに、方言というか南の島の倭言葉だ、と義母は教えます。倭言葉は元々住んでいた人と、東西南北の島と大陸から来た人の言葉が混ざったものなので、心を空にして命がけで聞くと理解できる、と義母はヤノハに教えます。縄文時代の言語と弥生時代に大陸や周囲の島から流入してきた言語との混合により祖型日本語が形成された、という設定でしょうか。
場面は現在に戻って鬼八の支配する千穂の祭祀場です。「鬼」たちの王らしき人物が刀を掲げて言葉を発すると、周囲の者たちも声をあげて呼応します。一斉に攻められれば我々はひとたまりもない、とオオヒコが懸念するなか、ヤノハはミマアキとクラトに指示を出し、「鬼」たちの王らしき男に攻めかかって制圧し、動けば王を殺す、と周囲の者たちを牽制します。周囲の者たちの動きは止まりますが、いつまで牽制できるのか確証はないため、「王」を人質に包囲を抜けるよう、イクメはヤノハに提案します。しかしヤノハは、ミマト将軍の援軍を待つ、と返答します。するとミマト将軍の娘のイクメは、父は勝つ戦をするので、本隊が来ないうちには攻めいらないだろう、と懸念します。しかしヤノハは、鬼八軍の最大の武器は恐怖なので、鬼八が人と分かれば、少人数でも勝算ありと判断して動くだろう、と答えます。
すると、盾で体を防護したミマト将軍率いる兵士たちが鬼八の男たちを倒しながら現れます。兵数で圧倒されている相手をどのように倒したのか、と疑問に思うイクメに、鬼八たちは黒曜石製武器を使っており、鉄(カネ)も青銅(アオカネ)も知らないようだ、と説明します。しかし、鬼八たちの「王」を捕虜とし、ミマト将軍の兵が合流した後、鬼八たちに動きはありません。鬼八たちの「王」が命を捨てる覚悟ができた時、総攻撃が始まるが、テヅチ将軍の本隊が到着する巳の刻(午前10時頃)前に総攻撃が始まれば、厳しい覚悟をしなければならない、とミマト将軍はヤノハに状況を報告します。ヤノハはイクメに、悲観的にならないよう、諭します。
沈黙が続いた後、突如として「王」も祭祀場を包囲している男たちも、呪文のようなものを唱え始めます。ミマト将軍とイクメは戦いの合図ではないか、と警戒しますが、ヤノハは、古の倭言葉と気づき、心を空にして命がけで聞くよう、イクメに命じます。すると、イクメにもその言葉が理解できました。この先の詞はイクメに教えてもらったので分かる、命懸けのついでに時間稼ぎにやってみる価値はある、と呟いたヤノハは、ミマアキとクラトを祭壇から降ろして自分が上がり、天降ます時に、先駆者還曰く、一神有りて天八達之衢に居り、上は高天原を光し、下は葦原中國を光す、と天孫降臨神話の一節を唱え始めます。すると、鬼八たちは呪文らしきものを止め、ヤノハをアマテラスオホミカミ・オホヒルメ(天照大御神)と称え始めます。その直後、テヅチ将軍の率いる本隊が到来し、我々の勝利だ、とオオヒコは言いますが、これは日見子(卑弥呼)様(ヤノハ)お一人の勝利だ、とミマト将軍は訂正し、イクメも父に同意します。鬼八たちが平伏してヤノハを崇めているところで今回は終了です。
今回は、ヤノハが鬼八たちを精神的に制圧するところが描かれました。『三国志』によると卑弥呼(日見子)は鬼道により人々を掌握した、とありますから、ヤノハは鬼八たちを配下とするのでしょう。鬼八の武器は他の倭の人々と比較して見劣りするようですが、自領内とはいえ、山社(ヤマト)の精兵を多数殺害するくらいの戦闘力があり、森林や山地での活動には長けているようですから、ヤノハが倭国で権威を確立していくさいに、重要な戦力となりそうです。
今回は、鬼八がどのような集団なのか、手がかりも示されました。本作では、縄文時代の言語と弥生時代に大陸や周囲の島から流入してきた言語との混合により祖型日本語が形成された、という設定のようなので、言語では地域差が大きいようです。そのため、鬼八のように孤立していた集団の言語はとくに、他地域の人々にとって聞き取るのは難しいようです。しかし、共通要素もあるので、ヤノハやイクメは理解できた、ということなのでしょう。鬼八がどのような集団なのか、まだ謎は多いので、今後明かされていくのが楽しみです。なお、とくに予告はありませんでしたが、次号は休載のようで、残念です。
場面は現在に戻って鬼八の支配する千穂の祭祀場です。「鬼」たちの王らしき人物が刀を掲げて言葉を発すると、周囲の者たちも声をあげて呼応します。一斉に攻められれば我々はひとたまりもない、とオオヒコが懸念するなか、ヤノハはミマアキとクラトに指示を出し、「鬼」たちの王らしき男に攻めかかって制圧し、動けば王を殺す、と周囲の者たちを牽制します。周囲の者たちの動きは止まりますが、いつまで牽制できるのか確証はないため、「王」を人質に包囲を抜けるよう、イクメはヤノハに提案します。しかしヤノハは、ミマト将軍の援軍を待つ、と返答します。するとミマト将軍の娘のイクメは、父は勝つ戦をするので、本隊が来ないうちには攻めいらないだろう、と懸念します。しかしヤノハは、鬼八軍の最大の武器は恐怖なので、鬼八が人と分かれば、少人数でも勝算ありと判断して動くだろう、と答えます。
すると、盾で体を防護したミマト将軍率いる兵士たちが鬼八の男たちを倒しながら現れます。兵数で圧倒されている相手をどのように倒したのか、と疑問に思うイクメに、鬼八たちは黒曜石製武器を使っており、鉄(カネ)も青銅(アオカネ)も知らないようだ、と説明します。しかし、鬼八たちの「王」を捕虜とし、ミマト将軍の兵が合流した後、鬼八たちに動きはありません。鬼八たちの「王」が命を捨てる覚悟ができた時、総攻撃が始まるが、テヅチ将軍の本隊が到着する巳の刻(午前10時頃)前に総攻撃が始まれば、厳しい覚悟をしなければならない、とミマト将軍はヤノハに状況を報告します。ヤノハはイクメに、悲観的にならないよう、諭します。
沈黙が続いた後、突如として「王」も祭祀場を包囲している男たちも、呪文のようなものを唱え始めます。ミマト将軍とイクメは戦いの合図ではないか、と警戒しますが、ヤノハは、古の倭言葉と気づき、心を空にして命がけで聞くよう、イクメに命じます。すると、イクメにもその言葉が理解できました。この先の詞はイクメに教えてもらったので分かる、命懸けのついでに時間稼ぎにやってみる価値はある、と呟いたヤノハは、ミマアキとクラトを祭壇から降ろして自分が上がり、天降ます時に、先駆者還曰く、一神有りて天八達之衢に居り、上は高天原を光し、下は葦原中國を光す、と天孫降臨神話の一節を唱え始めます。すると、鬼八たちは呪文らしきものを止め、ヤノハをアマテラスオホミカミ・オホヒルメ(天照大御神)と称え始めます。その直後、テヅチ将軍の率いる本隊が到来し、我々の勝利だ、とオオヒコは言いますが、これは日見子(卑弥呼)様(ヤノハ)お一人の勝利だ、とミマト将軍は訂正し、イクメも父に同意します。鬼八たちが平伏してヤノハを崇めているところで今回は終了です。
今回は、ヤノハが鬼八たちを精神的に制圧するところが描かれました。『三国志』によると卑弥呼(日見子)は鬼道により人々を掌握した、とありますから、ヤノハは鬼八たちを配下とするのでしょう。鬼八の武器は他の倭の人々と比較して見劣りするようですが、自領内とはいえ、山社(ヤマト)の精兵を多数殺害するくらいの戦闘力があり、森林や山地での活動には長けているようですから、ヤノハが倭国で権威を確立していくさいに、重要な戦力となりそうです。
今回は、鬼八がどのような集団なのか、手がかりも示されました。本作では、縄文時代の言語と弥生時代に大陸や周囲の島から流入してきた言語との混合により祖型日本語が形成された、という設定のようなので、言語では地域差が大きいようです。そのため、鬼八のように孤立していた集団の言語はとくに、他地域の人々にとって聞き取るのは難しいようです。しかし、共通要素もあるので、ヤノハやイクメは理解できた、ということなのでしょう。鬼八がどのような集団なのか、まだ謎は多いので、今後明かされていくのが楽しみです。なお、とくに予告はありませんでしたが、次号は休載のようで、残念です。
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