最古のサソリ

 最古のサソリに関する研究(Wendruff et al., 2020)が公表されました。サソリは海中から陸上に移動した最初期動物群の1系統ですが、化石記録が少ないため、陸上での生活にいつどのように適応したのか、明らかになっていません。この研究は、アメリカ合衆国ウィスコンシン州のウォーキシャ生物相で発見され、約4億3750万年~4億3650万年前となるシルル紀初期のものと年代測定された、保存状態の良好な新属新種のサソリ(Parioscorpio venator)化石標本2点について報告しています。この化石は、スコットランドで発見された、これまで最古とされてきたサソリ種(Dolichophonus loudonensis)よりも古いことになります。

 この新属新種サソリには、他の初期の海洋生物に見られる祖先的特徴(複眼など)がいくつか見られる一方で、現代のサソリの特徴(先端に毒針のある尾など)も見られます。この新属新種サソリの2点の標本のいずれにも、内部構造が細かな点まで示されており、たとえば、くびれた砂時計型の構造体は、胴体の中心部分に沿っており、かなりの領域に及んでいます。この構造体は、現代のサソリだけでなく、現代のカブトガニの循環器系や呼吸器系とひじょうによく似ている、と指摘されています。この新属新種サソリの化石には肺や鰓が見つかりませんでしたが、陸上で呼吸できるカブトガニに似ていることから、最古のサソリは完全に陸生化していなかったかもしれないものの、陸上に移動して、長時間滞在していた可能性が示唆されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【古生物学】最も古くから陸上を探検していたかもしれない先史時代のサソリの新種

 シルル紀初期(約4億3750万年~4億3650万年前)のものとされる先史時代のサソリの新属新種Parioscorpio venatorについて記述した論文が掲載される。今回の研究で得られた知見からは、P. venatorがこれまでに報告されたものの中で最古のサソリ種で、その海洋生息地から陸上に移動する能力を有していた可能性が示唆されている、この行動は、現代のカブトガニの行動に似ている。

 サソリは海中から陸上に移動した最初の動物の1つだが、化石記録が少ないため、陸上での生活にいつどのように適応したのかは明らかになっていない。

 今回Andrew Wendruffたちは、米国ウィスコンシン州のウォーキシャ生物相で発見され、シルル紀初期のものと年代測定された保存状態の良好な未知の化石種のサソリの標本2点について記述している。今回の研究により、スコットランドで発見され、これまで最も古いサソリ種とされてきたDolichophonus loudonensisよりも古い化石となった。

 P. venatorには、他の初期の海洋生物に見られる原始的な特徴(複眼など)がいくつか見られる一方で、現代のサソリの特徴(先端に毒針のある尾など)も見られる。2点のP. venatorの標本のいずれにも、内部構造が細かな点まで示されており、例えば、くびれた砂時計型の構造体が、胴体の中心部分に沿って、かなりの領域に及んでいる。この構造体は、現代のサソリだけでなく、現代のカブトガニの循環器系や呼吸器系と非常によく似ているとWendruffたちは考えている。

 P. venatorの化石には肺や鰓が見つからなかったが、陸上で呼吸できるカブトガニに似ていることから、最古のサソリが完全に陸生化していなかったかもしれないが、陸上に移動して、長時間滞在していた可能性が示唆されている。



参考文献:
Wendruff AJ. et al.(2020): A Silurian ancestral scorpion with fossilised internal anatomy illustrating a pathway to arachnid terrestrialisation. Scientific Reports, 10, 14.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-56010-z

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