永久凍土の古気候学的証拠
永久凍土の古気候学的証拠に関する研究(Vaks et al., 2020)が公表されました。北極圏では気候変動が急速に生じており、予測では、今世紀半ばまでに夏季の海氷が完全に失われる、と示唆されています。北半球の永久に凍った土壌(永久凍土)の温暖化に対する感度はあまり分かっておらず、その長期的傾向の監視は、海氷の傾向の監視より困難です。本論文は古気候データを用いて、シベリアの永久凍土は、北極圏に海氷が存在する場合は温暖化に対して強靭であるものの、海氷が存在しない場合は脆弱である、と示します。
本論文は、連続した永久凍土の南端に位置するシベリアの洞窟の炭酸塩堆積物(洞窟二次生成物)のウラン–鉛年代測定により、その上の土が永久に凍っていなかった期間を複数明らかにしました。洞窟二次生成物の記録は、赤道から極への熱輸送が増大し、北半球が温暖化した時期である150万年前頃に始まりました。洞窟二次生成物の成長からは、洞窟の場所ではその当時永久凍土が存在しておらず、北半球が寒冷化した135万年前頃から頻繁に存在するようになり、40万年前頃以降に永続的になった、と示されました。この歴史には、海氷は40万年前頃までほとんど存在しなかったものの、その時期から永続的に存在するという、北極海の年間を通した海氷の歴史が反映されています。
海氷が存在する場合の永久凍土の強靭さと、海氷が存在しない場合に増大する永久凍土の脆弱さは、熱輸送と水蒸気輸送の両方の変化により説明できます。海氷の減少は、北極圏の大気の温暖化の一因となる可能性があり、内陸奥地の温暖化をもたらし得ます。さらに、北極圏の開水域も、水蒸気の生成源を増やし、シベリアの秋季の降雪を増やして、地面を冬季の低い気温から断熱します。こうした過程により、40万年前頃以前の氷のない北極圏と永久凍土の融解の関係が説明されます。こうした過程が現代の気候変動の間継続すれば、夏季の北極海の氷が消失して、シベリアの永久凍土の融解が加速されるだろう、と本論文は指摘します。更新世の長期の気候変動は、人類進化との関連でも注目されます。
参考文献:
Vaks A. et al.(2020): Palaeoclimate evidence of vulnerable permafrost during times of low sea ice. Nature, 577, 7789, 221–225.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1880-1
本論文は、連続した永久凍土の南端に位置するシベリアの洞窟の炭酸塩堆積物(洞窟二次生成物)のウラン–鉛年代測定により、その上の土が永久に凍っていなかった期間を複数明らかにしました。洞窟二次生成物の記録は、赤道から極への熱輸送が増大し、北半球が温暖化した時期である150万年前頃に始まりました。洞窟二次生成物の成長からは、洞窟の場所ではその当時永久凍土が存在しておらず、北半球が寒冷化した135万年前頃から頻繁に存在するようになり、40万年前頃以降に永続的になった、と示されました。この歴史には、海氷は40万年前頃までほとんど存在しなかったものの、その時期から永続的に存在するという、北極海の年間を通した海氷の歴史が反映されています。
海氷が存在する場合の永久凍土の強靭さと、海氷が存在しない場合に増大する永久凍土の脆弱さは、熱輸送と水蒸気輸送の両方の変化により説明できます。海氷の減少は、北極圏の大気の温暖化の一因となる可能性があり、内陸奥地の温暖化をもたらし得ます。さらに、北極圏の開水域も、水蒸気の生成源を増やし、シベリアの秋季の降雪を増やして、地面を冬季の低い気温から断熱します。こうした過程により、40万年前頃以前の氷のない北極圏と永久凍土の融解の関係が説明されます。こうした過程が現代の気候変動の間継続すれば、夏季の北極海の氷が消失して、シベリアの永久凍土の融解が加速されるだろう、と本論文は指摘します。更新世の長期の気候変動は、人類進化との関連でも注目されます。
参考文献:
Vaks A. et al.(2020): Palaeoclimate evidence of vulnerable permafrost during times of low sea ice. Nature, 577, 7789, 221–225.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1880-1
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