マメ科植物の根粒共生の遺伝的基盤

 マメ科植物の根粒共生の遺伝的基盤に関する研究(Soyano et al., 2019)が公表されました。日本語の解説記事もあります。窒素は全生物が生命を維持するために必須な成分です。一般的に、植物は硝酸塩やアンモニアといった窒素栄養素を土壌から吸収します。一方マメ科植物は、根粒と呼ばれる特殊な器官に窒素固定細菌を共生させており、ほとんどの生物が利用できない空気中の窒素を栄養素として使用できます。そのため、マメ科植物は窒素栄養素が乏しい痩せた土地でも生育できます。

 根粒共生は、植物にとっても、またその恩恵に預かる人間にとってもたいへん有用な形質ですが、マメ科植物とマメ科に近縁な一部の植物だけで見られる現象です。これまでの研究により、根粒共生に関わる遺伝子についての情報は次第に蓄積されてきていますが、マメ科植物の根粒共生の能力が進化の過程でどのように獲得されてきたのかは、よく分かっていませんでした。

 この研究は、根粒共生における根粒の形成過程に、植物に一般的に存在する側根の形成メカニズムの一部が流用されている、と新たに発見しました。この研究は、マメ科植物モデル植物のミヤコグサ(Lotus japonicus)を用いて、側根の形成を制御する遺伝子として知られるASL18a遺伝子が、他の根粒形成遺伝子と協調しながら根粒の発達を制御する、と明らかにしました。これは、マメ科植物の根粒共生の能力が、植物に一般的な既存のシステムを上手く取り入れながら獲得されてきたことを示しています。


参考文献:
Soyano T. et al.(2019): A shared gene drives lateral root development and root nodule symbiosis pathways in Lotus. Science, 366, 6468, 1021–1023.
https://doi.org/10.1126/science.aax2153

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