マントルの動きにより3000万年にわたって維持されてきたナイル川

 ナイル川が3000万年にわたってマントルの動きにより維持されてきたことを報告する研究(Faccenna et al., 2019)が公表されました。大規模な河川の排水系は長い間謎となっており、ナイル川の進化については2つの相反する可能性が示唆されています。一方は、エチオピアから地中海へ流れる川の流れは過去3000万年の間活動的であったと想定しており、もう一方は、初期の排水路はエチオピアから西向きにコンゴ盆地まで、あるいは北西にスルト盆地に達しており、地中海と連結したのはもっと遅く500万から800万年前であった、と想定しています。

 この研究は、現在の排水路が初期に確立したことを示唆する、地球ダイナミクスモデルおよび現在の地質学的・地球物理学的証拠を提示しています。この研究は、地球マントルのコンベヤーベルト様の動き対流セル)が約3000万年前から地球マントル内で動き出し、エチオピアの下で上昇流と地形の隆起、さらに地中海東部の下で沈降に関連した下降流をもたらし、これが地表の地形を安定させ、現在の排水路のパターンにつながった、と明らかにしました。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【地球科学】地球のマントルの動きがナイル川を3000万年にわたって維持してきた

 ナイル川の排水路は過去3000万年にわたって存続してきたが、これは地球マントルのコンベヤーベルト様の動き(つまり、「対流セル」)が地表の地形を安定させたからであると報告する論文が掲載される。

 大規模な河川の排水系は長い間謎となっており、ナイル川の進化については2つの相反する可能性が示唆されている。1つのシナリオでは、エチオピアから地中海へ流れる川の流れは過去3000万年の間、活動的であったとされており、もう1つのシナリオでは、初期の排水路はエチオピアから西向きにコンゴ盆地まで、あるいは北西にスルト盆地に達しており、地中海と連結したのはもっと遅く500万から800万年前であったとされている。

 今回、Claudio Faccennaたちは、現在の排水路が初期に確立したことを示唆する、地球ダイナミクスモデルおよび現在の地質学的・地球物理学的証拠を提示している。彼らは、対流セルがおよそ3000万年前から地球マントル内で動き出し、エチオピアの下で上昇流と地形の隆起、そして地中海東部の下で沈降に関連した下降流をもたらし、これが現在の排水路のパターンにつながったことを見いだしている。



参考文献:
Faccenna C. et al.(2019): Role of dynamic topography in sustaining the Nile River over 30 million years. Nature Geoscience, 12, 12, 1012–1017.
https://doi.org/10.1038/s41561-019-0472-x

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