地球規模のミミズの生物多様性パターン


 地球規模のミミズの生物多様性パターンに関する研究(Phillips et al., 2019)が公表されました。日本語の解説記事もあります。この研究は、世界57ヶ国の7000ヶ所近いサンプリング場所で得られたミミズに関するデータを評価しました。ミミズはひじょうに多様な生物の総称で、世界中の土壌に豊富に分布しています。ヒトがミミズの姿そのものを見かけることはあまりありませんが、ミミズが行動には土壌環境を改変させる力があります。ミミズはトンネルを掘り、地下の行動圏を食べながら進むさいに、生態系全体にわたって地盤改良や有機物分解や栄養循環といった重要な機能を果たしています。しかし、「生態系エンジニア」としてこうした重要な役割を果たしているにもかかわらず、地球規模のミミズの多様性や分布、あるいはミミズが直面している脅威に関してはほとんど知られていません。

 この研究は、こうした地球規模のパターンを理解することは、気候変動などに起因してミミズの群集が変化した場合に、ミミズにより提供されている重要な生態系機能や生態系サービスがどのように変わるのか、予測するうえで重要だと指摘しています。この研究は、ミミズの群集の広範なデータセットをまとめ、多様性と個体数の地球規模のパターンを地図に表し、ミミズの生物多様性を形成している環境要因を評価して、地球全体にわたって地域ごとにミミズの群集をモデル化しました。その結果、気候変数、とくに降水量と気温が、世界規模でミミズの生物多様性を予測するさいに最も重要と示されました。

 こうしたパターンは地上の生物でも同様に観測されていますが、個体数と生物量の分布はまったく異なっています。この研究は、熱帯の低緯度地域で生物多様性が最大になる多くの動植物とは違い、ミミズの種の豊かさと個体数は一般に中緯度地域で最大になる、と明らかにしました。この結果により、ミミズの分布が気候に対してひじょうに敏感だと浮き彫りになりました。しかし、ミミズの群集が進行中の気候変動にどのように反応するのか、あるいは陸上生態系の機能全体にとってそれが何を意味するのかは、依然として不明なままである、とも指摘されています。


参考文献:
Phillips HRP. et al.(2019): Global distribution of earthworm diversity. Science, 366, 6464, 480–485.
https://doi.org/10.1126/science.aax4851

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