崩壊しやすくなった南極の棚氷

 南極の棚氷が崩壊しやすくなったことを報告した研究(Dickens et al., 2019)が公表されました。この研究は、過去の氷質量減少を駆動した要因と過去の氷質量減少が現状に及ぼした影響を調べるために、南極半島の北東端で採取された海底堆積物コアに保存されていた単細胞藻類の酸素同位体を分析し、6250年間の氷河融解水の流出に関する記録を構築しました。同位体値が低くなると、氷河から流出する淡水の量が増える関係にあります。この記録から、氷河からの流出量は1400年以降に増加傾向に転じ、1706年以降には前例のない水準に達し、さらに1912年以降には氷河の融解が顕著に加速した、と確認されました。これらの知見は、この地域の棚氷の薄化が約300年間に加速度的に進行し、そのため人為起源の温暖化が進むにつれて棚氷が崩壊しやすくなった、という可能性を示唆しています。

 この研究は、薄化の加速が南半球環状モードの変化と部分的に関連していた、と推測しています。この南半球環状モードの変化により、南極半島東部で偏西風が強くなり、大気の温暖化と棚氷の融解が起きましたが、その一方で温暖な海水がウェッデル環流に流入し、棚氷の底面融解を促進した可能性がある、というわけです。もっと最近になって、これと同様の南半球環状モードの変化が高い頻度で観測されるようになりましたが、これは、温室効果ガスの濃度とオゾン濃度低下による支配的影響を反映しており、今後、氷質量減少の加速につながる可能性がある、と指摘されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。


【気候科学】300年間の薄化で崩壊しやすくなったと考えられる南極の棚氷

 南極半島東部の棚氷は、数百年にわたる薄化のために崩壊しやすくなった可能性があるという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。

 今回、William Dickensたちの研究グループは、過去の氷質量減少を駆動した要因と過去の氷質量減少が現状に及ぼした影響を調べるために、南極半島の北東端で採取された海底堆積物コアに保存されていた単細胞藻類の酸素同位体を分析して、6250年間の氷河融解水の流出に関する記録を構築した。同位体値が低くなると、氷河から流出する淡水の量が増える関係にある。

 この記録から、氷河からの流出量は1400年以降に増加傾向に転じ、1706年以降には前例のない水準に達し、さらに1912年以降には氷河の融解が顕著に加速したことが認められた。これらの知見は、この地域の棚氷の薄化が約300年間に加速度的に進行し、そのため人為起源の温暖化が進むにつれて棚氷が崩壊しやすくなったという可能性を示唆している。

 Dickensたちは、薄化の加速が南半球環状モードの変化と部分的に関連していたと考えている。つまり、この南半球環状モードの変化によって、南極半島東部で偏西風が強くなり、大気の温暖化と棚氷の融解が起きたが、その一方で温暖な海水がウェッデル環流に流入し、棚氷の底面融解を促進した可能性があるというのだ。もっと最近になって、これと同様の南半球環状モードの変化が高い頻度で観測されるようになったが、これは、温室効果ガスの濃度とオゾン濃度低下による支配的影響を反映しており、今後、氷質量減少の加速につながる可能性がある。



参考文献:
Dickens WA. et al.(2019): Enhanced glacial discharge from the eastern Antarctic Peninsula since the 1700s associated with a positive Southern Annular Mode. Scientific Reports, 9, 14606.
https://doi.org/10.1038/s41598-019-50897-4

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック