退役軍人の心的外傷後ストレス障害の遺伝的解明
アメリカ合衆国の退役軍人の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の遺伝的解明に関する研究(Gelernter et al., 2019)が公表されました。成人の約7%が一生の間にPTSDを経験し、戦闘経験者のPTSD有病率が高い、と明らかになっています。PTSDの症状には、覚醒亢進や回避や心的外傷を引き起こした出来事の再体験などがあり、こうした症状によって日常生活が破壊されることもあります。しかし、心的外傷を受けると必ずPTSDを発症するわけではなく、遺伝的性質などの素因がPTSDのリスクに影響しています。
この研究は、アメリカ合衆国の「Million Veteran Program」の参加者165000人のデータを解析し、PTSDの再体験症状(心的外傷を引き起こした出来事に関する悪夢やフラッシュバックなど)の遺伝的関連を調べました。その結果、PTSDに関連する8つのゲノム領域が特定され、その中でストレスホルモン受容体をコードする副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体1(CRHR1)遺伝子と関連している可能性も明らかになりました。この関連解析は、ヨーロッパ系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人の両方のデータを使って実施されましたが、有意な関連が認められたのはヨーロッパ系だけでした。この研究は、ヨーロッパ系アメリカ人のサンプル数の多さが原因だった可能性を指摘しています。今後は、PTSDを発症しやすくなる遺伝子多様体が淘汰されなかった理由など、人類進化の観点からの研究の進展も期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
米国の退役軍人の心的外傷後ストレス障害の遺伝的解明
米国の退役軍人の遺伝情報を用いた大規模なゲノム規模関連解析が実施され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)における心的外傷の「再体験」症状に関連する複数の遺伝子バリアントが特定された。今回の研究では、ストレスホルモン受容体をコードする遺伝子が関連している可能性も明確に示された。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
一生の間にPTSDを経験する者は成人の約7%を占め、戦闘経験者のPTSD有病率が高い。PTSDの症状には、覚醒亢進、回避、心的外傷を引き起こした出来事の再体験などがあり、こうした症状によって日常生活が破壊されることもある。しかし、心的外傷を受けると必ずPTSDを発症するわけではなく、遺伝的性質などの素因がPTSDのリスクに影響している。
今回、Joel Gelernter、Murray Steinたちの研究グループは、米国のMillion Veteran Programの参加者16万5000人のデータを解析し、PTSDの再体験症状(心的外傷を引き起こした出来事に関する悪夢やフラッシュバックなど)の遺伝的関連を調べた。その結果、PTSDに関連する8つのゲノム領域が特定され、その中でストレスホルモン受容体をコードする副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体1(CRHR1)遺伝子と関連している可能性も明らかになった。今回の関連解析は、ヨーロッパ系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人の両方のデータを使って実施されたが、有意な関連が認められたのはヨーロッパ系だけだった。この研究グループは、ヨーロッパ系アメリカ人のサンプル数が多かったことが原因だった可能性があると指摘している。
参考文献:
Gelernter J. et al.(2019): Genome-wide association study implicates CHRNA2 in cannabis use disorder. Nature Neuroscience, 22, 9, 1394–1401.
https://doi.org/10.1038/s41593-019-0447-7
この研究は、アメリカ合衆国の「Million Veteran Program」の参加者165000人のデータを解析し、PTSDの再体験症状(心的外傷を引き起こした出来事に関する悪夢やフラッシュバックなど)の遺伝的関連を調べました。その結果、PTSDに関連する8つのゲノム領域が特定され、その中でストレスホルモン受容体をコードする副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体1(CRHR1)遺伝子と関連している可能性も明らかになりました。この関連解析は、ヨーロッパ系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人の両方のデータを使って実施されましたが、有意な関連が認められたのはヨーロッパ系だけでした。この研究は、ヨーロッパ系アメリカ人のサンプル数の多さが原因だった可能性を指摘しています。今後は、PTSDを発症しやすくなる遺伝子多様体が淘汰されなかった理由など、人類進化の観点からの研究の進展も期待されます。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
米国の退役軍人の心的外傷後ストレス障害の遺伝的解明
米国の退役軍人の遺伝情報を用いた大規模なゲノム規模関連解析が実施され、心的外傷後ストレス障害(PTSD)における心的外傷の「再体験」症状に関連する複数の遺伝子バリアントが特定された。今回の研究では、ストレスホルモン受容体をコードする遺伝子が関連している可能性も明確に示された。この結果を報告する論文が、今週掲載される。
一生の間にPTSDを経験する者は成人の約7%を占め、戦闘経験者のPTSD有病率が高い。PTSDの症状には、覚醒亢進、回避、心的外傷を引き起こした出来事の再体験などがあり、こうした症状によって日常生活が破壊されることもある。しかし、心的外傷を受けると必ずPTSDを発症するわけではなく、遺伝的性質などの素因がPTSDのリスクに影響している。
今回、Joel Gelernter、Murray Steinたちの研究グループは、米国のMillion Veteran Programの参加者16万5000人のデータを解析し、PTSDの再体験症状(心的外傷を引き起こした出来事に関する悪夢やフラッシュバックなど)の遺伝的関連を調べた。その結果、PTSDに関連する8つのゲノム領域が特定され、その中でストレスホルモン受容体をコードする副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体1(CRHR1)遺伝子と関連している可能性も明らかになった。今回の関連解析は、ヨーロッパ系アメリカ人とアフリカ系アメリカ人の両方のデータを使って実施されたが、有意な関連が認められたのはヨーロッパ系だけだった。この研究グループは、ヨーロッパ系アメリカ人のサンプル数が多かったことが原因だった可能性があると指摘している。
参考文献:
Gelernter J. et al.(2019): Genome-wide association study implicates CHRNA2 in cannabis use disorder. Nature Neuroscience, 22, 9, 1394–1401.
https://doi.org/10.1038/s41593-019-0447-7
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