大相撲秋場所千秋楽

 今場所は横綱・大関陣がきょくたんな不振で、大混戦となりました。大関の高安関は初日から、横綱の白鵬関は初日に負けて2日目から、横綱の鶴竜関は4連勝の後に3連敗し、8日目から休場となりました。鶴竜関の師匠の井筒親方(坂鉾関)が9日目に亡くなり、すでに状態が深刻なことは鶴竜関も今場所前から知っていたでしょうから、動揺して相撲が乱れてしまったのかもしれません。これで、横綱2人はともに途中休場となり、大関陣では豪栄道関と栃ノ心関というカド番の2人だけが出場を続けることになりました。

 栃ノ心関は、場所前から不調が伝えられていたので、勝ち越すのは難しいかな、と覚悟していましたが、やはり相撲内容がたいへん悪く、14日目に負け越しが決まり、6勝9敗で大関から再度陥落しました。膝の状態が悪そうですから、来場所10勝以上することはかなり難しそうで、残念ながらもう大関復帰はないでしょう。栃ノ心関は結局、大関としては二桁勝利がなく、大関として最初の場所で初日から5連勝だったのに、6日目に負傷してそのまま休場となったことが本当に悔やまれます。しかし、小結から大怪我で幕下まで落ち、そこから優勝して大関にまで昇進し、大関から陥落しても一度は復帰したのですから、新入幕の頃から10年以上応援し続けてきた私は、よくやってくれたと本当に感謝しています。

 豪栄道関は14日目まで優勝争いに絡み、10勝5敗で大関残留を決めました。若手が伸び悩んでいるので、もう少しは大関の地位を維持できそうです。横綱2人は満身創痍といった感じで、とくに鶴竜関は、もう引退に追い込まれていても不思議ではありませんが、若手が伸び悩んでいるため、横綱の地位を維持できているといった感じです。白鵬関はもう1~2年くらい現役を続けられそうですが、師匠が亡くなって気落ちしているだろう鶴竜関の方はたいへん心配で、年内の引退もあり得ると思います。若手が伸び悩んでいるだけに、何とか復活してもらいたいものですが。モンゴルやヨーロッパからの入門者もいるとはいえ、やはり人数では日本出身力士が大半を占めるだけに、日本社会の少子高齢化が進むなか、全体的な水準が以前より低下しているのではないか、と私は考えています。

 優勝争いは、14日目の時点で3敗の御嶽海関・貴景勝関・隠岐の海関に絞られました。まず、3敗同士の貴景勝関と隠岐の海関が対戦し、貴景勝関が隠岐の海関を圧倒して押し出しで勝ち、3敗を守りました。次に御嶽海関と遠藤関が対戦し、御嶽海関が立ち合いから圧倒して遠藤関に勝ち、貴景勝関と御嶽海関の優勝決定戦となりました。両者ともに千秋楽は素晴らしい内容で勝っただけに、優勝決定戦では熱戦が期待されましたが、貴景勝関が引いてしまい、あっさりと御嶽海関が勝って2回目の優勝を果たしました。それだけ御嶽海関の立ち合いの圧力が強かった、ということなのでしょう。貴景勝関は12勝3敗で大関復帰を決めました。若い大関だけに、横綱昇進まで期待したいところですが、研究されてきている感もあり、まだすぐに横綱に昇進できるだけの力はないように思います。また、貴景勝関は優勝決定戦で胸を負傷したかもしれず、この点も心配されます。

 来場所は、5日目から休場して1勝に終わり、かなり番付を下げるだろう逸ノ城関に期待しています。まあ、上体を起こされると脆いのは相変わらずで、攻略法が確立されている感もあり、大関昇進は難しそうですが、弱点を完全に克服するよりも、むしろその力強さを磨く方向で稽古し、何とか大関までは昇進してもらいたいものです。逸ノ城関は本来なら、照ノ富士関とともに、今頃横綱として君臨し、白鵬関も鶴竜関も引退に追い込んでいるくらいの逸材だったと思うのですが、本当に残念です。照ノ富士関は復調しつつあるとはいえ、以前の力を取り戻すのはもう無理でしょう。その意味でも、逸ノ城関には期待しています。

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