エディアカラ紀の蠕虫様動物

 エディアカラ紀の蠕虫様動物に関する研究(Chen et al., 2019)が公表されました。カンブリア紀の始まりとなる約5億4000万年前に生物は爆発的に進化し、現生動物のほぼ全てのボディープランはこの時に進化したと考えられています。カンブリア紀の直前となるエディアカラ紀にも生物は存在しましたが、その姿は現生のどの生物とも関連づけるのが困難です。しかし、左右相称動物の運動性の起源は、エディアカラ紀後期(約5億8000万~5億3900万年前)だったと考えられており、その証拠は、痕跡化石(痕跡・足跡・巣穴などの化石)によって得られています。ただ、少数の例外を除いて、どのような動物がエディアカラ紀後期にこうした足跡を残したのか、分かっていません。

 この研究は、中国南部の長江の峡谷にある、エディアカラ紀末期(約5億5100万〜5億3900万年前)となるDengying層から出土した化石を新属新種(Yilingia spiciformis)に分類しました。この新種化石は35点採集され、幅が約5~26 mm、長さが最大27cmで、約50個の体節からなる細長い分節した左右相称動物で、体は三裂単位の反復によって構成されている、と推定されています。各単位は1つの中心葉と後方を向く2つの側葉から構成され、これは体および体節の極性を示しています。また、13点の痕跡化石も発見され、体化石と直接つながったmortichnium(動物が死ぬ直前に残した痕跡)の化石が含まれていました。このmortichniumは、幅が25 mmであることなどといった特徴から、Yilingia属動物の運動によって形成されたものと示されています。そのためこの新種化石は、連続的な這い跡を作る能力を持つことが示されたエディアカラ紀の既知で最古かつ唯一の体化石分類群と主張されています。

 これらの知見は、エディアカラ紀後期の数多くの痕跡化石を残した動物の正体に関する手掛かりになる、と指摘されています。また、この新種化石は左右相称動物である汎節足動物やステム群環形動物と近縁である可能性があり、左右相称動物における分節構造の起源の解明に役立つと考えられます。これまでにも、左右相称動物はカンブリア紀以前に進化した、と分子生物学からは予測されていましたが、その具体的な化石証拠が得られた、というわけです。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用(引用1および引用2)です。


【古生物学】初期の蠕虫様動物による「死の行進」

 約5億5100万年~5億3900万年前に生きていた蠕虫様動物の化石を紹介する論文が、今週掲載される。この論文には、この動物が死ぬ直前に残した痕跡(mortichnium)の詳細が記述されており、この動物が運動性を有していたことが示されている。これまでのところ、この時代の動物種で、動く能力が備わっていたことが実証された例は非常に少ない。

 動物に運動性が備わったのは、エディアカラ紀後期(約5億8000万~5億3900万年前)だったと考えられており、その証拠は、痕跡化石(痕跡、足跡、巣穴などの化石)によって得られている。しかし、少数の例外を除いて、どのような動物がこうした足跡を残したのかは分かっていない。

 今回、Shuhai Xiaoは、中国南部の長江の峡谷にあるDengying層から出土した化石種Yilingia spiciformisについて記述している。Xiaoたちは、その化石を35点採集し、幅が約5~26ミリメートル、長さが最大27センチメートルで、約50個の体節からなる動物だったと推定している。また、13点の痕跡化石も発見され、体化石と直接つながったmortichniumの化石が含まれていた。このmortichniumは、その特徴(幅が25ミリメートルであることなど)からYilingia属動物の運動によって形成されたものであることが示されている。

 今回の研究で得られた知見は、この時代の数多くの痕跡化石を残した動物の正体に関する手掛かりになると、Xiaoたちは結論している。


古生物学:分節した三裂の左右相称動物の死に際の痕跡から明らかになった初期の動物進化

古生物学:最初の蠕虫様動物の最期の歩み

 カンブリア紀は約5億4000万年前に生命の爆発的な進化で始まったことで知られ、現在生きている動物のほぼ全てのボディープランはこの時に進化したと考えられている。直前のエディアカラ紀にも生物は存在したが、それらは奇妙で、現生のどの生物とも関連付けるのは難しい。果たして、エディアカラ紀にも現代的な姿をした動物は存在したのだろうか。分子的研究からは肯定的な結果が得られているが、化石証拠は乏しく、異論は多い。今回S Xiaoたちは、中国で発見された、エディアカラ紀末期(5億5100万〜5億3900万年前)の細長くて分節した体を持つ蠕虫様動物の化石について報告している。この動物の体の幅は5〜26 mmほどで長さは27 cmに達する。この化石標本は、この動物が移動した際にできた堆積物中の這い跡のちょうど先端にこの動物自体が保存されているという、まさに「死の行進」を捉えたものである。こうした這い跡からは、この動物に運動性が備わっていたことが明らかになるとともに(エディアカラ紀の動物ではこれが必ず議論になる)、この動物は、連続的な這い跡を作る能力を持つことが示されたエディアカラ紀の既知で最古かつ唯一の体化石タクソンであると主張された。この動物はおそらく左右相称動物(ステム群環形動物または汎節足動物)の一種と見られ、こうした生物がカンブリア紀以前に進化したという分子時計からの予測が裏付けられた。



参考文献:
Chen Z. et al.(2019): Death march of a segmented and trilobate bilaterian elucidates early animal evolution. Nature, 573, 7774, 412–415.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1522-7

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