出芽酵母のゲノム構造と安定性

 出芽酵母のゲノム構造と安定性に関する研究(Puddu et al., 2019)が公表されました。遺伝子の機能的役割の定義付けには大きな進歩があるにも関わらず、比較的単純な生物であっても、遺伝子機能の影響は完全に理解されているとは言えません。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)遺伝子ノックアウトコレクション(YKOC)の完成は、こうした方向性における画期的な出来事となります。YKOCにより、ハイスループットの逆遺伝学・表現型スクリーニング・合成的–遺伝的相互作用の解析が可能になりました。

 その後の実験的研究から、YKOCにはいくつかの矛盾や誤りがあることや、特定のノックアウトの影響を再均衡化するゲノム不安定性事象があることも明らかになっていますが、これらについての完全な全体像は得られていません。ゲノム安定性の維持に必要な遺伝子の特定と解析は、伝統的にレポーターアッセイや個々の遺伝子の欠失の研究に依存してきましたが、現在は全ゲノム塩基配列解読技術により、原理上はゲノム不安定性を全体的かつ大規模に直接観察できます。

 この研究は、ホモ接合性二倍体YKOCからなる4732株のほぼ全ての全ゲノムの塩基配列解読を行ないました。この研究は、縦列および散在するDNA反復配列のコピー数変動についての情報を抽出することで、ほぼ全ての非必須遺伝子について、その喪失によって引き起こされるゲノム変化を説明します。このデータセットの解析から、さまざまなゲノムエレメントの維持に影響を及ぼす遺伝子群が明らかになり、核とミトコンドリアのゲノム安定性間のクロストークが明示され、個々の非必須遺伝子が存在しない中で、株がどのように生活に遺伝的に適応してきたのか、示されます。


参考文献:
Puddu F. et al.(2019): Genome architecture and stability in the Saccharomyces cerevisiae knockout collection. Nature, 573, 7774, 416–420.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1549-9

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