『卑弥呼』第24話「交渉」
『ビッグコミックオリジナル』2019年9月20日号掲載分の感想です。前回は、トメ将軍を陥れるような噂を流すよう、ヤノハがアカメに指示した場面で終了しました。今回は、暈(クマ)の国にある「日の巫女」集団の学舎である種智院(シュチイン)で、戦部(イクサベ)の師長であるククリが、山社(ヤマト)の祈祷女(イノリメ)の長であるイスズと副長のウズメを見送る場面から始まります。暈軍と那軍が対峙する前線の伺見(ウカガミ、間者)から、那軍が大河(筑後川と思われます)を渡り、那軍のトメ将軍は鞠智(ククチ)の里へ向かわず、山社に向かった、と報告を受けていたククリは、護衛を断るイスズに、今山社に向かうのは危険だ、と警告します。それでもイスズは、ウズメとともに山社へと急ぎます。
山社では、クラトが焚火の用意をしていました。クラトを信じてよいのか、とヤノハに問われたミマアキは、誰よりも忠実な戦人だ、と答えます。ヤノハはミマアキに、夜明け前にイスズとウズメの魂を根の国に吸いとった「地の鏡」2枚を火にくべるよう、命じます。ヤノハは養母から、熱した直後の鏡は簡単に砕ける、と教えられていました。銅鏡を粉々にすれば黄泉の国への道は閉ざされ、イスズとウズメは助かる、というわけです。ヤノハはイスズとウズメを相手に天照の儀式を見せた時、同じように火を焚きましたが、それはイスズとウズメに助かる機会を与えるためでした。人生最大の勝負に臨んでいたのに、相手にも勝機を与えるとは、ヤノハにとって全ては遊戯なのだ、とミマアキは感心します。イスズとウズメは山社に帰ってこられるだろうか、とミマアキに問われたヤノハは、イスズとウズメの帰還とともに山社は勝利するはず、と答えます。その頃、イスズとウズメは山社の近くにまで戻っていました。日見子(ヤノハ)の意向通りヒルメを追放したものの、それで我々の魂を黄泉の国から戻してくれるのか、ウズメは心配していました。イスズは、日見子は冷徹なので、疑いを抱いた我々を許してくれるはずはないが、真の日見子にただ従うのが祈祷女の務めだ、とイスズはウズメを諭します。
山社に迫った暈軍では、トメ将軍率いる那軍が背後に迫っていると報告を受けたタケル王が、不安げな表情でテヅチ将軍に自軍の勝算を尋ねていました。山社は高台なので我軍は有利とテヅチ将軍が返答すると、山社を落とすと同時に那軍を滅ぼせるな、とタケル王は安堵し、日見彦(ヒミヒコ)たる自分に負けはないと言っただろう、と勝ち誇ったような表情を浮かべます。今回、人物相関図が掲載されており、タケル王は「わがままで幼稚な性格の人物」とありますが、その通りだな、と笑ってしまいました。能天気なタケル王に対してテヅチ将軍は、我軍が有利なのは那軍が単独で攻めてきた場合で、我軍と那軍の交戦中に山社の軍が那軍に呼応して討って出れば、形勢は逆転する、と警告します。慌てたタケル王は、鞠智の里と以夫須岐(イブスキ)に援軍を要請するよう指示しますが、時間がない、とテヅチ将軍は言い、山社の出入りを完全に封じれば、ミマト将軍に那軍追撃の情報は届かないはずだ、とタケル王を安心させます。そこへ、山社に戻ろうとしたイスズとウズメを捕らえた、との報告がテヅチ将軍に届きます。
ヤノハが熱した銅鏡を割っているところに、暈軍のテヅチ将軍より和議の申し出があった、とイクメが報告します。テヅチ将軍は、捕らえたイスズとウズメを斬首されたくなければ、タケル王と暈軍の無血入城を即刻認めよ、と要求してきました。イクメの弟のミマアキは、即刻拒否すべきと考えますが、ヤノハはミマアキを使者として派遣し、ミマアキは捕らえられて死を覚悟しているイスズとウズメに、割れた銅鏡を見せた後、テヅチ将軍に、日見子(ヤノハ)の返答を伝えます。それは、タケル王と暈軍の山社入場を認めるものの、武器全てを放棄するのが条件になる、というものでした。テヅチ将軍は一蹴しますが、門の上に立っている山社のミマト将軍は、半日で那軍が到来し、暈軍の背後を突く、我々の要求を呑まねば、その時我々は那軍に呼応して出撃する、と伝えます。那軍のトメ将軍の動向を山社が把握していることに衝撃を受けたテヅチ将軍に、日見子様は千里眼なのだ、とミマアキは言います。イスズとウズメが、日見子(ヤノハ)は我々を見捨てなかった、と希望を見出しているところで、今回は終了です。
今回は、山社に攻め込もうとする暈軍とヤノハとの駆け引きが描かれました。ヤノハが銅鏡を割ったのは、山社「独立」後の統治に必要だろうイスズとウズメの完全な忠誠を得ようとするためでしょうか。那軍の動向といい、ここまではヤノハの思惑通り事態が進んでおり、日見彦たる暈のタケル王は窮地に立っています。そんな中でも、テヅチ将軍の発言に一喜一憂し、急に弱気になったり強気になったりするタケル王は、『天智と天武~新説・日本書紀~』の中大兄皇子(天智帝)から、美貌と能力と胆力を低下させたような感じで、小物としてキャラが立っているように思います。
ヤノハがこの事態をどう収拾しようとしているのか、まだ全貌が見えてこないのですが、ヤノハが表明した方針から推測すると、タケル王には日見彦の地位を降りてもらうものの、暈の王としての地位は引き続き認める、と考えているのでしょうか。ただ、能力と人望は低いものの、権力への執着は強く、「わがままで幼稚な性格の人物」であるタケル王が、日見彦の地位から降りることを承認するようには思えません。とはいっても、タケル王の失態と手詰まりは明らかですから、タケル王が日見子の地位を保てるとは思えません。
ただ、暈は『三国志』の狗奴国でしょうから、今後も卑弥弓呼(日見彦)と卑弥呼(日見子)が対立を続ける、と予想されます。そうすると、以夫須岐にいるタケル王の父親であるイサオ王がタケル王を追放し、別人を日見彦として擁立するのでしょうか。ここまで、ヤノハの思惑通り事態が進行しているように思えますが、暈の鞠智彦(ククチヒコ)とイサオ王は一筋縄ではいかない人物なので、今後ヤノハが再度苦境に立たされる場面もあるでしょう。ヤノハの弟のチカラオも近いうちに登場しそうですし、今後がひじょうに楽しみです。
山社では、クラトが焚火の用意をしていました。クラトを信じてよいのか、とヤノハに問われたミマアキは、誰よりも忠実な戦人だ、と答えます。ヤノハはミマアキに、夜明け前にイスズとウズメの魂を根の国に吸いとった「地の鏡」2枚を火にくべるよう、命じます。ヤノハは養母から、熱した直後の鏡は簡単に砕ける、と教えられていました。銅鏡を粉々にすれば黄泉の国への道は閉ざされ、イスズとウズメは助かる、というわけです。ヤノハはイスズとウズメを相手に天照の儀式を見せた時、同じように火を焚きましたが、それはイスズとウズメに助かる機会を与えるためでした。人生最大の勝負に臨んでいたのに、相手にも勝機を与えるとは、ヤノハにとって全ては遊戯なのだ、とミマアキは感心します。イスズとウズメは山社に帰ってこられるだろうか、とミマアキに問われたヤノハは、イスズとウズメの帰還とともに山社は勝利するはず、と答えます。その頃、イスズとウズメは山社の近くにまで戻っていました。日見子(ヤノハ)の意向通りヒルメを追放したものの、それで我々の魂を黄泉の国から戻してくれるのか、ウズメは心配していました。イスズは、日見子は冷徹なので、疑いを抱いた我々を許してくれるはずはないが、真の日見子にただ従うのが祈祷女の務めだ、とイスズはウズメを諭します。
山社に迫った暈軍では、トメ将軍率いる那軍が背後に迫っていると報告を受けたタケル王が、不安げな表情でテヅチ将軍に自軍の勝算を尋ねていました。山社は高台なので我軍は有利とテヅチ将軍が返答すると、山社を落とすと同時に那軍を滅ぼせるな、とタケル王は安堵し、日見彦(ヒミヒコ)たる自分に負けはないと言っただろう、と勝ち誇ったような表情を浮かべます。今回、人物相関図が掲載されており、タケル王は「わがままで幼稚な性格の人物」とありますが、その通りだな、と笑ってしまいました。能天気なタケル王に対してテヅチ将軍は、我軍が有利なのは那軍が単独で攻めてきた場合で、我軍と那軍の交戦中に山社の軍が那軍に呼応して討って出れば、形勢は逆転する、と警告します。慌てたタケル王は、鞠智の里と以夫須岐(イブスキ)に援軍を要請するよう指示しますが、時間がない、とテヅチ将軍は言い、山社の出入りを完全に封じれば、ミマト将軍に那軍追撃の情報は届かないはずだ、とタケル王を安心させます。そこへ、山社に戻ろうとしたイスズとウズメを捕らえた、との報告がテヅチ将軍に届きます。
ヤノハが熱した銅鏡を割っているところに、暈軍のテヅチ将軍より和議の申し出があった、とイクメが報告します。テヅチ将軍は、捕らえたイスズとウズメを斬首されたくなければ、タケル王と暈軍の無血入城を即刻認めよ、と要求してきました。イクメの弟のミマアキは、即刻拒否すべきと考えますが、ヤノハはミマアキを使者として派遣し、ミマアキは捕らえられて死を覚悟しているイスズとウズメに、割れた銅鏡を見せた後、テヅチ将軍に、日見子(ヤノハ)の返答を伝えます。それは、タケル王と暈軍の山社入場を認めるものの、武器全てを放棄するのが条件になる、というものでした。テヅチ将軍は一蹴しますが、門の上に立っている山社のミマト将軍は、半日で那軍が到来し、暈軍の背後を突く、我々の要求を呑まねば、その時我々は那軍に呼応して出撃する、と伝えます。那軍のトメ将軍の動向を山社が把握していることに衝撃を受けたテヅチ将軍に、日見子様は千里眼なのだ、とミマアキは言います。イスズとウズメが、日見子(ヤノハ)は我々を見捨てなかった、と希望を見出しているところで、今回は終了です。
今回は、山社に攻め込もうとする暈軍とヤノハとの駆け引きが描かれました。ヤノハが銅鏡を割ったのは、山社「独立」後の統治に必要だろうイスズとウズメの完全な忠誠を得ようとするためでしょうか。那軍の動向といい、ここまではヤノハの思惑通り事態が進んでおり、日見彦たる暈のタケル王は窮地に立っています。そんな中でも、テヅチ将軍の発言に一喜一憂し、急に弱気になったり強気になったりするタケル王は、『天智と天武~新説・日本書紀~』の中大兄皇子(天智帝)から、美貌と能力と胆力を低下させたような感じで、小物としてキャラが立っているように思います。
ヤノハがこの事態をどう収拾しようとしているのか、まだ全貌が見えてこないのですが、ヤノハが表明した方針から推測すると、タケル王には日見彦の地位を降りてもらうものの、暈の王としての地位は引き続き認める、と考えているのでしょうか。ただ、能力と人望は低いものの、権力への執着は強く、「わがままで幼稚な性格の人物」であるタケル王が、日見彦の地位から降りることを承認するようには思えません。とはいっても、タケル王の失態と手詰まりは明らかですから、タケル王が日見子の地位を保てるとは思えません。
ただ、暈は『三国志』の狗奴国でしょうから、今後も卑弥弓呼(日見彦)と卑弥呼(日見子)が対立を続ける、と予想されます。そうすると、以夫須岐にいるタケル王の父親であるイサオ王がタケル王を追放し、別人を日見彦として擁立するのでしょうか。ここまで、ヤノハの思惑通り事態が進行しているように思えますが、暈の鞠智彦(ククチヒコ)とイサオ王は一筋縄ではいかない人物なので、今後ヤノハが再度苦境に立たされる場面もあるでしょう。ヤノハの弟のチカラオも近いうちに登場しそうですし、今後がひじょうに楽しみです。
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