『卑弥呼』第22話「血斗」
『ビッグコミックオリジナル』2019年8月20日号掲載分の感想です。前回は、山社(ヤマト)の人々が自分を日見子(ヒミコ)と認めている様子を見て、ヤノハが満足そうに微笑む場面で終了しました。今回は、那軍が大河(筑後川と思われます)を渡って暈(クマ)軍に攻め入り、暈軍が壊滅した場面から始まります。一方那軍は、数名が戦死しただけでした。しかし、暈軍を率いるオシクマ将軍は投降せず、那軍の兵士をことごとく返り討ちにしていました。オシクマ将軍から一騎討ちを申し込まれたトメ将軍は、面白いと言って応じます。オシクマ将軍の提案した条件は、トメ将軍が勝てば自分は抵抗をやめて俘虜となるが、部下の命は助けてもらいたい、自分が勝った場合は、自分を含めて生存者全員の撤兵を認めてもらいたい、というものでした。トメ将軍はその提案を受け入れ、戦い続けたオシクマ将軍の体調を考慮し、水と塩を与え、オシクマ将軍が休憩した後に闘うことを提案します。感謝するオシクマ将軍に、暈一の使い手のオシクマ将軍が真の力を見せてくれねば、自分が後悔する、と言います。
暈にある「日の巫女」集団の学舎である種智院(シュチイン)では、日の巫女の長であるヒルメが、山杜(ヤマト)の祈祷女(イノリメ)の長であるイスズを楼観にて出迎えていました。なぜヤノハを捕らえなかったのか、とヒルメに問われたイスズは、ヤノハは本物の日見子(ヒミコ)だ、と答えます。呆れた様子のヒルメに、ヤノハは本物の日見子だ、とイスズは繰り返します。するとヒルメは、本物も偽物も関係ない、タケル王が千人の兵を率いてヤノハの手足を砕いて荒野に放ち、一件落着だ、と言います。イスズ、ヒルメがタケル王の山社入りを阻止せよと言っていたではないか、と言って驚きます。どちらも偽物なら、どちらが死んでもかまわない、と言うヒルメを、謀反人だとイスズは断定します。イスズは、種智院の戦部(イクサベ)の師長であるククリに、ヤノハとヒルメのどちらにつくのか、選択を迫ります。ヒルメは、部下のククリが自分に従うと確信していますが、ヒルメを捕らえるようイスズに命じられたククリは、ヒルメが私怨から日見子様の出現を認めようとしないばかりか、殺そうとしたのは重大な天照様への冒涜だと告げ、愕然としているヒルメを捕らえます。
暈軍と那軍が対峙していた戦場では、オシクマ将軍とトメ将軍の一騎討ちが始まりました。トメ将軍の刀はオシクマ将軍にとって見慣れないもので、漢の柳葉刀でした。オシクマ将軍は刀を縦に持つ蜻蛉という構えで、トメ将軍は半身で刀を後ろに下げる虎の尾という構えで対峙します。トメ将軍は、オシクマ将軍の構えが、暈で用いられる初太刀にかける剣法だと悟り、警戒します。後の示現流の一の太刀の起源という設定でしょうか。両者ともに力量は互角と認識し、先に仕掛けた方が死ぬと考えているため、構えたまま動こうとしません。那軍の兵士は、トメ将軍の構えが変則的なので、オシクマ将軍が勝つ、と予想していました。オシクマ将軍はトメ将軍がわずかに動いたのを見て踏み込みますが、トメ将軍はその初太刀を交わしてオシクマ将軍の首を斬り、オシクマ将軍は、見事と言って絶命します。虎の尾とは、百獣の王である虎の尻尾が目にも止まらぬ速さで左右に動くことを模した剣技とのことです。勝ったトメ将軍ですが、力量の優れたオシクマ将軍の死を惜しみます。那軍の兵士たちはトメ将軍の勝利に歓声をあげ、トメ将軍は、天照様は勝利を我が軍に与えた、このまま南下して鞠智の里と鹿屋を一気に攻め滅ぼす、と兵士たちを鼓舞します。そこへ大河を泳いできたヌカデが現れ、日見子(ヤノハ)様の予言通り那軍が大勝したので約束を守ってください、とトメ将軍に念押しします。トメ将軍はヌカデに、暈軍の兵が数日間河岸からいなくなる、という日見子(ヤノハ)の予言が実現すれば、自分も日見子を支持する、と約束していました(第19話)。
山社では、タケル王の率いる軍勢が門前に迫り、テヅチ将軍は山社のミマト将軍に、自軍を入場させ、偽の日見子(ヤノハ)を引き渡すよう、伝えます。するとミマト将軍は、自分を「山社国」の将軍と称し、テヅチ将軍は「山社国」という表現に違和感を覚えます。ミマト将軍は高らかに、天照様に守られた女王国には謀反人は絶対入れない、早々に立ち去れ、とテヅチ将軍に返答します。すると楼観の上に、眩しい光を背景にヤノハが現れる、というところで今回は終了です。おそらく、イクメが背後で銅鏡を日光に当てて反射させているのでしょう。
今回はヤノハがほとんど登場せず、暈と那の戦いの決着および種智院でのヒルメの失脚が描かれました。オシクマ将軍は武人として優れており、トメ将軍とは敵ながら互いの力量を認め合う関係だったようです。ただ、謹厳実直な感じのオシクマ将軍とは対照的に、トメ将軍は遊び心のある感じです。これが、トメ将軍とオシクマ将軍との一騎討ちの勝敗を分けた一因でしょうか。もっとも、トメ将軍はいつか自分の遊び心に足をすくわれるというか、ヤノハがそれを利用してトメ将軍を失脚・敗死させるようなことがあるかもしれません。ヌカデに日見子(ヤノハ)の予言通り事態が進めば日見子を支持する、と約束していたトメ将軍がどのような行動に出るのか、注目されます。
暈の種智院では、ヤノハを抹殺しようとし続けたヒルメが失脚しました。ヤノハにとって、ヒルメの存在は大きな障壁になっていただけに、これはヤノハの構想実現には大きな前進となりそうです。しかし、暈は『三国志』の狗奴国と思われますので、日見子(卑弥呼)たるヤノハとは対立を続けることになりそうです。おそらく、種智院はヤノハに従うものの、暈のタケル王はもちろん、イサオ王も鞠智彦(ククチヒコ)麑(カノコ)もヤノハを日見子と認めず、対立を続けるのでしょう。なお、今回初めて人物相関図が掲載されましたが、タケル王は「わがままで、幼稚な性格」と紹介されており、的確な評価だと思います。今回もひじょうに面白く読み進められましたので、次回もたいへん楽しみです。
暈にある「日の巫女」集団の学舎である種智院(シュチイン)では、日の巫女の長であるヒルメが、山杜(ヤマト)の祈祷女(イノリメ)の長であるイスズを楼観にて出迎えていました。なぜヤノハを捕らえなかったのか、とヒルメに問われたイスズは、ヤノハは本物の日見子(ヒミコ)だ、と答えます。呆れた様子のヒルメに、ヤノハは本物の日見子だ、とイスズは繰り返します。するとヒルメは、本物も偽物も関係ない、タケル王が千人の兵を率いてヤノハの手足を砕いて荒野に放ち、一件落着だ、と言います。イスズ、ヒルメがタケル王の山社入りを阻止せよと言っていたではないか、と言って驚きます。どちらも偽物なら、どちらが死んでもかまわない、と言うヒルメを、謀反人だとイスズは断定します。イスズは、種智院の戦部(イクサベ)の師長であるククリに、ヤノハとヒルメのどちらにつくのか、選択を迫ります。ヒルメは、部下のククリが自分に従うと確信していますが、ヒルメを捕らえるようイスズに命じられたククリは、ヒルメが私怨から日見子様の出現を認めようとしないばかりか、殺そうとしたのは重大な天照様への冒涜だと告げ、愕然としているヒルメを捕らえます。
暈軍と那軍が対峙していた戦場では、オシクマ将軍とトメ将軍の一騎討ちが始まりました。トメ将軍の刀はオシクマ将軍にとって見慣れないもので、漢の柳葉刀でした。オシクマ将軍は刀を縦に持つ蜻蛉という構えで、トメ将軍は半身で刀を後ろに下げる虎の尾という構えで対峙します。トメ将軍は、オシクマ将軍の構えが、暈で用いられる初太刀にかける剣法だと悟り、警戒します。後の示現流の一の太刀の起源という設定でしょうか。両者ともに力量は互角と認識し、先に仕掛けた方が死ぬと考えているため、構えたまま動こうとしません。那軍の兵士は、トメ将軍の構えが変則的なので、オシクマ将軍が勝つ、と予想していました。オシクマ将軍はトメ将軍がわずかに動いたのを見て踏み込みますが、トメ将軍はその初太刀を交わしてオシクマ将軍の首を斬り、オシクマ将軍は、見事と言って絶命します。虎の尾とは、百獣の王である虎の尻尾が目にも止まらぬ速さで左右に動くことを模した剣技とのことです。勝ったトメ将軍ですが、力量の優れたオシクマ将軍の死を惜しみます。那軍の兵士たちはトメ将軍の勝利に歓声をあげ、トメ将軍は、天照様は勝利を我が軍に与えた、このまま南下して鞠智の里と鹿屋を一気に攻め滅ぼす、と兵士たちを鼓舞します。そこへ大河を泳いできたヌカデが現れ、日見子(ヤノハ)様の予言通り那軍が大勝したので約束を守ってください、とトメ将軍に念押しします。トメ将軍はヌカデに、暈軍の兵が数日間河岸からいなくなる、という日見子(ヤノハ)の予言が実現すれば、自分も日見子を支持する、と約束していました(第19話)。
山社では、タケル王の率いる軍勢が門前に迫り、テヅチ将軍は山社のミマト将軍に、自軍を入場させ、偽の日見子(ヤノハ)を引き渡すよう、伝えます。するとミマト将軍は、自分を「山社国」の将軍と称し、テヅチ将軍は「山社国」という表現に違和感を覚えます。ミマト将軍は高らかに、天照様に守られた女王国には謀反人は絶対入れない、早々に立ち去れ、とテヅチ将軍に返答します。すると楼観の上に、眩しい光を背景にヤノハが現れる、というところで今回は終了です。おそらく、イクメが背後で銅鏡を日光に当てて反射させているのでしょう。
今回はヤノハがほとんど登場せず、暈と那の戦いの決着および種智院でのヒルメの失脚が描かれました。オシクマ将軍は武人として優れており、トメ将軍とは敵ながら互いの力量を認め合う関係だったようです。ただ、謹厳実直な感じのオシクマ将軍とは対照的に、トメ将軍は遊び心のある感じです。これが、トメ将軍とオシクマ将軍との一騎討ちの勝敗を分けた一因でしょうか。もっとも、トメ将軍はいつか自分の遊び心に足をすくわれるというか、ヤノハがそれを利用してトメ将軍を失脚・敗死させるようなことがあるかもしれません。ヌカデに日見子(ヤノハ)の予言通り事態が進めば日見子を支持する、と約束していたトメ将軍がどのような行動に出るのか、注目されます。
暈の種智院では、ヤノハを抹殺しようとし続けたヒルメが失脚しました。ヤノハにとって、ヒルメの存在は大きな障壁になっていただけに、これはヤノハの構想実現には大きな前進となりそうです。しかし、暈は『三国志』の狗奴国と思われますので、日見子(卑弥呼)たるヤノハとは対立を続けることになりそうです。おそらく、種智院はヤノハに従うものの、暈のタケル王はもちろん、イサオ王も鞠智彦(ククチヒコ)麑(カノコ)もヤノハを日見子と認めず、対立を続けるのでしょう。なお、今回初めて人物相関図が掲載されましたが、タケル王は「わがままで、幼稚な性格」と紹介されており、的確な評価だと思います。今回もひじょうに面白く読み進められましたので、次回もたいへん楽しみです。
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