ヒトの脳では老齢期でも新しいニューロンが発生する
ヒトの脳における老齢木のニューロン生成に関する研究(Moreno-Jiménez et al., 2019)が公表されました。脳のニューロンの大多数は、ヒトが誕生するまでにすでにその場所に存在します。成体の脳における新しいニューロンの生成(成体ニューロン新生)は、海馬などの特定の領域では起こり得ます。以前の研究では、齧歯類や他の脊椎動物でこの現象が起きる、と明らかになっています。さらに以前の研究では、新しいニューロンがヒト組織に組み込まれることも示されています。しかし最近の研究では、ヒトの脳で成体ニューロン新生がどの程度あるのか、疑問が抱かれています。
この研究は、58人の被験者由来の組織サンプルを解析し、ヒト脳の海馬では、加齢に伴ってある程度の減少はあるものの、成体ニューロン新生が一生にわたって観察される、と見出しました。また、ヒトアルツハイマー病の過程で、成体ニューロン新生が激減することも明らかになりました。ヒトでの成体ニューロン新生は検出されなかったという従来の研究結果とこの研究の食い違いは、用いた方法の違いか、調べた組織サンプルの質の違いによるのではないか、と指摘されています。この研究では、組織の固定技術や組織の切除から処理までの時間の遅れといった要因が、新生ニューロンの検出に不可欠な組織染色の質にいかに影響するか、示されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
老齢期でもヒトの脳では新しいニューロンが発生する
90歳に達するまで、健康なヒトの脳で新しいニューロンが絶えず発生していることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、この新しいニューロンの生成がアルツハイマー病患者ではかなり減少することも明らかになった。
脳のニューロンの大多数は、ヒトが誕生するまでにすでにその場所に存在する。成体の脳における新しいニューロンの生成(成体ニューロン新生)は、海馬などの特定の領域では起こり得る。以前の研究で、齧歯類や他の脊椎動物でこの現象が起こることが分かっている。さらに以前の研究では、新しいニューロンがヒト組織に組み込まれることも示されている。しかし最近の研究から、ヒトの脳で成体ニューロン新生がどの程度あるかは疑問が持たれている。
今回Maria Llorens-Martinたちは、58人の被験者由来の組織サンプルを解析し、ヒト脳の海馬では、加齢に伴ってある程度の減少はあるものの、成体ニューロン新生が一生にわたって観察されることを見いだした。また、ヒトアルツハイマー病の過程で、成体ニューロン新生が激減することも分かった。
Llorens-Martinたちは、ヒトでの成体ニューロン新生は検出されなかったというこれまでの研究結果と今回の結果との食い違いは、用いた方法の違いか、調べた組織サンプルの質の違いによるのではないかと述べている。今回の研究では、組織の固定技術や組織の切除から処理までの時間の遅れといった要因が、新生ニューロンの検出に不可欠な組織染色の質にいかに影響するかを示している。
参考文献:
Moreno-Jiménez EP et al.(2019): Adult hippocampal neurogenesis is abundant in neurologically healthy subjects and drops sharply in patients with Alzheimer’s disease. Nature Medicine, 25, 4, 554–560.
https://doi.org/10.1038/s41591-019-0375-9
この研究は、58人の被験者由来の組織サンプルを解析し、ヒト脳の海馬では、加齢に伴ってある程度の減少はあるものの、成体ニューロン新生が一生にわたって観察される、と見出しました。また、ヒトアルツハイマー病の過程で、成体ニューロン新生が激減することも明らかになりました。ヒトでの成体ニューロン新生は検出されなかったという従来の研究結果とこの研究の食い違いは、用いた方法の違いか、調べた組織サンプルの質の違いによるのではないか、と指摘されています。この研究では、組織の固定技術や組織の切除から処理までの時間の遅れといった要因が、新生ニューロンの検出に不可欠な組織染色の質にいかに影響するか、示されています。以下は『ネイチャー』の日本語サイトからの引用です。
老齢期でもヒトの脳では新しいニューロンが発生する
90歳に達するまで、健康なヒトの脳で新しいニューロンが絶えず発生していることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、この新しいニューロンの生成がアルツハイマー病患者ではかなり減少することも明らかになった。
脳のニューロンの大多数は、ヒトが誕生するまでにすでにその場所に存在する。成体の脳における新しいニューロンの生成(成体ニューロン新生)は、海馬などの特定の領域では起こり得る。以前の研究で、齧歯類や他の脊椎動物でこの現象が起こることが分かっている。さらに以前の研究では、新しいニューロンがヒト組織に組み込まれることも示されている。しかし最近の研究から、ヒトの脳で成体ニューロン新生がどの程度あるかは疑問が持たれている。
今回Maria Llorens-Martinたちは、58人の被験者由来の組織サンプルを解析し、ヒト脳の海馬では、加齢に伴ってある程度の減少はあるものの、成体ニューロン新生が一生にわたって観察されることを見いだした。また、ヒトアルツハイマー病の過程で、成体ニューロン新生が激減することも分かった。
Llorens-Martinたちは、ヒトでの成体ニューロン新生は検出されなかったというこれまでの研究結果と今回の結果との食い違いは、用いた方法の違いか、調べた組織サンプルの質の違いによるのではないかと述べている。今回の研究では、組織の固定技術や組織の切除から処理までの時間の遅れといった要因が、新生ニューロンの検出に不可欠な組織染色の質にいかに影響するかを示している。
参考文献:
Moreno-Jiménez EP et al.(2019): Adult hippocampal neurogenesis is abundant in neurologically healthy subjects and drops sharply in patients with Alzheimer’s disease. Nature Medicine, 25, 4, 554–560.
https://doi.org/10.1038/s41591-019-0375-9
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