フィンランド人のエキソーム塩基配列解読

 フィンランド人のエキソーム塩基配列解読に関する研究(Locke et al., 2019)が公表されました。エキソーム(ヒトゲノムのタンパク質コーティング領域)塩基配列解読研究は通常、複雑な形質に大きな影響を及ぼす有害なアレル(対立遺伝子)の特定に関しては、そうした遺伝子の大半がまれであるために、検出力が不充分とされています。フィンランドの北部と東部の集団は、一連のボトルネック(瓶首効果)の後に隔離された状態で著しく拡大しており、これらの集団の個体には。多数の有害なアレルが比較的高頻度で存在します。

 この研究は、これらの地域の約2万人のフィンランド人についてエキソーム塩基配列解読を行ない、得られたデータを用いて、臨床に関連する循環代謝の量的形質における、稀なコーディング多様体の役割を調べました。64の量的形質についてのエキソーム規模関連研究から、関連する有害な26の対立遺伝子が新たに見つかりました。これら26のアレルのうち19は、フィンランド人に固有、もしくはフィンランド人において他のヨーロッパ人より20倍以上頻度が高く、フィンランド人集団に特徴的なメンデル遺伝性疾患の変異と同等の地理的な集中が観察されました。こうした特有の歴史を持たない集団の塩基配列解読研究でこの研究と同等の関連検出力を得るには、数十万人から数百万人の参加者が必要になると推定されています。


参考文献:
Locke AE. et al.(2019): Exome sequencing of Finnish isolates enhances rare-variant association power. Nature, 572, 7769, 323–328.
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1457-z

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